011 聖槍ロンギヌス

「はぁあああ!!!」


―バシャッ!


足元の水が大きく跳ねて

パーシヴァルが槍で向かってくる、それをオレは幻影の鞘からクラレントを取り出して向かい打つ。


「そんな、ただの鉄の棒がこのロンギヌスに太刀打ちできるはずがないだろうがバカが!!!!!!」


―ガシンッ!!!


「きゃあっ…!」


「なんて衝撃波だ…っ!」


レシアとエンジュがロンギヌスとクラレントがぶつかった衝撃にたじろぐ。

衝撃は狭い地下水道の奥まで届く様に、足元の水が放射状に弾ける。それ程の威力があった。

重い衝撃が両足に来る。踏ん張らないと一瞬で膝を付いてしまいそうになる。


「さすがは、ロンギヌス!ただの攻撃でも、この威力。だが、オレもただ蘇った訳じゃない!」


オレはクラレントを幻影で消すと、別の武器、魔法具のファルシオンを取り出す。

そして、ファルシオンの風魔法を発動させるー!


「『疾風の斬撃エアロスラッシュ』―――!!!」


クラレントが消えてロンギヌスが地面に向いた瞬間を狙い魔法を打ち込む。

ファルシオンの刃に風が集まり、それを飛ばす。


―ズバババババ!!!


「なっ!ぐ!!」


パーシヴァルはロンギヌスですかさずガードする。

少し後ろに後ずさったが、無傷だった。


「やはり、この魔法具じゃむりか…」


いくら魔法具と言えど、ランクがある。この剛鉈ファルシオンはおそらく下位の魔法具。ロンギヌスは上位の魔法具だろう。

ロンギヌスが持つ魔法障壁に守られているパーシヴァルに攻撃を入れるには至難の業だ。


「ふ、ふははは!!メドラウト!!お前、魔法具を使えるようになっていたとはな!だが、力の差は歴然だ!!ロンギヌスには太刀打ちできない!!残念だったな!!この俺にふざけた口をききやがって、ただで済むと思うなよ!!」


ロンギヌスをブンブンとその場で振り回し回転させる。

そして、槍を構えるとパーシヴァルは魔法を発動させる。


「お前はここで死ね!!ラウトぉおお!!『神槍の閃きディバイン・ストライク』!!!」


パーシヴァルとロンギヌスを中心に激しい光と衝撃波を発する。

ゴウオォン。ゴウオォンと地下水道に鈍い低い音が響き渡る。

これはロンギヌス最強の魔法技。どんな盾でも突き刺すと言われている。


パーシヴァルはグッと足を踏み込むと、一瞬にして、その場から消える。

光の速さとなったパーシヴァルはその勢いのままオレ目掛けて突っ込んできた。



この技は避けられない。オレはそれを知っている。



「ラ、ラウトーーーー!!」


レシアの叫び声が聞こえた。


―ズジャアアアアアアアアアン!!!!!


物凄い勢いで突っ込んできたパーシヴァルの攻撃はオレを完全にとらえて突き刺す。

後方にその余波の衝撃か飛んでいき、地下水道の壁や天井に大きなひびが入る。


―ビシッ! バギバギ!!


