006 ヴェスカー

森の中を進んでいると遭遇した少女とその少女を追いかける盗賊たちと出会ったオレは、盗賊倒して少女を救った。

オレは少女レシアにさっきの盗賊との話を聞く。


「さっき、こいつらのボスに何か大事なものを取られたって言ってたけど、そっちは大丈夫なのか?」


そう聞くと、レシアは目線を下に移して悲しそうな顔をする。


「……もういいのよ、さすがにあんたでもあいつには勝てないわ」


その表情を見ると、グッとあの時妹を助けられなかった後悔と自分の不甲斐なさが込みあがってくる。


「…オレが取り返してやるよ」


「えっ…」


「レシアの大切な物なんだろ?だったらそれを奪ったやつは許せないし、大切なものを失う気持ちをレシアに味わってほしくない」


「な、なんでそこまでしてくれるのよ。赤の他人なのに…」


レシアは驚きと戸惑いの表情でオレを見つめる。


「別になにか裏があるとかじゃないぜ、ただ…許せないんだ。そういう奴がな」


パルの命を奪ったやつや、円卓の騎士のことを思い浮かべると怒りが込みあがってくる。


「…そう。気持ちは嬉しいけど、でも、本当に危険よ!あいつはこの一帯では有名な盗賊ヴェスカーなのよ!!」


「ヴェスカー?知らない名前だ」


「うそ、あんたここらの地方の人間じゃないの?」


「まぁそういう事になるかな…」


「なんだが訳アリみたいね…とにかく悪名高いやつってこと!かなりの大男なんだから!」


「大丈夫だよ、どんな奴が相手でも、オレはもう負けない。絶対に…」


ーガサガサ


茂みから音がしてその方向を見ると、大人の何倍も大きな大男が草木をかき分けて歩いてきた。


「ああ??お前らなんだってこんなところで寝てる??」


レシアがその大男を見て恐れの表情を浮かべる。

大男はこちらの存在に気づき、目線を向ける。


「お、俺の女がこんなところにいるじゃねーか、ゲッヘヘ」


口から酒臭い匂いを出しながら話す男。

おそらくこいつがヴェスカーだろうな。


「誰が俺の女よ!無理やり私を捕まえようとして!!最低!!」


「へっ!女を力づくで奪い取るのが男ってもんだからなぁ、威勢のいい女も悪くねぇぜ。」


ヴェスカーの腰には魔法具らしき鉈があった。

こいつも魔法具使いか。


オレはヴェスカーをにらみつける。

その視線に気が付いたのか、オレに視線を向けるヴェスカー。


「なんだ、おまえ…誰だぁ?」


「…あんた、レシアの大切な物を奪ったらしいな。返してもらおうか。それを」


オレはヴェスカーに手を出して言う。


「ああ?何言ってんだ??大事なもの?…ああ、このペンダントのことか」


そういうと、首元にかけている金とガラスでできた様な綺麗なペンダントを持ち上げて言う。


「はっ!私のペンダント!!」


「これは、俺が奪ったんだ。だから俺のもだ。そして、そこの女も俺が奪う。グヘヘヘ」


「うっ!それは、私のお母さんの物よ!!なんで、なんであんたが付けてるのよ!!返して!!返してよ!!」


「きーきーわめくな…にしても、こいつらなんで気絶してるんだ??」


ヴェスカーは道で伸びている手下の盗賊らを見て言う。


「オレが倒したからだよ…」


ヴェスカーに言う。


「はっ、お前みたいな小僧に大人の男が負けるわけねぇだろうが」


「やってみれば分かるぜ。あんた、相当強いんだってな?」


「なんだ…小僧?」


「オレと勝負しろよ」


オレはクラレントを幻影から取り出す。


「勝負?…ブッガッハハハハハハハハハハ!!!!!!この俺と、勝負しようっていうのか!!!こりゃ面白れぇ」


レシアに少し下がっていてくれと伝える。


「面白れーだろ?どうだやるか?」


「ハハハハッ…いいぜ、暇つぶしに遊んでやる、その後でそこの女を捕まえる!!掛かってきやがれ!!」


ヴェスカーは魔法具とは別の剣を腰から引き抜き構える。


「じゃあ、遠慮なく…」


バッと飛び出し、クラレントで切りかかる。ヴェスカーは剣でその攻撃を弾き、クラレントを宙に飛ばした。


「ハッ!!その問い度か、小僧!!!」


ヴェスカーは剣を持ち換えて大きく振り上げた。


「これで、お終いだぁぁ!!!!」


その瞬間。


「大振り、あんたの性格なら来ると思ったぜ!!」


オレは『幻影の鞘ファントム・ストック』を出して、ヤツへ向けて手のひらを広げる。そして、クラーケンから奪ったトライデントをヤツの胴体めがけて発射し打ち当てる。


ードガズガガガガガガッ!!


「なっ!??」


超巨大な三又の槍はヴェスカーの胴体を捉えて、後ろの木々を巻き込んで数十メートル、一帯を吹き飛ばした。

トライデントは大きすぎて持つことは出来なし、小回りもきかないが、取り出すだけで効果を発揮する大質量の武器となった。


オレの読み通りだった。


数秒時間が止まった。

レシアはその光景を見て「……すごい」と一言呟いた。

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