038 幻影のチカラ

オレの全身から溢れる幻影のオーラは空間から複数の武器を同時に出現させた。今まで掌でしか発動しなかった『幻影の鞘ファントム・ストック』が。ここにきて変化したのか。

何故かはわからない。


でも、今はそれでよかった。


今は、ランスロットを止められれば―――!!


「貴様ッ!!!!」


ランスロットがアロンダイトでオレに攻撃をするが、その腕をダーインスレイヴの鎖で巻き付き動きを止める。

幻影から出現した武器、デュランダル、ロンギヌス、サザンクロス、フェイルノート、ガラティン、ファルシオン、クラレントそれら全て同時に扱うことが出来た。


オレの身体に武器が浮きながら追従していた。オレはガラティンの炎の逆噴射でランスロットを上空へ持ち上げる。


「調子に乗るなッ!」


ダーインスレイヴの鎖をアロンダイトで弾き飛ばすと、空中で素早い動きでオレを翻弄しようとするランスロット。


「この、世界最強の魔法具、アロンダイトの攻撃を防げるわけがない!!」


オレの周りを高速で移動し、ピダッと止まったと思うと、アロンダイトを両腕で持ち振り上げていた。


「くらえ!!!『聖剣の正十字セイクリッド・セイバー』!!!」


レーザの様に伸びた刀身をオレ目掛けて振り下ろす。

オレはその光の中に包まれてしまう。そのレーザーは地面の魔獣もろとも地面を切り裂いた。


―ズドドドドン!!!


「…ふん…どうだ、この技を食って生きていた者はいない」


煙が立ち込めて、それが一気に晴れる。


「なにッ!!?」


オレはサザンクロスを手に持ち、ダーインスレイヴの鎖で全身を覆い、ガラティンの炎魔法で防御力を上げ、魔法を併用して使いアロンダイトの攻撃を防いだ。


「オレは…もう、負けない…!!」


宙を舞い、一気にランスロットとの距離を詰める。


「なっ!?…くっ!?」


ロンギヌスでアロンダイトの攻撃を防ぎ、フェイルノートの『無慈悲な斬風破フルウィンドウ・ブラスト』の攻撃を至近距離で当て続ける。


「…ぐぅうう!!!ああ!!!」


アロンダイトはさっき強力な魔法を放った。今なら魔法障壁を突破できる。

そこに同時並行でデュランダルの魔法奥義・剛腕千手観音で追い打ちをかける。


「や、やめろおおおお!!!」


そして、クラレントの突きでその魔法障壁を完全に打ち破る。


「がああああああっ!!」


クラレントの刃はランスロットの肩に突きさる。

ガラティンの逆噴射で体重を乗せて押し込む。


「があああああああああ!!!!!!」


ランスロットの叫び声が響く。

そして、そのまま急降下する。


クラレントを抜き、ランスロットはアロンダイトでオレの首を狙ってくる。

ガラティンの逆噴射をやめて、オレとランスロットは自由落下で下に落ちていく。落ち着続けて加速していく。


ロンギヌスでアロンダイトを持つ方の肩を突き刺し。


デュランダルで右脚を刺し。


ファルシオンで左脚を刺し。


フェイルノートで全身を矢で打ち抜き。


サザンクロスで胴体に衝撃を与え。


ガラティンでアロンダイトを持つ手を吹き飛ばし。


ダーインスレイヴで動きを封じる。


そして、急速に加速して地面に当たる瞬間に胸にクラレントを突き立てた。


―ドドドンッ!!


凄まじい衝撃波が一帯を巻き込む。


「うぐッ………う……う…」


「ハァ…ハァ………」


立ち込める煙。建物の崩れる音。

オレは、全身の力が抜けて、ランスロットのすぐ隣に腰を落とす。


「ハァ…ハァ………」


ランスロットを見ると、まだ意識はある様だった。しかし、身体は動かない。完全に戦闘はもう行えないという様な状態だ。


「…うぐっ………お、お前は…いつか、俺や…アンブローズ様と同じ結論にたどり着くはずだ…うぐふっ…はぁ…はぁ…」


今にも途切れそうなか細い声でランスロットは言った。


「ハァ……ハァ……それでも……」


「おーーーい!!」


遠くから声がする。それは、レシアとエンジュだった。

気が付くと周りの暴れている魔獣は消えていた。


オレとランスロットとの戦いに巻き込まれていた奴や、おそらくエンジュやレシアが戦ってくれていたんだろう…。

静かになった街、ボロボロの。その光景を夕焼けが照らす。


塵が舞い、キラキラと反射していた。


オレは、レシアとエンジュを見ながらランスロットに答えた。


「…それでも、オレはお前らと同じ結論には辿り着かない、オレは……」


ランスロットの方を見ると、もう彼は目を閉ざしていた。


「ランスロット……」


「ラウト―――――!!!」


「うわっああああ!いててて!」


レシアがオレの首に飛びついてきた。


「無事でよかったあああああ!!」


大きな涙をこぼしながら抱き着くレシアをオレはあたまを撫でることしか出来なかった。


「無事で何よりだ…ラウト!!」


そこにエンジュも抱き着いてきた。


「エンジュも、レレシアも…ありがとな…へへ」


オレたちは3人で抱きしめ合った。

今、生きているという実感を得るかの様に。


ただ、泣いて。ただ、自分たちの居場所を確かめる様に。




街中には避難していた国民たちが外に出てあたりを確認してた。

これからが一番大変だというのは、誰しもが分かっていることだった。



でも、今だけは。この時間を大切にしたかった。

レシアの泣きながらも照れて笑う顔やエンジュの安堵しながらも心配していたというのが伝わる顔を見つめる。

この時間だけは誰にも奪われたくなかったんだ。

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