004 ~騎士たちの嘲笑①パーシヴァル~

「はぁ、やれやれだぜ、清々したな!みんな!あの悔しそうな顔見たかよ、くくくくっ!」


「ま、円卓の騎士に弱い奴は要らないしね~」


「まるで子犬だったな」


俺の言葉に9席のケイと8席のパロミデスが答える。

ここは城の中にある、とある部屋の一角。


第6席の、この俺、パーシヴァルとケイとパロミデスの他にも4席のガラハッド、5席のラモラックが椅子に腰かけていた。


「お前らもそう思うだろ?なぁ?ラモラック」


「私は、強い人しか興味ないから、王子だろうとなんだろうと弱い奴は嫌い。だから、兄貴も好きじゃない。気安く話しかけないで」


ラモラックはそういうと立ち上がって何処かに行ってしまった。


「あ、おい!…たっく。これだから年頃の女は嫌いだぜ、クソが」


あいつは俺の妹で円卓の騎士の中でもランスロット、トリスタンに並ぶ腕の持ち主だ。

気に食わねぇが、その腕を王に見込まれて円卓の騎士入りをした。腰に付けた、罪銃グングニルはどんな物でも貫けると言われている。最強の武器の一つ。

あれに選ばれたのは、あいつの才能なのかもしれない。


「ふっ…お前らはいつまでたっても変わらないな」


椅子に座って俺を笑うのは、ガラハッド。俺の友人。寄宿学校の時からの仲だ。勿論、俺とラモラックとの仲の悪さも知っている。


「うるせーぞ、ガラハッド」


「そうかっかするな~、折角すっきりしたんだ。あとでいっぱいやるか?」


「まぁ、それもそうだな…クソ雑魚のラウトのやろうをぶっ飛ばしたかったぜ!!!俺も!」


拳を手のひらに当てて、あの時もっといたぶっておけば良かったと後悔する。


「おいおい、俺にもやらしてくれよ?」


「ああ?お前の魔法具は盾だろうが」


「ふん、盾にも使い道はあるんだよ、いたぶるのは得意なんだ。特にあれくらいイキがっているラウトみたいな子供はな」


ガラハッドの使う武器は十字盾サザンクロスどんな攻撃でも跳ね返し、神が作ったとされる聖遺物の一つ。この魔法具に選ばれる騎士は、今後現れないだろうと言われているくらい才能のある奴だ。


「ま、もう死んでるし。どうでもいいけど」


俺は頭の後ろに手を組み、両足を目の前にあるテーブルに乗せてくつろぐ。俺たちは今、王の側近であるアンブローズの招集で集められていた。


「ったく、それにしても遅くねーか?何分待たせんだよ」


すると、しばらくして部屋のドアが開き、そこに長いローブを羽織った眼鏡の老人の男が合わられた。

王の側近、アンブローズだ。


「待たせて済まなかったな、円卓の騎士たちよ」


部屋の真ん中まで歩き、その場で止まる。


「やっとかよ」


俺は立ち上がり、椅子の背もたれにもたれ掛かりながらアンブローズに言った。


「それで?俺たちになんのようだ?」


アンブローズはあたりを見渡す。


「ラモラックがいないようだが…?」


「…ッチ。あいつは、いねーよ。そんなことより話を進めてくれ」


「…まぁいい。では、今日お主たちを集めたのは、久しぶりに"聖杯"の情報が入ったからじゃ」


―!!?


部屋にいる全員がその言葉に驚きの表情を浮かべる。

聖杯。それは奇跡を起こすと言われる力を秘めた物。手にした者はその奇跡を実現できると言われている。俺たち円卓の騎士は国を守る防衛や、戦争での活動もしているが、王から受けている一番の任務は魔法具を探し集めること。


俺たち、いや、前王の時から数百年間ずっと魔法具を探し集めてきたからこそ、このブルターニュ帝国の繁栄はあったといってもいい。そして、その中で最上級と言われる聖杯は特に探されてきた。伝説と言われるほどの魔法具。聖杯の情報は限りなく少なく。デマや伝承、噂からあらゆる情報がこの城に集められてくる。その情報の中で信憑性の高い情報があった場合。円卓の騎士が派遣される。今回は、数年ぶりの情報と言うわけだ。


「今度は本当なんだろうな?」


パロミデスが問う。


「…分からん、しかし確かめるだけの情報では、ある」


自分の髭を触りながら答えるアンブローズ。


「それで?今回は誰が行くの?ここにいるあたしら、全員?」


ケイが質問を投げかける。


「うむ、現在3つの情報が来ておる。しかし、精査中でもあり1つずつその場所に行ってもらいたいのじゃ。まずは、パーシヴァルとラモラックに任せようかと思ったが、ラモラックが不在の用なら別の騎士に任せるかの~」


「ああ??ラモラックなんて必要ねーよ!!」


俺がアンブローズに言う。


「俺一人で十分だ!」


それを制止するようにガラハッドが俺の肩を掴んで言う。


「アンブローズ様は2人で行くようにおっしゃっている。ここは素直に従った方がいい。何なら俺が一緒に行くぞ」


「必要ねーよ、聖杯を見つけるのは俺が一番先だ!このロンギヌスさえあればどんな敵が現れても心配ねぇ」


俺にはこのロンギヌスがある。

椅子のそばに立てかけてあったロンギヌスを手に取る。


「いいな?アンブローズ」


「…まぁ、お主が行きたいのなら止はせん」


「場所と情報を教えろ」


アンブローズから場所と聖杯の情報を聞いた俺はロンギヌスを背中に背負い、部屋を歩いて扉を開けて出ていく。

ガラハッドがまだ、何か言っているが構いやしねぇ。


聖杯だろうと何だろうと円卓の騎士で最強は俺なんだよ。ランスロットでも、トリスタンでも、ガウェインでも!もちろん、ラモラックでもない。

俺が一番最強なんだ!見せつけてやる!


廊下を進みながら、聞いた情報の事を思い出す。

ブルターニュ帝国から南西の方角に遺跡があるらしい。そんな辺境の地に俺様が苦戦する「何か」がいるわけがねぇ。


なんてったって俺は、この聖槍ロンギヌスという魔法具に選ばれた騎士なんだからな!

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