22.なんて都合の良い部屋



 俺はスネイア先生から情報を引き出すため、体に直接聞いてみることにした……。


 改めて思うけどほんとひどいな……。

 マルコイもよく女を抱こうとしてたから、まあ原作準拠っちゃ準拠なんだが……。


 やってきたのは、ガンダルヴ学園長からもらった魔道具【秘密の部屋】。


 入ってすぐが、寝室となっていた。


「大きな寝室ですわね」


 自称性奴隷のハーマイアもなぜかくっついてきた。


 禁断の森の中に放置するわけにもいかなかったので、連れてきた。


「はぁ……はぁ……くっ……卑怯者ぉ~……♡」


 俺の腕の中では黒髪の女教師スネイア先生が収まっている。


強制発情ラスト】と【絶対服従マリオネット】の効果で身動きできない状態だ。

 内股になってかたかた……と体を震わせている。


「最低だぞ貴様きしゃまぁ~……♡ 禁術で女を言うとおりにさせるなどぉ~……♡ 闇の魔法使いそのものではないかぁ~……♡」


 いや全くもってその通りっすね……。

 ぐうの音も出ないわ。


「なら誰を追跡してたのか教えてくださいよ」


「ひぐ……! く、くどい……! だ、誰がおしえるものかぁ~……♡」


 どうやら相当口が堅いみたいだ。


 俺は先生を連れてベッドに寝かせる。


「さっそくやりますの?」


 ハーマイアさんちょっとわくわくしてません?


「いや、とりあえず部屋の中を調べようかと」


 原作通りかどうかの確認ね。


 秘密の部屋が原作通りならば、こういう設定が組み込まれている。


1.本人の望むものが部屋の中に現れる

2.外と中での時間の流れが異なる

3.部屋の中での出来事は、外の世界には反映されない


「3.は、どういうことですの?」


 部屋の中を改めてみて、原作通りの設定であることを確認した。

 ハーマイアが尋ねてくる。


「ここはあくまで精神世界なんだ。ここでいくら体を鍛えても、外でレベルは上がらない。あくまで知識や経験が増えるだけだ」


 魔法の訓練の時、ハリスはここを利用していた。


 魔法の強さは魔力もそうだが、術者の精神力にも非常に関わってくるからな。


 あと新しい魔法の習得にも使っていた。


 逆にここでいくら腕立て伏せしたりしても現実での筋肉は一切つかない。


「なるほど……! つまりは、ここでいくらセックスしても子供ができないということですわね……!」


「え……? あ、ああ……そ、そうなりますね……」


 なんというご都合設定……。

 そうか、そうだよ。原作読んだときは気づかなかったけど、ここでいくらやっても、現実に還元されないなら子供ができないじゃないか!


 マジでヤリ部屋だなここ……。


「2.は具体的に外と中ではどれくらいの時間の流れの差がありますの?」


「だいたいここでの1時間が外での1分だ。60倍ってことかな」


「まぁ! でしたら、授業と授業の合間など、開いてる時間をちょっと利用して、セックスができるということですわね!」


「え……? あ、ああ! そうね……!」


 だからそういう使い方(以下略)。


 まじで原作者が意図してない使い方するの辞めてマジで……。


「あと1.ですが……」

「風呂とかトイレとか、キッチンとか、諸々完備してるな」


 食事も欲しいと思ったらすぐに出てくるのだ。調理いらず。


 ただし3の設定通り、ここでいくらご飯を食っても、外で栄養を補給したことにはならない。


「なるほど! 引きこもって四六時中やりま……」


「もうええわ!」


 マジでこのヤリ部屋がヤリ部屋として優秀すぎるんですが……。


 マジで作家はこれを意図して設定したの?

 ちがうよな、ねえ……?


「ま、まあとにかく、ここの設備については把握できた」


 あとは……尋問するだけだ。


 ベッドの上にはスネイア先生が横たわっている。


「はぁ……はぁ……くっ……卑怯な……動けなくして……無抵抗のわがはいを組み敷くつもりだろう!?」


「いやあの、絶対服従マリオネットはとっくに効果が解けてるんですが……」


 逃げようと思えば逃げられるのだ。


 別にこの異空間からの脱出は難しくない。


 ドアからでればそれで終わり。


「はぁ……はぁ……く、そぉ……♡」


 先生は立ち上がろうとするが、ぽすん、とその場にアヒル座りする。


「からだが……いうことをきかない……ろうして……?」


 まだ多分、【強制発情ラスト】の効果が抜けてないのだろう。


 というかこの魔法、そんなに長く続かないのだが……。


「まあ、先生♡ 凄い長く続いておりますわね♡ どれだけスケベなのでしょうか……♡」


「ち、ちが……わ、わがはいはスケベなのでは……っ!」


 ハーマイアがにこりと笑って、先生の髪の毛を撫でる。


 体を硬直させる先生……って、ちょいちょいちょっと!