と音が鳴り、地面に溜まっている水も一帯から消し飛んだ。


「はっ!!どうだ!!!この技を食らって生きていた者はいない!!!!確実に死んだな!!」


「……………ああ。食らってたら死んでたよ」


「何…!!?貴様!な、なぜ生きて……はっ!!??」


オレは『幻影の鞘ファントム・ストック』を手のひらに作り、タイミングを合わせてロンギヌスの先端がその中に入る様に受け流した。

そして直接攻撃を受けることを回避した。


「な、なにぃいいいい!!!??貴様のゴミ魔法に、そ、そんな使い方がぁあああ!!?」


驚愕の表情を向けるパーシヴァル。


「うそ…あの攻撃を……す、凄い…ラウト」


レシアが驚いている様子。


エンジュがその隙をついてパーシヴァルに攻撃し、刀を切りつける。

しかし、パーシヴァルはその攻撃をロンギヌスでガードして押し返してしまう。


「くそ!攻撃が…入らない…!」


エンジュがそう言う。


パーシヴァルはすぐさまはオレたちから距離を取りロンギヌスを構える。


「ふ、ふふ…ま、まぐれだ。そんな使い方。まぐれに決まってる…!」


やはりリーチが長い槍系の武器は間合いを取るのが難しいな。

しかし、糸口はある。ヤツの性格をよく知っているオレは、あのロンギヌスを『幻影の強奪者ファントム・オブ・ロバリー』で奪う事が出来ると確信していた。


「ほ、ほら!さっさと行けよ!市長!!」


「あ、ああ!た、頼んだぞ!!」


パーシヴァルは市長にそう告げると、女性を捕まえている市長は地下水道の奥に走って行った。

今、あの男を見失うわけにはいかない。きっとこの地下は迷路のようになっている。奴を見失えば女性を見つけるのに時間がかかってしまう。


―なら!


オレはすかさず飛び出してパーシヴァルに向かって走る。


「はっ!懲りない奴だなお前では俺に勝てないんだよ!クソゴミガァア!」


ロンギヌスを振りまわし、オレを切りつけようとする。それをオレはファルシオンで受けるが、弾けて飛んで手から離れてしまう。

ファルシオンは天井に突き刺さる。


オレはパーシヴァルのすぐ下を滑り込みで抜けて、市長の後を追う。


「なっ!…ちょこまかと!逃がすか!!」


パーシヴァルは自分から離れていくオレにめがけてロンギヌスを持ち、投げる構えをする。


「フッ…やっぱりな」


ぼそっとオレは言うが、パーシヴァルには聞こえていないだろう。


「今度こそ死ねぇ!!!」


パーシヴァルはロンギヌスを投げ飛ばす。ロンギヌスはオレめがけて飛んでくる。


―その刹那


投げ飛ばした瞬間、オレは体を反転させ、紙一重でロンギヌスを避ける。

ロンギヌスはオレの少し前のあたりの地面に突き刺さる。


「お前の性格なら、オレを足で追いかけず、ロンギヌスを投げてくると思ったよ」


「な、なにいいいい!!?避けただとぉお!!?」


パーシヴァルはすかさずこちらに走ってきた。

しかし、もう遅い。ロンギヌスはここにある。


オレは突き刺さっているロンギヌスに、触れる。


「はっ!!俺のロンギヌスを使うつもりか!!無理なことはわかってるだろ!!才能の無いお前が、一番なぁ!!!」


オレは、『幻影の強奪者ファントム・オブ・ロバリー』を発動させる。


「―――こい、聖槍ロンギヌス!!!!」


ロンギヌスを掴んでいる場所が紫色に鈍く光り、強いその光は地下水道を照らしだす。


「!?!?な、なんだ!!?」


パーシヴァルが驚くが、もう遅い。

照らされた地下水道は奥が良く見える。市長のおっさんが走る後ろ姿が。


「逃がすかよ、おっさん!!」


オレはすかさずロンギヌスを持つと、おっさんに向けて投げ飛ばした。


―スパッン!!


空気を切る様に一直線に飛んで行った槍は、市長に肩に突き刺さった。


「がああああああああああああ!!!!!!」


市長は前方に倒れて水が飛び散っていた。様々な武器を使いこなすように訓練してきたオレが数十メートル先の的に当てるなんて簡単なことだった。

そして、槍を投げた勢いをそのままに、こちらに走ってきているパーシヴァルの方に体を180度回転させる。


「あの時の、お返しだ!!」


パーシヴァルがこちらに近づいてきたタイミングに合わせて顔面にグーパンを入れる。


「ぐぇええっ!!!」


パーシヴァルは後ろに吹っ飛んだ。

地面に落ちる寸前、「な、なんで…!!??!魔法障壁がなくなって…!!?」と言いながら落ちて行った。


「ロンギヌスの魔法はもう使えない、あんたの武器、オレが貰ったからな」

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