21.スネイアを尋問



 禁断の森に調査に来た俺たち。

 グリッタの飼っているモンスター……アラクネのラクネアと遭遇。


 そこへ本編の重要キャラである、セリム・スネイア先生がやってきたのだ。


「馬鹿者が! 下がっていろ!」


 ワカメヘアの女教師が、俺たちの前に立って、ラクネアに杖を構える。


「ま、待ってくださいまし! その子は味方……」


「口を慎めエマワトリン! いいからそこの問題児を連れて森をでろ!」


 ハーマイアの忠告を無視し、スネイア先生が魔力撃を放つ。


 恐ろしく早い魔力の弾丸はラクネアへと飛翔。


 眉間を打ち抜こうとするが、しかしラクネアは前足でガード。


 ばきっ! と音がすると前足が砕け散る。


『い、だ……い……いだいぃいいいいいいいいいいいいい!』


 痛みで激高したラクネアがスネイアに敵意の瞳を向ける。


『おで! ころす! いじめるやつ! ころす!』


「ちょ、待てって。おい!」


 俺が止めるのもむなしく、ラクネアとスネイア先生は戦い出す。


 先生は素早く動きながら呪文を詠唱し、氷の魔法を放つ。


 足を凍らされたラクネアの額めがけて魔力撃。


 だが体をねじってラクネアはそれを回避。


 口から毒を吐き出すがスネイアは氷の盾でそれを防いだ。


「す、すごいですわ……なんて高度な魔法戦闘……」


 アイン魔法魔術学園にて、スネイアは1,2を争う戦いの才能を持っている、という設定がある。


 普段はハリスをいじめるばかりで目立たないけども。


「で、ですが……あの先生はなぜ戦ってるのですの? 大嫌いな赤鷲寮の生徒でしょうに……」


 原作ファンたちも、スネイアを誤解していた。


 いつもハリスやその寮生たちに意地悪しているスネイア。


 だが彼女はとても優しい人なのだ。


 スネイアはハリスの【母親】との約束を忠実に守っているのである。


 ガキンッ! ズバッ!

 キンキンキンキン!


「どちらもかなりダメージが入ってますわ。このままでは……」


「ああ、共倒れだ」


 スネイアは本気でラクネアを殺そうとしている。


 撤退の意思は見られない。


「適当に逃げれば良いのに、どうして……?」


「きっと俺たちが腰を抜かして、動けないって勘違いしてるんだろう。生きて帰るためには倒すしかないって思ってるんだろ」


「まさか……あの先生が……そんな」


「そう言う人なんだよ、勘違いされるけどさ」


 この世界の誰も、彼女の本当の姿を知らない。


 スネイアは色んなバックボーンを持っている。


 だがそれが明らかになるのは物語終盤で、しかも、そのとき彼女は死ぬ。


 現在の戦闘は原作にはなかった流れだ。


 スネイアがいかに強くても、二人足手まといを抱えた状態でのバトルはきついだろう。


 現に息が上がっている。

 もうあと少しでやられる。


 蘇生の手段はこの世界にはある。けど手元にはない。


「俺が……やるしかない」


 スネイアはここで死んじゃいけないんだ。

 ラクネアもまた、役割を持っている。


 ふたりとも殺さず、かつ戦闘を終わらせるためには……これしかない。


 ……本当は使いたくないけど。


「ハーマイア、距離取ってろ」

「ご主人様はなにを!?」


「ふたりを止めてくる。身体強化エンハンス!」


 身体強化魔法を使って、俺はスネイアとラクネアの間に割り込む。


 魔力刀ブレイドでラクネアの足の鎌を受け止め、左手でスネイアの杖を取り上げる。

「き、貴様! ドラコ! 一体何をしてるんだ! さっさと失せろ! 愚者め!」


 この憎まれ口も、生徒を思ってのことだと思えば怖くない。


 彼女は、女だ。

 だからこれが有効だ。


「【強制発情ラスト】」


 桃色の煙が周囲に発生する。


 【強制発情ラスト】。これは文字通り相手を強制的に発情させ、戦闘不能にする魔法だ。


 男はこれを受けるとその場で一時的に動けなくなる、麻痺魔法みたいな効果を持つ。


 ……相手が女だと。


「んお゛ぉ゛……!」


 野太い声を上げて、びくんびくんと体を震わせると、スネイアがその場に崩れ落ちる。


「えぁ……あ……えぇ……こ、れぁ……禁術……♡ ど、ら……こぉ……♡」


 はぁはぁと発情しながら、彼女が俺をにらみつける。


「すみません、できれば使いたくなかったんですが」


「お゛お゛ぉ……♡」


 ……なんか、やだな。この光景。


 体をびくんびくんとのけぞらせているスネイア先生なんて、見たくなかったわ……。


 こんな姿原作者や原作厨が見たら、さぞ怒ることだろう……。


 一方ラクネアもまた……。


『♡ ♡♡ ♡♡♡♡』


 とまあ、ラクネアもまたメスだったので、つまりは二人してあへ顔さらしてびくんびくんと絶頂してる状態なわけで……。


「すごいですわ♡ さすがマルコイ様! どんな女も手玉にとってしまわれるなんて!」


 一部始終を見ていたハーマイアが感心したように言う。


 うん、彼女もこんなこと言うキャラじゃないんだよな。


 ホント……そろそろ原作ファンから刺されそうだよ、俺。


    ★


 二人の戦闘を止めることには成功。


「さてこっからどうするか……」


 俺の目的は二つ。

 魔物の活性化の原因を探る。

 もう一つは、ラスボスの正体を探る。


 ラスボス候補だった先生は、しかしここを最近訪れていないという。


 代わりに大人の女が頻繁に来るって言っていたが……。


「おいラクネア」

『んぁ? なんだ……?』


 しばし時間をおいたらラクネアが元に戻った。


 だが……。


「お゛……♡ ほ……♡ おぉ……♡」


 スネイア先生は発情状態が続いていた。

 え、なんで?