「待った! 待ったハーマイアさん! ストップ!」


「あら、なんですの? せっかく面白そうなオモチャ……もとい、面白くなってきそうでしたのに♡」


 今この方オモチャっていいました!?


 え、なに?

 君受けも攻めもOKなの?

 全方向性癖奴隷なの?


「これあくまで尋問だから。あれをやるために来たわけじゃ無いから」


「そうですの? 快楽落ちさせてしゃべらせようとしてたのでは?」


「いやまあ……だ、だが……別にやるとまでは言ってない」


 これでやったら本当にヤリコイさんですよ……。


 あくまで俺が知りたい情報を引き出すことが目的だ。


 最後までフィニッシュするのが目的じゃあない。


「あら残念。わたくし準備万端でしたのに」


 両手に鞭とかうぃいいいんって動くローターとか持ってるの、なんなの?


 何本当にマジの拷問しようとしてるの!?

 エロ同人じゃんそれ!


 ここは健全な、ファンタジージャンルのライトノベルの世界なの!


 そういうエロは駄目なの! 子供も見てるんだからまったく……。


「でも口を割らなそうですわ。ほら……」


 つつぅ……とハーマイアが先生のお腹を指でなぞる。


 顔をきゅーーっとゆがめて、耐えていた。

 いかんいかんて。


「先生……早くしゃべってくださいよ」


「ふ、ふん……き、きしゃまにはなしゅことなろ、なにもらいわ……♡」


 完全に体はできあがっていらっしゃる……。

 これでしゃべらないのだからたいしたもんだ。


「わ、わがはいは……りりあとの、約束やくしょくがある……らから……いわない……」


「リリア……? ご主人様、誰のことでしょうか?」


 ……そうか。

 やっぱり、な。


「ハリスの母ちゃんの名前だよ」


「へー」


「一ミリも興味なさそうだね……」


「当然ですわ♡ わたくしはご主人様の間の奴隷♡ ご主人様以外の男のことなんて、一切興味ないですわ。ゴミ以下ですわ」


 ハリスぇ……。


 なんというか不憫だった。マジでごめん。本当なら気味の良き理解者となるヒロインだったのに……。こんなことに……。


 しかし、これでほぼ確定したようなものだ。

 スネイア先生はリリア……ハリスの母親との約定といっていた。


 つまり……あの黒マントの男の正体は、スネイアが追いかけていた犯人は……。


 十中八九、ハリスってことが判明した。


 ハリス……どうして……?

 いったい、なぜノアール陣営に……?


「よし、聞きたいことは聞けた。もう帰るぞ」


「え……?」


 先生が俺を見上げて目を丸くする。


「え? スネイア先生、今、え……って」

「い、言ってない! なにを世迷いごとを! そんなことは断じて言っておらんわ!」


 顔を真っ赤にして早口でまくし立てるスネイア先生。


 きらん、とハーマイアが目を輝かせる。

 ……心なしか、獲物を見つけた肉食獣みたいな顔してません? ねええ?


「そんなこと言って……くす♡ 先生のお口は随分と嘘つきですわね♡」


 ハーマイアがまた先生といちゃつきだした。

 いかん! いかんて!


「もう大丈夫だから! 十分情報をゲットできたから! 帰りましょう!」


「いいえ駄目ですわご主人様♡ もうこの方は欲しくてたまらないです♡ わたくしにはわかりますわ♡ ねえ……?」


「そ、そんなことは……ない……わ、わがはいは……き、貴様のあれなんぞ……ほ、ほしくは……」


 ハーマイアが立ち上がると、俺の後ろに回る。


 ズボンを下ろす。ちょっと!?


「あ……」


 先生の目が釘付けになる。だ、駄目だって! 駄目だってば!


「ほら、ふふ……♡ 先生は随分と嘘つきですが……こちらは正直……」


「いいって! ほら帰ります……ぐっ! ぐあぁあああ!」


 そのとき、俺の左目が赤く輝きだした。


 しまった! 魔力量が、限界を迎えたのだ!


「し、静まれ! 静まれ俺の左目ぇええええええええええええええ!」


 どくんどくん、とまた心臓の鼓動がはげしくなってきた。


 いかん、暴走だ!

 また暴走してしまう……!


「は、ハーマイア! 今すぐ先生を連れて外に出ろ! でないと俺は……何をし出すかわからん……!」


 こうなってしまうと魔力移し(※意味深)してしまう!


 女を魔力移して、言うこと聞かせるなんて……! 原作のマルコイになってしまうじゃないか!


 うぉおおおお!

 静まれぇえええええええええええ!


「ふ、ふん……なんだドラコのやつ。あやつ自分の力に苦しんでいる……え? ちょっと、や、あ、あやめ、あ、あ、あーーーーーーーーーーーーーーーーーー♡」


 ……そのあとの記憶は、ない。

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