大逆転!!大暴走!! 大胸筋祭り!!
「ガ・ギーンオー、ジェットパンチ!」
まるで大砲のように発射された拳が、ガオンに肉薄する。
「スーパー! マッスルビンタアアアアアアア」
バチコォン!
ガ・ギーンオーの拳が、ガオンの大振りで叩いたビンタで弾き飛ばされる。
「パンチにレーザー、ボイスによる音波攻撃、ミサイルと変形突進攻撃。なかなかの攻撃技のレパートリーだった」
「なにそれ! ちょっと見たかった!」
「ならば私も、それなりに応えなければなるまい……常にストロング、ストロンガー、ストロンゲスト!」
そしてガオンは両腕を持ち上げ、それを頭の後ろで組んだ。
「マッスルチャージを行う!」
なんだそれ?
ガオンが尻を突き出すようなポーズをしたかと思えば。
「ソイヤ!」
掛け声で今度は股間と胸を突き出して弓なりに体を反った。
「ソイヤ! ソイヤ! ソイヤ!」
なんかとんでもない奇怪な反復運動。
「ソイヤソイヤソイヤソイヤソイヤ――」
その動きがどんどん早くなっていく。
ヒュオオオオオ――
その反復運動が加速していくと、徐々に風も動き出した。
「ソイソイソイソイソイソイソイソイソイソイ――」
そしてついにはその反復運動が目で追えないほど早くなってしまった。
ヒュウウウウウウウウウウウウ! ゴバアアアアアアアアア――
「あつ! 熱い! 汗くさ! あつ汗くさ! なんだこれ!」
ガオンの超速反復運動で、熱風と汗臭さが混じった風が吹き乱れる。
「ソイソイソイソイソイソイソイソイ……ふぅうううう……」
そして奇怪な変態運動を終えたガオンが動きを止め、大きく息を吐いた。
「マッスルチャージ、充填四十パーセントほどでいこう」
観客も戦慄を覚えたのだろう、そのすさまじい気迫に、誰もが黙っていた。
そして両腕を頭の後ろに組んだままの姿勢で。
「筋肉大暴走! 大! 胸! 筋! 祭りじゃああああああああ!」
大暴走、その名のとおりに、
ドドドドドドドドドドドドドドドドド――
上半身は姿勢を崩さぬまま、ガ・ギーンオーへ物凄い勢いで突撃していった。
「ソイヤァ!」
ドガアアアアアアン!
そして大胸筋祭りと言った通りに、ガ・ギーンオーへ分厚く鍛えられた大胸筋をぶちかました。
「ソイヤァ! ソイヤァ! ソイヤァ! ソイヤァ!」
ズドガァン! ドガァン! ドガァン! ズドガァン!
さすがにこんな変態的な攻撃に、ガ・ギーンオーもうろたえている。
「ソイヤァ! ソイヤァ! ソイヤァ!」
……そりゃ攻撃目標が自分から超突進してきて、大砲のような勢いで大胸筋をぶつけてくるなんて、うろたえても仕方ないよな。
正直、ドン引きである。
筋肉の塊が巨大なスーパーロボットのようなゴーレムとひたすらぶつかり合っている。
「ソイヤァ! ソイヤァ! ソイヤァ! ソイヤァ! ソイヤァ!」
そして、ガ・ギーンオーのほうがぶつかり合いに負けつつあった。表面に日々が現れ、表面が剥離していく。そしてソイヤァ! のガオンの叫び声と突進を受けるたびにダメージがドンドン蓄積されていき――
ズゥゥゥゥン……。
ついにはガ・ギーンオーは後ろへ倒れ込みそうになるほどに、しりもちをついた。
「ぬんっ!ふうううううううう……」
ガオンも大胸筋による突進攻撃をやめ、ガオンとガ・ギーンオーが向かい合った。
「ではそろそろ終わりにしよう」
ガオンが宣言した。
ガオンが右腕をぐるぐると回し、力を込める。
「バンプアップ! ライトアーム!」
モリ、モリモリモリモリ――
ガオンの右腕が膨れ上がり、ひと回り大きくなった。
「いくぞ! 一撃必殺!」
ダンッ!
地面をえぐるような踏み込みで急加速し、一気にガ・ギーンオーに肉薄したガオン。
「ストロング! ブレイイイイイイク!」
ガオンの巨大化した右腕が、ガ・ギーンオーの胴にぶち当たった。
ドガァン!
ガ・ギーンオーが爆発したかのように、胴が粉砕され、真っ二つになる。
ズドウゥゥゥゥゥン……。
真っ二つになったガ・ギーンオーが地面に倒れ、動かなくなった。
「ふぅううううううん……ゴーレムならば、これくらいの負傷でも生きていられるだろう。命は取らない。レイナ女史。しっかり修理してあげることだ」
そしてガオンは、右腕を持ち上げ、高らかに宣言した。
「我が筋肉の! 大逆転! 大勝利である!」
ガオンの勝利宣言に、観客の生徒がワアアアアアアと歓声を上げた。
一杯のプロテイン。
それは不死鳥をも呼び起こす。
勝利の一杯だった。
そしてガオンのマッスルポーズを中心に、謎の歌が流れ出した。
〈♪筋肉たちの挽歌♪〉
燃やせ その体に 宿る
たんぱく質に 命を賭けて
筋トレがお前を呼んでいる
キレた 体を掴むため
熱い その体に 産まれる
新しい 筋繊維にゆだね
ボディビルドの 朝を
目指して いるのさ
疲労に倒れた体を 夕日が染めていく
鍛えた体が 笑顔と勇気に変わるだろう
立ち上がれ まだやれるだろう
肉体が光る 体が雄雄しく猛る
鳴呼……き・ん・に・くぅ~
「なんだこの歌は?」
俺の言葉は、観客席から響く黄色い声によってかき消された。
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