えっちなファンタジー小説で主人公から女を奪おうとする悪役ヤリチン貴族に転生した俺、まっとうに生きようとしてるのに、主人公から女をことごとく奪ってしまう。なんで!?
09.【セリム・スネイア】嫌われ者の先生
09.【セリム・スネイア】嫌われ者の先生
魔法魔術学園のまで、ホウキを使って飛んできた俺、とヒロインのロイ。
「これどうしよう……」
校舎裏に広がる森のなかに、1本の大樹が生えている。
【暴虐の大樹】。いにしえの昔、この学園の創始者であるアインが、この地の平穏を願って植えた樹であるとされてる。
つまり創立記念碑みたいなもんだ。
「ど、どうしよう……マルコイ君。先生に怒られちゃうよ……」
「だ、だよね~……」
と、そのときだ。
「……何をしているのだ、貴様ら?」
このバリトンボイスは!
振り返ると、そこにはワカメみたいな髪の毛をした、背の高い女がいた。
「あ、あなたは……! セリム・スネイア……先生!」
セリム・スネイア。
いつもハリスに意地悪をする女教師だ。
しかしそれには深い理由があって……。
序盤はマルコイとともにハリスの邪魔ばかりする嫌なやつかとおもったら、最終巻でその評価がひっくり返る。
という、とても人気のあるキャラがスネイア先生だ。
「よ、よかったぁ~……」
びびった。そうだよ。スネイア先生は味方になってくれるじゃないか。
原作ではスネイアはマルコイのことを露骨にひいきしていた。同じ闇の魔法使い側の人間だからだ。
これが他の先生だったら、あるいは俺がハリスだったら、やばかった。
けれど俺はマルコイ。スネイアのお気に入りの生徒である。
つまり、不祥事もチャラにしてくれる、はず……!
「スネイア先生。すみません実は……」
すると彼女は粉々になった暴虐の大樹を見て……。
「貴様ぁあああああああああああああ!」
憤怒の表情を浮かべて、俺のもとへやってくると、張り倒してくる。
ばちんっ!
あいえ!? なんで!?
「貴様がこれをやったのだな!?」
「あ、いや……まあ……はい……」
ぶち切れたスネイア先生が俺に杖を抜いて突きつけてくる。
「【
麻痺の魔法が俺に当たって、動けなくアンル。
ええええ!? なんで!?
あなた原作ではマルコイのことお気に入りじゃなかったんですか!?
いや……待てよ。
そうだ暴虐の大樹は、たしかスネイアにとって思い入れ深いものだった!
そうだ! それを破壊したから嫌われるのはしょうがない!
「殺す!」
「やめてください!」
ロイが止めようとする。
だがスネイアはお構いなく、ばきっ! とロイを殴る。
「おい何すんだよ」
俺は
「! 貴様……わがはいの麻痺の魔法を……どうやって?」
「女に手あげてんじゃないよ。というかあんた先生だろ?」
「学園の備品を壊した分際で、どの口がいうか?」
あ、はい。その通りですねすみません……。
と、そのときだ。
一羽の鳥が俺たちの頭上へと旋回。
それは変身して、人間の形へとなる。
「何をしてるんだい、君たち?」
「! ガンダルヴ学園長……」
ふわりと着地したのは、藍色の髪の女ガンダルヴ学園長だ。
「この生徒が学園の備品を破壊したので、罰を与えようと思っておりました……」
スネイアが俺をにらみつけながら言う。
すっかり嫌われてら……。
「ほぅ! これは見事に……木っ端微塵だな。どれ」
ガンダルヴ学園長はぱちん、と指を鳴らす。
すると砕け散った大樹が元通りになった。
「これで問題ないだろう?」
「……大ありです学園長。この餓鬼……生徒の森への立ち入りは禁じられております。さらに備品を壊したことは事実」
う、確かに……。
しかしガンダルヴ学園長はニコッと笑う。
「勘違いしてはいけないよセリム」
スネイア先生に微笑みかけながら言う。
「マルコイとロイは、正確にはまだ打ちの生徒じゃない。
