おそらく最後になるであろう夕食。
「ええ、じゃあ、元の世界に帰るか、改めて召喚獣を持ってここに残るかを選ばせてくれる事になったの?」
「ああ、そうだ」
今日は鮭の定食。やっぱり俺は、日本人だな。
「で、どうするんだい? マモル」
アラタが聞いてきた。
「どーするか、ねえ……どうしよう?」
「新しく召喚獣をもらって残っても、大丈夫なのかしら?」
「さあ? だけど、ガオンをもう一度召喚する事は……おそらく、あのガチャ方式の召喚術だと、二度と無理だろうね。だとすると……」
アラタとシャルティの話に、アスカがうろたえて、飛び上がるように口を開いた。
「ちょっと待って、じゃあマモルだけが帰っちゃうって事? 離れ離れになっちゃうの!」
「まあ、元の世界でも高校が違って、そうなる予定じゃなかったか?」
「だけど…でも……」
と、背後から――
「私は、反対」
「うわっ!」
びっくりした。
「マモル、おねえちゃん参上。ぴーすぴーす」
「レイナ先ぱ……おねえちゃん、謹慎中じゃなかったの?」
「抜け出してきまーした」
「それ絶対ダメだよね?」
「でも、マモルが悲しい思いをしているかもと思ったら、耐えられなかった」
そしてがばっと、俺の頭を胸に抱いて、いつもどおりに俺を愛で始めた。
「やっぱりマモル。いい匂い」
もうアスカもシャルティも、さすがにこの状態に見飽きたのか、スルーしている。
「ダメ、マモル。帰ったらダメ。おねえちゃんの命令」
「うーん、どうしましょうか……」
「ダ、メ」
「うーん……」
「マモル成分補充中」
「俺は充電器じゃありません」
「そしてマモルも私で癒される。どっちもウインウイン」
「俺、むしろ弟と言うより、ペットか何かですか?」
「じゃあ私の、ペットになる?」
「なりません」
そこはきっぱりを断った。
「じゃあ、このまま姉妹関係で」
「俺は女子じゃありません」
「女装させたら、いい感じになるかも」
「勘弁してください」
「ふふふ……」
そして、「レイナ・レイス見つけたぞ!」と教師に見つかって、レイナ先輩はダッシュで逃げていった。
「はぁ……」
今夜は、とても静かな夜だった。
ふと、思い立って窓を開けて夜空を見た。
「この世界にも、月があるんだな」
それも二つもあった。
二つ、少しだけ離れて月があったが、おそらく距離としては違うのだろう。
並んでいるようで、途方もなく離れているであろう二つの月。
俺はしばらく、その月を眺めた。
そうして、俺の与えられた選択に、
心を決めることができた。
俺はさっそくパレットを使い、みんなに連絡を入れた。
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