022 ~騎士たちの嘲笑⑥パーシヴァル~
気が付くとオレは川に流されて大木に引っ掛かっていた。
「う…うぅう…こ、ここは…」
お、俺はなんでここに…。
はっ!そうか。俺はゴミ王子を追っている最中に魔獣に襲われて川に流されてしまったんだ…そうだった。
一気に背中と肩に激痛が走る。
なんとか体を起こして川岸へ向かう。
水の流れは落ち着いていて、足が動く。
そして、川にたどり着き仰向けに寝そべる。
ゴミ王子の顔がチラつく。
「こ、こんなところで…こんなところで…!!」
なんとか体を起こす。
「とりあえずまずは傷を癒さなければ…」
森を進み町を探す。
「ふう、ふう、ふう…」
肩を抑えながら茂みを歩く俺。
円卓の騎士の第6席、ロンギヌスに選ばれたパーシヴァルのこの俺様がこんな、こんな無様な…クソ!!
何故奴は俺のロンギヌスを扱えたんだ…あり得ない。あり得るはずがない!!
何故なら魔法具に選ばれる人物は1人だからだ、この俺だけがロンギヌスを扱えるはずなんだ!
「そうだ…!これは俺が、神に選ばれて手に入れた力だ!俺が自分の才能でっ…!!」
茂みを歩くと灯りが見えてくる。
―街だ!!
「ははは、ははは!そうだ!俺は負けてない、あんなクズに負けるはずがないぃ!!」
医者に見てもらい、傷を治してもらえばなんてことはない。なんてことはないはずだ!!!
―あと少し、あと少しで街だ!
なんとか力を振り絞り森を出る。
森を出た瞬間、ぶにっと、なにか柔らかいものを踏んだ。
俺は下を見たあと、長い大木の様な物の先を見ていく。
そこには下級魔物のリザードが俺を睨みつけていた。
「ああぁぁぁぁうぅううう、そ、そんなぁあ…あと、もう少しなのにぃぃ」
俺が踏んでいたのはそのリザードの尻尾だった。リザードは尻尾を振り上げて
鞭のようにしならせながら俺の顔目掛けて降り下げた。
「べらぶっ!!!?!」
簡単に吹っ飛ぶ俺の身体。
そのまま街の方に飛んで行った。
―ズサァーー!!
砂埃が舞う。
身体が上手く動かせない。全身に力が入らず、これ以上は動けない。ヤバイ!リザードにやられる!
リザードの方を見ると、リザードは俺を虫けらの様な目線で見つめた後、俺の事など気に留めずにどこかへ去って行った。
「なッ…!」
こ、この、この円卓の騎士のこの俺を、無視だとぉおおおおおおおお!!!!!
ふざけやがって!!!どいつもこいつも!!!この俺様を侮辱しやがって!!ゆ、許さん。許さんぞぉおお!
急に込み上げてくる強烈な吐き気。
「お、おえええ!!げぼろおおおおお!!」
食べた物と、胃液を辺りにまき散らしてしまう。
地面と自分の身体に鼻を付く強烈な匂いが漂う。
「うぇ、うぐぇえええ…はぁ、はぁ、はぁ」
身体を何とか起こして、直ぐ近くの建物に寄り掛かる。
人気のない場所で良かった。
街の表通りじゃなくて助かった。こんな姿、誰にも見せられない。誰にも。
兎に角、まずは医者だ…。医者はどこだ。
街に入り、辺りを捜索する。出来るだけ人に見つからない様に。
「はっ…!!??な、なんで奴らがここに!?!」
アグラヴェインとガラハッドが街の酒場に入っていく所だった。
まさか、この街に円卓の騎士がいるなんて。
すぐに身を隠した。
「よし、な、なんとか姿を見られずにすんだな……」
―なんで、俺が身を隠さないといけないんだぁあああああああああああああああああああ!!!!!
くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!
メドラウトのあのクズ野郎!!!!!
あいつさえ、あいつさえいなければぁ!!!!!!
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