えっちなファンタジー小説で主人公から女を奪おうとする悪役ヤリチン貴族に転生した俺、まっとうに生きようとしてるのに、主人公から女をことごとく奪ってしまう。なんで!?
25.ハリス、暗殺に失敗し、メイドから完全に見放される
25.ハリス、暗殺に失敗し、メイドから完全に見放される
マルコイが飛行訓練にて、ロイを助けた。
その日の午後。
「くそ! くそ! くそがぁ……!」
本来の主人公ハリスは、学園のトイレに引きこもっていた。
「なぜ死なない! あの高さから落下して! くそっ!」
ホウキの暴走。それはハリスが引き起こした物だ。
ノアールに忠誠を誓ったことで、ハリスは恐るべき闇の力を手に入れた。
ハリスはロイのホウキに呪いをかけておいた。
ホウキのコントロールを奪い、暴走させる呪いだ。
見事ロイはホウキから落ちそうになり、そこをマルコイが助けようとして落下。
あくまで人を助けようとしての事故死を演出しよう、というのがノアールの策だったのだが。
「失敗した! くそ……! なんて頑丈なやつめ! くそ!」
マルコイは落下死は免れた物の、かなり体にダメージを負ったらしく医務室へと運び込まれた。
【ハリぃ……ス。落ち着け。落ち着くのだ】
「ノアール様……」
闇の大魔法使いノアールだ。ハリスの精神に取り憑いてる。
「申し訳ありません、暗殺に失敗してしまい……」
【なに、仕方ないことだ。だが怪我をさせることはできたじゃないか。これは好機だぜハリぃ……ス】
「好機? ですか?」
【ああ。弱っている今ならとどめを刺せる。ハリス……今こそ森で作っておいた、あの薬の出番だ】
ハリスはポケットから緑色の丸薬を取り出す。
【
ぱくり、とハリスが錠剤を飲む。
凄まじいまずさが襲ってきた……。
「う、ぷ……うげぇええええええええええ!」
ハリスは大便器に胃の中を吐き出す。
だが次第にその姿は別のものへと変わっていく。
グラップラへと変貌した。
「はぁ……はぁ……成功だ。あとはグラップラにこれを飲ませて、ハリスの姿にすればいいんですね?」
【その通りだ。賢いなハリぃ……ス】
にやりと笑ってハリスは外に出る。
見張りをさせていたグラップラにハリス変身薬を飲ませた。
あとは授業を受けさせるだけである。
「今頃やつは医務室にいる……あとはこの毒薬で暗殺するだけだ……げひゃひゃ! マルコイ……おまえも今日でおしまいだぁ……」
人を殺すというのに、うれしそうに笑うハリス。その姿はとても物語の主人公とは思えないほどであった。
ややあって。
グラップラに変装したハリスは医務室へと向かった。
午後の授業中ということで、部屋にはマルコイ以外だれもいなかった。
医務室の教員には錯乱の魔法薬をかがせ、しばらく医務室に来ないようにした。
「マルコイ……」
ハリスはマルコイの眠るベッドへと向かう。
彼は飛行機から落ちたダメージで気を失ったのだ。
【マルコイのやつは気絶している。チャンスだぞハリス】
ノアールの声がハリスの脳内に響く。
うなずいてゆっくりとマルコイの元へやってきた。
「はは……マルコイ……マルコイぃ……」
自分からいとしい女を奪った張本人だ。
殺す、殺してやらねば。
ハリスは懐から【それ】を取り出す。
黒光りする、小型の筒のようなものだ。
ハリスも、そしてこの世界の人間も、これを知る者はいない。
ただひとり、目の前で眠っている男しか、知らない秘密兵器だ。
【そうだ。引き金を引くだけでいい。あとは自動で命を奪ってくれる】
「すごい……即死の魔法を使わなくても命を簡単に奪えるなんて!」
【くく、そうだろう? さぁハリス。銃口を眉間に向け、そして引き金を引くのだ】
ハリスの手に握られちているのは、拳銃だ。
この剣と魔法の世界において、存在しないはずの技術で作られた武器。
そう、ノアールもまたマルコイと同様に、地球からの転生者なのだ。
とはいえ、マルコイと違い、ノアールという一個人に憑依したような感じである。
元々の闇の賢者ノアールとは別人と言えた。
【地球の知識で武器を使って無双。まあ原作にないことだからしたくないが、けれどこの世界線はどうせ消滅する定めなんだ。消えても何も問題あるまい】
くくく、とノアールがほくそ笑む。
一方でハリスは銃口をマルコイの眉間に押し付けて、引き金を引こうとした……そのときだ。
「そこで、何をなさっているのですか?」
「!? あ、アリア……」
自分の最愛の女性、メイドのアリアドネが部屋にやってきたのだ。
「ど、うして……」
「愛するマルコイ様の看病に決まっております。……あなたこそ、どうしてここに?」
まさかハリスとばれたか?
いや、今の自分の顔はグラップラのものとなっている。気づいてるわけがない。
まずい。見られた。
【構わん、殺してしまえ】
ノアールの声が脳内に響き、ハリスは硬直する。
【どうした? この世界のアリアは、君が望むアリアではない。君は時間を巻き戻して、ゼロから関係をやり直したいのだろう。ほらよく見てごらん、今のアリアを?】
アリアが、自分に敵意に満ちた瞳を向けてくる。
違う、こんなの、自分の愛するアリアではない。
【そうさ、別人なのさ。今のアリアはマルコイの女。殺してしまえ。マルコイもろともなぁ】
ハリスは手に持っている拳銃の先をアリアに向ける。
そして、引き金を……。
ぱんっ!
