突然の呼び出し。
午前の授業も滞りなく順調に進み、昼になった。
すると、教室のスピーカーから呼び出しが来た。
『1ーE。小野寺マモル。召喚獣ガオン。昼休みの間までに学園長室へ来なさい』
「なんだ?」
俺はガオンの顔を見る。
すると。
「ガオンどうした?」
ガオンが妙に困った顔をしていた。
「ふむ、では一応食事をちゃんと取ってから行くとしようか」
「なんなんだ、いったい?」
「行けばたぶん、わかる」
「はあ?」
「とりあえず、飯だけは食っておこう」
妙に硬い声音で話すガオン。
何なんだ?
俺とガオンは、一応食事を取ってから、学園長室へ赴いた。
なんかすごい高級そうな、重苦しい扉だな。
ガオンが軽くゴンゴンと扉を叩く。お前の筋肉パワーで傷が付いたらどうするんだ?
「マモル」
ガオンが俺を促す。
「小野寺マモルとガオンです」
すると扉の奥から「入りたまえ」という声が聞こえた。
ガオンが扉を開けて、先に俺を入れてくれた。
入学式ぶりの、シド・ロードサモン・アールフレンド学園長。初老だが、その威圧のある存在感と硬そうな表情で、つい萎縮してしまう。
「何かあったのですか?」
ガオンが学園長に尋ねた。
なんだ? ガオンはなんで呼び出されたのかを知っている?
「急に呼び出してすまない。分かっていると思うが、今、この学園に不審な者が進入している」
唐突の発言に「は?」となる。それで何で呼び出されたんだ?
「やはりですか」
やっぱり、ガオンは何か分かっている様子だ。
「ああ、学園を覆っている結界に、人ひとり分が入れるほどの穴があった」
「私も起きてから、微弱な邪気に気づき、周辺を走りながら捜索していました。邪気の発信源は?」
「わからない。まだ発見できないのだが、刻一刻と、その邪気がこの学園内に広がり、濃密になってきている」
ちょっとまって、俺をおいていかないで。
「どういうことですか? 学園長。それでなんで俺たちが呼ばれたんですか?」
「ふむ……」
何が起こっているのか、何で呼ばれたのかも分からない体でいると、学園長が先日、ガオンだけを呼んだ時の事を話し出してくれた。
「え、じゃあガオンは、その昔魔王討伐を成した初代シド・ロードサモン・アールフレンドの召喚獣だったんですか」
「ああ、そうだ。だから君たちを呼んだのだ」
どうりで強いわけだ。実は、このガオンが寝ている隙に、液晶タブレット……パレットでガオンのレベルを見たことがある。
そのときのガオンのレベルは、レベル百二十九。
レベルって、九十九でカンストするんじゃなかったのか? と目を疑った。
だが確かに、レベル二十九ではなく。百二十九だった。
学園長がガオンに尋ねた。
「ガオン、君は何か思い当たることはないかね?」
「さっぱり分かりませんな。ただ、悪意ある者が進入していることは確かだと思われます。私見でありますが」
「ふむ、その私見。聞かせてもらいたい」
「まず、結界について、密かに侵入するのであれば、入ったときに結界を修復しておくはずです。あけたまま放置していては隠密行動が取れないどころか、ばれるのは当然であります。ではなぜ、結界に穴を開けたままにしておいたのか? それは、こちら側への挑発行為。と判断します」
「挑発行為、か……」
「はい。犯人は、未だ見つかってはいないものの、結界を修復せずにいたことで、その存在を主張したのです。そしておそらく昨晩からでしょう。邪気の発生源については」
「聞かせてもらおうか」
「はい。邪気をばら撒くアイテムを考えると、おそらく魔石を使用したのでしょう。ですが、邪気を溜め込んだ魔石それだけでは何にもなりません。何かしらの触媒が必要になります。それはおそらく……召喚獣でしょう」
「そこまで的確に明言できる理由は?」
「強いて言うのであれば、過去の経験則、でしょうか」
「わかった、納得しよう」
なんか学園長は、ものすごくガオンを信頼しているようだ。
でなければ、こんなに話がスムーズに進むわけがない。
「召喚獣に、邪気を溜め込んだ魔石を埋め込んだ場合、その召喚獣は邪悪な者へと変貌し、成長し続け、己を中心に邪気をばら撒きます。今はまだその成長途中。見つからないのは、まだ微弱なことと、その魔石を埋め込まれた召喚獣が学園内を移動しているからかもしれません」
「では、恥を忍んで尋ねるが、対策としてはどうしたらいい?」
「生徒を探してください」
「生徒? なぜかね?」
「侵入者が魔石を、まだ未成熟の召喚獣に埋め込んだのです。だとすれば、パートナーの生徒の誰かしらも、何か危害を加えられた可能性があります。今日、たとえば授業に出席していない生徒。どこにも見当たらない生徒を探し見つけ出せれば、どの召喚獣に魔石が埋め込まれたのかまでは、判明するでしょう」
「そうか、やはりガオン、君に助言をもらって良かった」
「いいえ、老兵の経験でしかありません。もしかしたら別の事が起こっているのかもしれません」
「だが、筋が十分に通っている。聞くに確かな助言だった。ありがとう」
「微力ながらお力に慣れれば幸いです」
「すぐに動かせる者に捜索させ、教師たちに今日の授業に出席していない生徒をあらわせよう。急に呼び出してすまなかった」
「いいえ、これは早急に対処せねばならない事態です。お力になれるのであれば、いつでも呼んでください」
「ありがとう、即時対応を行う。君たちは気をつけて過ごしてくれたまえ」
「分かりました。この筋肉、いつでも動けるようにしておきます」
それで、俺を置いてけぼりのまま、学園長室を出た。
「ガオン。何が起こっているんだ?」
「……マモル」
「うん」
「何が起こっても、お前さんだけは守ってみせる」
「…………」
察するに、今とても大変なことが起こっているのだろうと思う。
だが、ガオンはともかく、俺には何の力もないわけで。
「そっか……」
俺はこれから起こる事に、何もできないのだろう。
そして異変は、夕方を待つ頃に突然起こった。
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