 対象によって効果時間が違うのか……?


「そういえば本で読んだことがありますの」


 優等生のハーマイアが言う。


「禁術のひとつ、【強制発情ラスト】の硬化時間は、その人の性欲の強さが関わってくると」


「せ、性欲の強さぁ……?」


「ええ。性欲が強い女であればあるほど、【強制発情ラスト】の効果は長く続くと」


「つまりスケベであればそれだけ長く発情するって訳……?」


 モンスターが元に戻っても、なお発情してるスネイアって……。


 もしかして、むっつりスケベなん?


「やだぁ……もぉ……どんどん原作で明らかになってない設定が、こんな形で明らかになってくよぉ……」


 てゆーか作者も作者だよな。

 憎まれ教師が実はむっつりスケベで百合ってさぁ……。


 属性盛りすぎだろ。


「ま、まあいい。ラクネア。おまえがさっき言っていた、最近よくここに来る大人の女ってやつはこいつか?」


『そう。こいつ……何かをずっと追跡、してだ』


「追跡……?」


『黒いマントの男、お、追ってた。後ろから様子見てる、みたいな』


 俺らが出会った、オークを食っていたマントの男のことか。


 スネイアはそいつを追いかけて、何がしたかったんだ……?


 原作にはもちろん、こんな展開はなかった。

 たぶん黒マントの男は今回乗らすボスだろう。


 だが原作にない展開になっている以上、ノアールの寄生先が、別の人物になったと考えるのが自然。


 スネイアはその新たなるラスボスを調査していた、ということかもしれない。


 なら、相手は誰? 本人に直接聞くしかない。


「なあスネイア、先生」


 今なお発情状態のスネイア先生に俺は問いかける。


「はぁ……♡ はぁ……♡ ん……な、なんだ……?」


 脂汗をかきながらも、先生の威厳を保とうとしている。


 すげえなこの人。


「すごいですわ……。【強制発情ラスト】の魔法は女から理性を消し、やることしか頭になくなる雌犬にするのに、言葉を発せられるなんて……!」


 戦慄するハーマイア。


「エマワトリンさん、なんでそんなこと知ってるのですか?」


「だってそれは……ぽっ♡」


 ……どうやらこの間の暴走状態の時、俺が改めてこいつに【強制発情ラスト】を使っていたようだ。

 

 くっそ! 原作が! 原作がどんどん汚されていってるぅ!


 いや、確かにマルコイは主人公の女を寝取ろうとするヤリチン貴族だったから、原作の設定に準拠してるっちゃしてるんだけどさぁ……!


 話がそれたな。


「あんた、誰を追ってたんだよ」

「ぐっ……だ、誰が……あっ♡ 貴様なんぞに、教える物……か! ああん♡」


 甘い声をときおりもらしながらも、先生は絶対に口を割ろうとしない。


「教えてくれよ」

「ふ、ふん! 貴様に教えるくらいなら、し、死んだほうがマシだ!」


 うーん、【強制発情ラスト】を受けてここまで頑なに口を割らないとは……。


 なんという精神力。ドスケベのくせにやるな。


「ふ、ふん……【強制発情ラスト】を使っても、む、無駄だぞ……。我が輩は……約束したのだ。彼女と……だから、絶対に……何があっても……口は割らん!」


 約束……。


 彼女……。


 ……脳裏に、いやな予感がよぎる。


「彼女とは、誰でしょう? ……マルコイ様?」


 今猛烈にいやな予感が頭をよぎった。

 スネイアがここまで頑なに、正体を明かそうとしない相手。


 それは誰と約束を交わしているからなのだ。

 では、誰と?


 ……原作で思い当たる相手は一人しか居ない。


 そしてそうなると、今結構やばい状態である。


「緊急事態……これは、緊急事態なんだ……」


 俺は懐から、秘密の部屋……もとい、ヤリ部屋のカギを取り出す。


 がちゃん、とカギを開ける仕草をする。


 光の扉が開いて、向こうにはヤリ部屋が広がっていた。


「き、貴様……何をするつもりだ!」


 スネイア先生があとずさりする。


絶対服従マリオネット

「ああ……ん♡」


 相手を操り人形にする魔法を使う。


「言え、犯人の名前を」

「こ、こ、ことわりゅ……♡」


 涙を浮かべながら、ぷるぷるしているスネイア。


 やっぱり絶対服従マリオネット、【強制発情ラスト】の重ねがけでも言わないか。


 それほどまでに、言いたくないのだろう。


「じゃあもう、こうするしかないな。動くな」


 俺はスネイアをひょいっ、とお姫様抱っこする。


 結構軽いな。


「き、き、きしゃまぁ~……♡ な、なに……しゅるぅ~……♡」


 俺の肌に触れるたび、びくびくと体を震わせるスネイア。


 俺は彼女に言う。


「あんたが口を割らないのはよくわかった。ならもう……聞くしかない」


「き、きく……?」


 ああ。


「あんたの体に、直接な」


 ……どこのエロマンガの竿役だよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

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