……大きな音共に、地面に穴が開く。
「!?」
アリアが目をむいている。足元に空いた大穴を見て、ハリスの持つ拳銃の威力を思い知ったのだろう。
【何をしているハリス? 殺せ……おい、聞こえないのか?】
「……今の、見ただろう?」
ハリスがアリアに尋ねる。
「この銃は簡単に人を殺せる。引き金を引けば、お前は一発であの世行きだ」
アリアの表情がこわばる。
拳銃の威力を、アリアは思い知ったのだろう。
「わかるな。今ボクはおまえらの生殺与奪研を持つ。ボクの機嫌を損ねると死ぬぞ?」
「……脅しですか?」
「ああそうさ。女ぁ……殺されたくなければ、一発やらせろよぉ」
ハリスはノアールに支配されている。
だがアリアへの思慕の情が消えてるわけではない。
【この馬鹿。目先の欲に目をくらませやがって……ったく】
今自分の手には人の命を簡単に奪えるアイテムがあった。
そうだ、これを使えば、アリアを言うことを聞かせられる。
ノアールは言っていた。
時間を戻しやり直せると。
だが、そんな保障がどこにある?
忠誠を誓ってはいる。
だがノアールの言っていた、時間を戻すような、まるでおとぎ話のような奇跡を起こせる保証はどこにもなかった。
だが今この手に、アリアを言うことを聞かせられる力があるのは確かに存在する。
「アリアぁ……脱げよ。死にたくなければなぁ……」
いとしい女を好きに出来る。どうせ今は顔が違うんだ。
好き放題やったところで、どうでもいい。
捕まるのはグラップラだ。
「…………」
アリアは無言でスッと手を広げる。
「殺したいのなら、殺せばいい」
「なっ!?」
ハリスが動揺する。
「は、話を聞いてなかったのか? おとなしく従わねばお前が死ぬのだぞ!」
「どうぞ。下衆に体を許すくらいなら、死んだ方がましです」
「げ……す?」
「武力でしか女に言うことを聞かせられないのです。下衆以外のなんだというのですか、ハリス?」
「なっ!?」
ハリスは激しく動揺した。
今はグラップラの姿に変装しているのに、今アリアははっきりと言った。
自分を見て、ハリスと。
「身体強化≪エンハンス≫!」
アリアはすきをついて身体強化の魔法を施す。
すさまじい速さでハリスに接近。
躊躇なく、ハリスの股間を蹴飛ばした。
「ぶぎぇええええええええええええええええ!」
悲鳴を上げながらハリスはその場に崩れ落ちる。
脂汗をかきながら、アリアを見上げる。
「ど、して……?」
「マルコイ様からご指示があったのです」
「し、じ……?」
「ええ。あなたがマルコイ様の命を狙うかもしれないから注意しろ、と」
マルコイはハリスがノアールに支配され、命を狙われていることを知っている。
自分が隙を見せれば十中八九暗殺にくるだろう。
ゆえに、アリアに指示を出しておいたのだ。
自分を守るようにと。そのための自営の手段として、身体強化魔法をアリアに教えていたのだ。
「間抜けだな、おまえ」
むくり、とマルコイが起き上がる。
「ま、るこい……! どうして……!」
「おまえが隙を見せるだろうと機会を伺っていたのさ」
グラップラははめられたのだと悟る。
懐に手を突っ込んで、杖を取り出す。
「てれぽ……」
「【武装解除≪パージ≫】」
ハリスの手から杖がすっ飛んでいく。
彼の杖は突如として現れた、スネイアの手の中にあった。
「ば、かなぁ……! スネイアぁ! どうして、ここに!?」
「……不本意だがそやつの便利アイテムを借りたのだ」
スネイアの手には透明化マントが握られていた。
「原作じゃハリスしか使ってなかったけどさ、こういうふうに他人に貸して使うやり方もありだろ?」
これもマルコイの指示だったのだ。
透明化マントをかぶって、スネイアはハリスが来るのを待っていたのである。
スネイアは懐からフラスコを取り出して、ハリスの口に突っ込む。
変身が解けて、グラップラからハリスの姿に戻った。
「この……阿呆が」
ぎり、とスネイアが怒りの表情を浮かべる。
だがこんな女がいくら怒ろうとどうでもよかった。
「あ、あ、ありあ……ちがうんだ……ぼ、ボク、ぼくは……」
アリアに、ばれていたのだ。
武力をちらつかせ、強姦しようとしていたのが、ハリスだと言うことに。
「ちがうんだよ、これは……ぼ、ボクはただ、き、君の目を覚まそうと思ったんだ。そ、そう……マルコイのやつに無理やり犯されて、あいつのあれのとりこになってるんだって! だからぼ、ボクとのセックスで目を覚ましてあげようって! だから」
支離滅裂だった。追い詰められて、まともな思考が出来てない様子。
アリアは心底、軽蔑したように言う。
「黙れ、この強姦魔」
アリアの瞳は怒りと侮蔑の色をしていた。
そして、鼻で笑う。
「あなたごときポークピッツで、女を満足させられるわけないでしょ?」
ハリスの股間を見てアリアがせせら笑う。
「ぽ……」
「使用人として、あなたと一緒にお風呂にも入ったことありますからね。知ってますよ。あなたのそれが、成人男性とは思えないほどにお粗末だってこと」
「あ、ああ……」
「マルコイ様よりも満足させられる? 冗談も大概にしなさい」
愛する女から、男性の象徴を馬鹿にされた。
オスとしての能力の差を、見せつけられた。
「あ、あはは……あびゃ、あびゃびゃびゃびゃ!!!!!!」
愛する女から完全に、軽蔑された。
強姦未遂、殺人未遂、それだけで重罪だ。
そして生きてる理由だった、愛する女から見放され、さらにはオスとしての自分も拒絶された。
何も残されていない彼は……。
ただ、笑うしかなかった。
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