こういうのもめんどくさい。
食事が終わって、俺はアスカ&シャルティと別れた。
俺とガオンとアラタの三人で、日が落ちて暗くなった歩道をすたすたと歩く。
特に話すことも何も無い。話し出すことも無い。
――すると。
なんだ? 目の前に同じ学年の見知らぬ男子が三人、俺たちの前に立ちふさがった。
「おい、そこの死んだ魚の目をしているようなヤツ、小野寺マモルだな?」
俺かよ……。
「ああそうだけど」
うん、大体把握した。このガラの悪い態度。典型的だなあ。
「URの召喚獣を引き当てたからって、調子付いてんじゃねえそコラァ!」
「どうせその筋肉ダルマがいないと何も出来ないんだろ?」
「運だけでデカイ面するなよな!」
あー、いるよね。こういう人種。
特に何か特技があるわけでもなく、リーダー性やカリスマ的な物ががあるわけでもなく、それでも何かしらのグループの中心人物になりたがるやつ、目立ちたがるやつ、イキがっていたいやつ。……そういうヤツは大体、目立っている人間に矛先を突きつける。
つまりはやっかみだ。
……うっとおしい。
「ちょっと君達」
ガオンが前に出ようとした。
「召喚獣は黙ってろ! 間に入ってくるな!」
「そうだ! 俺たちはそこの運が良かっただけの無能野郎に用があるんだよ!」
「……ちょっと待ちたまえ」
言葉のやり取りをさえぎったのは、アラタだった。
「僕の新しい友人に、脅しや危害を加えられるのを、見逃すわけには行かないな」
「お前は昼間にこいつに負けたやつじゃねえか」
「三体も召喚獣を持っていたのに、なっさけねえなメガネオイ!」
その罵声に、アラタは静かに黙して、メガネのブリッジを指先で持ち上げた。
「確かに、最善の手を出来る限り打って、そして負けた。ただの観客になって遠巻きに見ていた君達とは違ってね」
「おいおい、負け犬が何をほざいてるんだよ! 馬鹿か!」
「馬鹿は君達だ」
三人の名も知らない男子生徒に向かって、アラタが数歩前に出た。
「つまりはさ、こういくことだろう?」
アラタが人差し指を出して、かかって来いと言わんばかりに指を振った。
「こっちの方が手っ取り早い。違うかな?」
「なんだお前? こっちが三人がかりになるぞ」
「問題ないよ。それとも臆したかな? びびったのかな?」
アラタが体を半身を見せる姿勢になって構える。
「上等だこら!」
男子生徒の一人がアラタに向かって腕を振り上げた。
「はっ!」
それは、自分で見たものが信じられなかった。
アラタが拳を振り上げて肉薄してくる男子生徒を、一瞬で上下さかさまにして、頭から地面に落とした。
「ふっ!」
アラタが呼気を吹いて構えた。
「なあに、簡単な小手先の、古流武術さ。まだやるかい?」
緊張の糸が張り詰めていく。
「……ちっ。くそったれ!」
固まった空気に耐えられなくなって開き直ったのか。二人の男子生徒が倒された男子生徒を担いで去って行く。
「首は大丈夫だと思うけど、軽い怪我と脳震盪ぐらいはしているはずだから、治療室に連れて行くといいよ」
構えを解き、多少声を張り詰めて、去って行く男子生徒の三人組へアラタが助言した。
「……さてと」
アラタがこちらに向いた。
「改めて自己紹介だ。荒熊アラタ、この世界に来る前は家庭の事情で古流武術を継ぐ予定だった。得意分野はトランプを含めたカードゲームに、将棋。好きな科目は世界史日本史全般。よろしく」
アラタが手を出してきた。
ただのカードオタクじゃなかったのか。
「ああそれと、座右の銘は『人は考える葦である』さ」
コイツは間違いなく『持っている』人間だった。アスカの誰とも仲良くなれるのと同じように……。
「個人的に、お前は敵に回し無くないな」
「ふふ、よく言われるよ」
俺は差し出されたアラタの手を掴み、握手をする。
視界の端では、うんうんと腕を組んで頷くガオンがいた。
こういう人間は、遠ざけるより仲良くしておいたほうがいい。
めんどくさいから……。
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