023 2人の騎士
オレたちはブルターニュ帝国に一番近い
レシアとエンジュと共に旅を続けて依頼をこなしながら街を転々とし、ブルターニュ帝国を目指し数日。
「そろそろ帝国につくな、そうなったらラウトとはお別れとなるのか?」
街の中を歩きながらエンジュが言う。
その言葉にレシアが少し戸惑っていた。
「ど、どうするのよ…あんた。王子に戻るの?」
「…いやそれはないだろうな。オレは国を追われて処刑された者だ…居場所なんて元々ない。オレは妹を殺した奴が誰なのかをはっきりさせる。その者に償わさせる…それだけだ」
「そうか…」
「まぁオレのことは気にしなくていいよ、それより2人ともオレについてきて本当にいいのか?」
2人とも何をいまさらと言うような顔をする。
「私はこのペンダントを手掛かりにお母さんを探す。その為に旅してるし、ラウトの傷を治すのは私なんだから付いていくのは当たり前でしょ?」
さも当然と言わんばかりにレシアは腰に手を当てて言う。
「私はもともと狩人だ。色んな所に行けるのはむしろ都合がいい。ラウトやレシアの目的にも協力したいしな!」
エンジュが腕を組んで言う。
「そういえば、エンジュはなんで狩人になったの?そんなにスタイルもよくて綺麗なら別に狩人にならなくてもいいのに」
「珍しいなレシアが私を褒めるなんて!ははは!まぁ私にも色々あったんだ。私は孤児院育ちでな、いずれ同じ境遇の子供たちのために私も孤児院を作りたくてその資金集めをしていたのだ」
「え、そ、そうだったんだ…」
レシアが驚く。
オレもそんな目的を持っていたとは思わなかったが、エンジュは真っ直ぐな性格だ、それもうなずけた。
「ってことはオレたちのためにそのお金を使ってくれてたってことか…?」
「ん?まぁな!でも、私もお金を貯めることには疎くて、それであの水の魔獣の賞金を当てにしていたところもあってな。手持ちが少ないのはそういう事なのだ、持っていた分しか使えず申し訳ない」
「そんな!!それこそ私たちの方が申し訳ないわよ!そんな事なら早くいっておいてよー!」
「はは、気にするな私たちの仲ではないか、それにあれから依頼もこなしながら資金調達も出来ている。問題ない!」
「オレからも今まで例を言うよ、ありがとうエンジュ」
レシアとオレはエンジュに改めて例を伝える。その場暮しでいいオレたちと違ってエンジュには子供たちのために貯金しようとしている。普通に出来ることじゃない。
「お礼ばかり言われると流石に照れるぞ、お!良いところに店がある、日も暮れてきたし、今日はここで食事といこう!」
エンジュが少し駆け足でお店の方に向かう。
この街は《バーレル》ほど大きくはない。水の魔獣の件でお世話になったあの町と同じくらいだろうか。人通りも多くも少なくもなく、エンジュが指さしたお店は程よく賑わっている様だった。
「わー!このお店良い匂いするわー!早くー!ラウトー!」
レシアもエンジュを追いかけていく。
時折思い出す。もしかして母さんとパルが生きていたら、エンジュとレシアの様に過ごせたのかもしれないなと。
円卓の騎士たちから追放されてずいぶん経ったが、まだ憎しみと怒りはオレの心に渦巻いている。円卓の騎士を見つけて情報を聞き出す、そのためにオレはブルターニュ帝国を目指す。
店に入り、エンジュが3人でお願いしますと店員に伝える。
すると、「すいません、今日は貸切でして…」
という店員。
「なに!そうなのか、それは仕方ないな…むぅ」
「なになにどうしたのー?」
「ん、いやなにやら貸切らしいのだ」
「え、貸切って…」
レシアが周りを見渡す。空きの余裕で何席かある様だった。
「なによ、全然開いてるじゃない!」
「おいおい、嬢ちゃんたち、ここは俺たちの貸切なんだ。諦めてくれ」
そういう男が店の真ん中の大きいテーブル席に座っていた。
