お断りだぜ!

「マモルよ。どうだった私の試合は?」

「お前の性癖丸出しだったな」

「お前さんの心に、少しでも燃えるものがあれば良かったと思ってる!」

「いやドン引きだよ」

「実はな、私はこの試合でお前さんに伝えたい事があった」

「お前俺の話聞いてる?」


「マモルよ。お前さんは、自分を守りすぎだ」

「ほんとに聞こえてないようだな!」


「処世術として、自分の身を守るために、何かを諦めたり、妥協したりする事は、そう悪いことでもない……だがまだ十五のお前さんには、それはちと早いと思うのだ」

「…………」


「男なら、少しぐらいやらかしても、やりすぎてもいい。誰もが一度は思うだろう? 強くなりたいと、強くありたいと……私の見せた試合で、お前さんの心に、何か疼くものは無かったか? 熱くなれるものが無かったか? それが男というモノだ。諦めるな、妥協するな、まだ小さい自分のままで、小さいままの己を止めるな」


「ガオン……」


「いいんだ、何でもしたっていいんだ。それでもしお前さんが間違った方向に行ってしまうとしたら、パートナーである私がいる。私が止める。お前さんの心の中でわずかに疼いたものに耳を向けろ。思いの丈を解き放ってもいいんだ。そして挑戦しろ。パートナーの私がいつもお前のそばにいる。どんな無茶でも、私はお前さんについていくぞ。マモル」


 ガオンはとても爽快な笑顔でにっと笑った。


「…………」


 俺の肩に、ガオンの大きくごつごつした手の平が乗る。


「まずはそうだな、筋トレから始めようではないか」


 ホーリードラゴンとの戦い。

 ハーピィたちとの戦い。

 俺はそのガオンの活躍を思い返し、自分でも信じられないほどの笑顔がでた。


 そして俺は、こう言ってやった。


「は? ふざけんな」

「なぬうううう!」


 信じられないとばかりにガオンが叫んだ。


「ここはそのあれだ、こういう時は心と心で握手を交わすところだろう?」


「ドラゴンをねじ伏せたり、鞭でしばかれて喜んだり、残像を出すような動きなんて出来るわけないだろ! 特にお前の性癖!」


「いや、その、あれはだな」


「俺は一般人! どこにでもいる一個の人間だ。お前のような筋肉お化けと一緒にするな!」


「だが、挑戦してみないと、ほれ分からんだろ?」

「できるわけねえだろうが!」


「むぅ……」


 困り顔をしたいのはこっちの方だ。


 俺は自分のスタイルを変える気はない。


 お断りだぜ!

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