「……詭弁だ」
「だが、事実まだ彼らは我が校の生徒手帳を持っていない。さらに【組み分け】も終わっていない。一般人と相違ない。ならば学園のルールについても知らなかった、となれば罪は軽いんじゃないかな?」
ぎり……とスネイア先生は歯がみする。
すごく、ものすごくいやそうな顔をして……うなずいた。
「よろしい。さて、セリム。そしてロイ。君は先に大広間へ行きたまえ」
ロイがホッと息をつき、スネイアはちっ……! と舌打ちをする。
俺もその場を去ろうとすると……。
「あー、マルコイ。君はちょっと居残るように」
ですよねー……。
★
スネイアはロイと一緒に校舎へと向かった。
俺は学園長室へと連行された。
バカ広い部屋には本やらオモチャやらがたくさん並んでいる。
「さっそくやってくれたね」
「すみません……」
俺は最初から事情を説明した。
馬車に乗り遅れたことと、ペテンシーに出会ったこと、そしてぶん投げたホウキにのってここへ来たこと。
「まったく、君は本当に規格外だな」
そりゃマルコイが原作でやってる動きとは全く違う動きをしてるからな……。
「君がどうして、生徒が知らないはずの学園島へのルートを知っていたのか、それについては聞かないであげよう」
「え、いいんですか……?」
「ああ。言わずともいい」
良かった……そこを追求されるのかと思ってびびってたよ。
「じゃあ何で呼び出しを?」
「君にこれを渡しておこうと思ってね」
ぱちん、とガンダルヴが指を鳴らすと、机の上に眼帯が出現する。
「この眼帯は?」
「封印の眼帯だ。それを赤石の収まっている左目のところにつけるといい」
眼医者でもらうような眼帯を、俺は言われるとおり左目に付ける。
だが不思議と左の視界は隠れていない。
「これはあくまで君の目の色を隠すためのものだ」
また学園長が指を鳴らすと空中に鏡が出現。
赤色だった左目が、右目と同じ色になっていた。
「隠蔽ってことか……」
「そう。君の左目は大賢者の赤石。その存在は秘匿される必要がある。ゆえに、認識を阻害する魔法のかかった眼帯を君につけてもらうことになった」
眼帯を付けていれば、
まあ付けてる感じもないし、お宝をぶらさげて歩くなんて危ないマネをしたくないので、これは素直にありがたかった。
「さて……マルコイ君。君に一つ忠告しておきたかったことがある」
「おき、たかった?」
「ああ。簡単だ。問題を起こさないように、と」
ああ……遅いですねそれ。もう問題おこしたばかりだよ……。
「私は君を気に入ってるし、また君が特別であることも承知している。君にある程度協力する……があくまで生徒の一人である。なのであまり贔屓はできない」
「やらかしすぎると、かばいきれないってこと?」
「そう。だからまあ、あまり騒ぎを起こさないように、留意するんだ。いいね?」
「は、はい……」
てゆーか俺はあんま目立ちたくないんだよな。ただでさえ
「では下がりなさい。大広間へいって待つこと。そこで【組み分け】が行われる」
ああ、そうか。組み分けのイベントがあったな……。
「失礼します」
俺はガンダルヴの部屋を出る。
すると部屋の前に、ワカメヘアの女教師、セリム・スネイア先生がいた。
「あ、あの……」
「……ちっ!」
舌打ちされたよ!
先生がきびすを返してスタスタ歩いて行く。
なんだあの人……。
「……何をぼさっとしてる。大広間まで案内するからついてこい」
あ、なるほど……。ならそういえばいいのに……。
ぴた、と先生は足を止めて、俺をにらみつけて言う。
「……わがはいは貴様のような生徒が嫌いだ。マルコイ・ドラコ」
ひぃええ……どうしてこうなるのお。
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