30.頭脳戦(物理)
俺はノーアルとの対決のため、学園の地下へと向かっている。
道中に仕掛けられたトラップを、原作知識で突破していく俺。
そして俺がやった来たのは、巨大なチェス盤のある部屋だった。
『むむ! 羊皮紙が浮いておるな。ええと……【これは魔法使いのチェスだ。勝てば兵士達が道を通してくれるだろう】とな』
チェス盤の上にはポーンからキングまで、2メートル級の駒が置いてある。
原作では動きを指示すると、その通りに駒が自動で動いた。
俺は前に進もうとする。
すると道を塞ぐように、ポーンたちが剣を構えてくる。
『なるほど……チェスに勝たねば奥の通路へと行けないのじゃな』
「ああ……だがここで一つ大きな問題がある。俺はチェスが苦手……っていうか、動かし方すらわからん」
『な、なんじゃとー!?』
かろうじて将棋がわかるくらいだ。
チェスなんて駒の名前くらいしか把握してない。
ルールも動かし方もわからん。
原作じゃ、チェスの名手ロイがいたから勝てたが今はロイが居ない。
勝ち方も覚えてるが、チェスはその場その場で動かし方を状況に応じて変えてくるだろう。
つまり、今まで見たいに原作知識で突破できない試練、ということだ。
『ど、どうするのじゃおぬし……』
「え、簡単だろ? チェスで勝たなければいいんだよ」
『なっ!? な、何をばかなことを……!』
ここへ来る前に原作を思い返していた。
そしてさっきの注意書きを呼んで確信した。
俺でも、ここは突破できる。
転生者のやりかたで。
「それじゃあ、やるか」
俺は駒に向かって歩き出す。
敵の駒……ポーンが剣を抜いてくる。
『あ、あぶなぁあああああああああい!』
ポーンが俺めがけて剣を振るう。
「
ばきぃいんん!
金属音とともに、ポーンの剣が……半ばで折れた。
「悪いな……俺の魔力はほぼ無尽蔵。そこから作られる身体強化の魔法は、鉄くらいじゃ砕けないぜ」
俺は杖を取り出して
ビームサーベルを作りだし、眼前のポーンを切り刻んだ。
「これで1コ撃破……次!」
残りのポーンたちが一斉に、侵入者を排除しようと襲ってくる。
俺は剣を避けて、全部粉みじんにする。
『な、ば、ばかな……なにをしてるのじゃ! チェス勝負じゃないのか!?』
「いや、違うんだよなぁ! 羊皮紙の内容をよく思い返してみなよ!」
紙にはこう書いてあった。
ーーこれは魔法使いのチェスだ。勝てば兵士達が道を通してくれるだろう
俺は戦いながらミルツに言う。
「確かにこれが魔法使いのチェスである、とは言及してる。でも! チェスで勝てとは、どこも言及してない!」
ポーン軍団を片付けた。
次はナイトとビショップが襲ってくる。
ナイトの槍を交わし、ビショップの魔法を魔力刀ではじきかえす。
『た、確かにそうじゃんが……し、しかし詭弁では……?』
「駄目かどうかは最後にわかるよ……てか、この部屋だけ通路の出口に扉がなかった。だから多分、こいつらぶっ倒せば通れるだろ」
もし本当にチェス勝負での勝利が条件だったらね。
ナイトの首をはねて、ビショップは魔法で死ぬ。
ルークの硬い体は……。
「おらぁ……!」
身体強化を一点集中させて打ち砕く。
【
俺は確かによそ者だ。
だがよそ者だからこそ、作者が意図してない動きができる。
そして予想外の結果を生み出せるのだ。
残りはクィーンとキングだけになった。
ふたりがごごご……と音を立てながら動き……合体した。
『大きくなったぞ! 10メートル……これはさすがにおぬしも無理だろう!?』
「んなことないって」
拳が俺に向かって振り下ろされる。
俺は真正面から受け止める。
そして押し返す。
巨人はバランスを崩すとそのまま床にはげしく激突。
「そんだけでかければ、倒れたときの衝撃もそうとうなもんだろ?」
俺のもくろみ通りチェスの駒は粉々になった。
「よし、クリア」
『ま、まさかチェスの……頭脳勝負でこんな勝ち方をするとは』
「チェスの勝負なら、チェスが強いやつが勝つに決まってる。弱いやつが勝つなら、盤外戦法とらないとな」
砕け散った駒たちが再生することはなかった。
多分俺の行為が認められたのだろう。
「読み通りだ」
『うーむ……なるほど。弱者の戦法……か。見事じゃおぬしよ』
さて。
一番気がかりだったチェス勝負に勝つことができた。
いよいよだ……。
この次に待ってるのは、1巻のラスボス。
原作とは違い、相手はノアールに憑依されたハリスだ。
待ってろノアール。
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