「まぁまぁ、彼女たちも話の分からない人たちではないだろう」
席にいる男は2人。鎧を着た騎士だ。豪華な料理がテーブルの上にズラリと並べられた。
「まーた、やなヤツがいる…」
むすっとするレシア。
「ここは貸し切りなんだ、出て行こう」
そう言うとエンジュはレシアの肩を持つ。
「おいー!!まぁまてよ!!席なら空いてるから座れよ!」
「…いいのか?」
エンジュが空いている席の方を見る。
「いや、違う違うそっちじゃない。ここだよここ」
男は自分の足を指さして言う。ニヤニヤと笑みを浮かべながら。
「…ゲスだな」
エンジュがそういうと男の一人が立ち上がる。
「なんだと貴様!!この俺の膝の上に座らせてやると言うのだ、ありがたく思わないのか!」
ドカドカと2人の男はエンジュの元へ向かう。
「相手するのは辞めましょ、エンジュ、切りないわ」
「おいおい、どこへいく、女」
男はレシアの腕をつかむ。
「ちょ、放しなさいよ!」
たじろぐレシア。
その男の腕をオレがガッと掴む。
「なんだ貴様!だれの腕をつかんでいる!!」
この下種な2人組をオレは知っていた。
「久しぶりだな、アグラヴィンに…ガラハッド!」
俺の声に反応するように2人は俺を見つめる。
「…なっ!!?」
「貴様は…!!?」
「「メ、メドラウト!?!」」
2人は俺を見て驚愕の表情を浮かべた。まぁ無理もない。あの時、確実に死んだと思ったのは俺も同じだからな。
「貴様、生きていたとは、な…!しぶとい奴だ!くそ、放せ!汚らわしい!!」
オレが腕をつかんでいたのはアグラヴィン。レシアの腕を放し、オレが掴んでいる腕を振り払う。
運がいいなとガラハッドが言う。
「ふんっ!生きていても構いはせん!!もう一度葬るまでだ!」
アグラヴィンが言う。
「こいつら、もしかしてこの前と同じ円卓の騎士?」
レシアがオレの後ろに姿を隠し、2人を睨みつけながら訪ねて来た。
オレは頷くとガラハッドが反応した。
「この前だと?」
「パーシヴァルの事だ、オレと戦ってそのさ中、瓦礫に埋もれたよ」
オレが事実を伝えるとガラハッドは噴き出して笑った。
「ガハハハハ!!!よくもまぁ、そんな戯言が言えたな。メドラウト。パーシヴァルは、まぁ多少調子のいい奴ではあるが、貴様の様な何の魔法の才能もないクズに負けるはずがなかろう」
アグラヴィンがオレに詰め寄る。
「ウソをついてまで、この帝国最強の騎士団、円卓の騎士に見栄を張りたいか!まぁ運よく生きていたのだ自分を大きく見せたいのはわかるが、そんなことをする奴は弱いやつだけだ。限度があるぞ?」
アグラヴィンはオレを見下ろしながら言う。
「そんなことはどうでもいい、お前らに聞きたいことがある」
オレはアグラヴィンを見上げて睨みつけながら言う。
ちょうど円卓の騎士と会えたんだ。情報を聞き出す絶好の機会だ。
「あぁん?俺たちに聞きたい事だと??」
すると、騒ぎを聞きつけた街の住民が集まってきた。
「いいぞー!円卓の騎士様ー!そんなごろつきやっちまえー!」
「ガラハッド様ー!!そんなヤツやっちゃえーー!」
アグラヴィンはその歓声を聞いてご満悦の様子。
「な、なによこの街の人たち…!私たちをごろつきって!」
レシアが住民を見ながら怒る様に言う。
「ここでは動きにくい、場所を変えるぞ!ついてこい、一瞬で葬ってやる!フハハハハ」
そういうと2人は店を出ていく。
「ど、どうするの?ラウト?」
「円卓の騎士に会えたんだ、妹のことを聞き出すさ」
「私も戦闘に参加でする!任せてくれ!」
心配そうにオレを見るレシア。
エンジュが刀の柄を掴み協力するとオレに言う。背中を任せられる人がいると言うのは心強いものだ。
オレたちも2人に続いて店を出た。
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