028 ~騎士たちの嘲笑⑦パーシヴァル~ 

俺は信じられない光景を目にした。あのゴミ王子がアグラヴィン、ガラハッド。そしてトリスタンまでもを倒したのだ。

物陰に隠れて場が収まるのを待っていたが、こんな事になるなんて。


円卓の騎士、第6席のパーシヴァル様が、なんでこんな惨めな…事をしなければ…クソクソクソ!!!!


すると、ぞろぞろと男たちが歩いてやって来た。

やばい!まずい!!隠れなければ!


「お、おい!俺たちは円卓の騎士だぞ!!は、放せ!!」


聞き覚えのある声が聞こえてくる。

俺は振り返る。そこには住民に捕まっているアグラヴィンとガラハッドの姿が。


「お、お前ら…!なにして!?」


俺は声を出してしまう。

その中の住民の1人に俺が物陰に隠れているのがバレてしまった。


「なんだお前?その汚らしいかっこうは…」


まだ傷が癒えておらず、この場からすぐ逃げることもできない。


く…くそぉおおおおお!


捕まっているガラハッドが俺を見つける。


「お、お前…パーシヴァル…か??」


「……う、うるさい!!関係ない!!知らない!!俺は!!」


そういい、逃げだそうとするが、住民の男に腕を掴まれてしまう。


「な、なにをする!!俺は円卓の騎士だぞ!!……はっ!?」


「なに!?円卓の騎士だと!!?こいつらの仲間なら、お前も連れていく!こっちへこい!!」


グッと引っ張られてしまう。傷のせいで力が入らない。地面に身体を擦りつけながらアグラヴィンとガラハッドが捕まっている場所まで連れていかれる。


「や、やめろ!!はなせ!!」


必死に抵抗するが、肩の傷、背中の傷、全身が痛み男の腕も振りほどけない。


「俺たちは魔獣を退治した!!なのに、この仕打ちかぁあああ!!」


アグラヴィンが俺やガラハッドを見て、その後住民たちを見て怒りをぶちまける。

そうだ!もっと言ってやれ!!アグラヴィン!!


「魔獣を倒してくれたのは彼らだ!」


しかし、住民たちは聞く耳を持たない。


「うちの子供を傷付けたくせに!よくそんなことが言えたわね!!!!!この偽物騎士!!!」


「べぐぅうええ」


娘が戦いに巻き込まれてしまった母親が怒鳴り、男の住民がアグラヴィンの顔面にパンチをする。


「大人しくしろ!!」


俺たちは3人とも住民に抱えられて牢屋に入れられてしまった。


―ガシャン!


「お、おい!!牢屋とはなんだ!!なんだこれは!!」


「出せ!!俺たちを!!出せ!!」


アグラヴィンとガラハッドが住民に向かって言う。


「そ、そうだ、聞け!お前ら!!俺たちは円卓の騎士…帝国最強なんだぞ!高級な宿を用意するならまだしも、こんな泥と下水臭い場所に閉じ込めるなど何事だ!!」


俺は住民に言う。鉄の棒を何度も揺らすがびくともしない。


「何を言っている。この呆れた偽騎士どもめが」


「は?」


俺はその言葉に唖然とする。


「え、円卓の騎士の俺が、に、偽騎士だとっ・・・!?お前、何を言っているのか分かっているのか!この帝国最強の騎士をつかまえて偽騎士だなんて!」


「そ、そうだ!偽なんかじゃない!本物だ!!我らは!」


しかし奴らはその声を無視する。


「あんた達が騎士なんて信じないね。俺たちを愚民と言い、街やこの街の人々傷つけた。騎士と言うなら、あんた達を倒した少年の方が立派な騎士だったよ」


そう俺たちを侮蔑すると、牢屋から出て行ってしまった。


「は、はは…ははは、な、なんだこれ…」


「くそっ…!なんで、俺たちは円卓の騎士なんだぞ!!なんで牢屋に入れられているんだ!!?」


「こんなの…間違ってる…間違ってるんだ…!」


俺やアグラヴィンとガラハッドが嘆く。俺は歯ぎしりをする。


ぐぐぐぐぎぎぎぎ。ゴミ王子の方が騎士だと…!!!あんな無能が!!!あんな!!!ふざけるな!!ふざけるな!!!

俺は、握りこぶしを作り震えた。


「と、トリスタンは…トリスタンはどうした?」


俺はふと思い出す。そうだトリスタンはあの後姿を消した。何処に行ったんだ?


「アグラヴィン、ガラハッド!何かしらないのか!」


「い、いや…わ、分からない…トリスタンがとこに行ったのかは…」


「分からないだとぉおお!!?」


俺たちを置いて一人で逃げたというのか。トリスタン…!!


「トリスタンの事だ…助けを呼びに行っているに違いない…!」


ガラハッドがそういう。


「助け…だと…?」


「あ、ああ。きっと仲間を連れて戻ってくる!!」


「それまで、この下水と泥にまみれた場所で待て、というのか…」


俺は怒りで身体が震えた。


「パーシヴァル。お前のその傷、休まなければ動けないだろ…」


ガラハッドが俺の傷を見て言う。


「ふぅ…ふぅ…」


俺は怒りに震えながら牢屋の壁を見渡す。すると、ちょうど人一人分くらい通れる窓が付いているのを発見した。


「こ、この窓から…出られるぞ!!お前ら!!ここから!!」


「な、なにを言っているパーシヴァル。この窓には鉄格子が付いているんだぞ」


「バカか!だから、この鉄格子を外すんだよ…!」


「はっ!そ、そうか!この鉄格子を壊して外に出るのか!」


アグラヴィンが言う。


「ああ、はやくトリスタンに追いついて、帝国に戻り、この街の連中を皆殺しにしなければな…!!それに、あのゴミ王子も、必ず殺す…殺すんだ!!」


俺は立ち上がり、鉄格子を止めてある釘部分に落ちている石をガンガンとぶつけ続けた。




あれから何日か立った。この街の住民は俺たちに食事も持ってこない。

この何日か、俺たちは泥水をすすり、壁や地面を這う虫を食べなくてはいけなかった。


「うっ…うぐ…、ぱ、パーシヴァル。も、もう限界だ…」


「なにいってる…!あと、あと、少しで…」


ガンガンと石を叩きつける事数日。ガシャン。と大きな音が鳴り。鉄格子は外れた。


「はっ!!やった!!やったぞ!!!」


「おおお!さすがパーシヴァル!!こ、これで!!」


「は、早く出よう!」


しかし、鎧を着たままでは通れない。俺たちは来ている鎧を全て脱ぎ捨て、何とかその穴から身体を出す。


「う…ぐ…よ、よし、これで……!!」


なんとか牢屋から脱出することが出来た。


「よ、よし、と、とにかく帝国をめざすぞ…!!」


「あ、ああ」


クソ、視界がかすむ。足がおぼつかない。帝国だ、帝国に戻れさえすれば!!あんなゴミ王子一瞬で殺してやる!!


俺たち三人は街の住民に見つからない様に身を隠しながら街を出て森へ駆け込んだ。

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