強奪王子 ~円卓の騎士から最強武器を奪いつくす~

MYU

プロローグ 叛逆の光

激しい光と共に吹き飛ばされて、自分の身体が宙を舞っていた。


世界が上下反対になり、自分の頭上には荒れ狂う海が広がっている。


ゆっくりと進む時の流れが、自分の死期を告げている様だった。






――ちくしょう…。





落ちていく中で、断崖絶壁に立つ人影の集団に目を向ける。


鎧を身に纏い、最強と言われる武器に選ばれた存在、円卓の騎士らがオレを虫けらの様な目で見ていた。





――……オレは、ここまでなのか。





何度も受けた攻撃のせいで体が言うことを聞かず、受け身を取ることも出来ないまま、重力に沿って海の中に落ちていく。


肌を刺すような冷たい海水に全身が浸かり、ゆっくりと沈んでいった。






――ごめん、ごめんな…パル…オレは、兄ちゃんは、お前を救ってやれなくて。





暗く深い海の中で意識が遠のいていく。


その中で、城で過ごした他愛のない妹との日常を思い出す。一緒に城の中を探検したり、お菓子を食べたり、本を読んだり、沢山過ごした思い出の数々を。そして、太陽の様な妹の笑顔を。






「―――っ!」






息をしようとして、口から空気があふれ出す。最後の力を振り絞って腕を動かし、かすかな月明かりを頼りに海面を目指して手を伸ばすが届かない。嵐の日の海の中は海流の流れが激しく、泳ぐこともままならなかった。


血まみれの妹を抱きかかえた記憶が蘇る。冷たく、眠る様に死んでいる妹の姿が。






――…ちくしょう、ちくしょう!





怒りが胸の奥底から湧いてくる。


崖から落とされる寸前、円卓の騎士の奴らはオレを蔑み、妹の死をあざ笑っていたのを思い出す。





――オレが何をした、オレや妹が!





強い憎しみと復讐心で冷たい海水の中でも、全身が焼かれる様に熱く感じる。


この怒り、この痛みを抱えたまま死ねないと思った。





――ただ、平穏に2人で生きていければ良かったんだ…なのに、奪われた。妹も、自分の居場所も、何かも…!





――このまま、奪われたまま死んでたまるか……オレは!…オレはっ!





――全てを、奪い返してやる!!





遠のく意識の中、海面に向けた手のひらから紫色の鈍い光が発せられた気がした。


そう思った瞬間、メドラウト・ブルターニュは意識を失った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る