首無し騎士を討伐する
暗闇から首無し騎士(デュラハン)が姿を現す。首無し騎士(デュラハン)は首のない化け物(モンスター)だ。その為、発声する事もない。
ヒヒヒイイイイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
しかし、首無し騎士(デュラハン)が乗っている黒い馬が、来斗達を見て警戒したのか、高らかに鳴き声を放った。
「首無し騎士(デュラハン)か……」
来斗は属性剣(エレメントソード)を構える。首無し騎士(デュラハン)。吸血鬼(ヴァンパイア)と同じ、不死者(アンデッド)だ。ただの不死者(アンデッド)ではない。不死者(アンデッド)の中でも、吸血鬼(ヴァンパイア)と同じように、かなり高位に位置する不死者(アンデッド)である。
「気を付けろ! ……相手はかなり強いぞっ!」
「うんっ!」
来斗はティアに注意を促す。
「ステータスオープン」
来斗は首無し騎士(デュラハン)のステータスを確認する。
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モンスター名首無し騎士(デュラハン) レベル:60
攻撃力:500
HP:500
防御力:500
素早さ:500
魔法力:500
魔法耐性:500
スキル:自動回復(中) 闇属性吸収
※弱点属性光
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基本的なステータスが満遍なく高い、難敵ではあったが、それ以上に来斗にとって厄介だったのは相手の弱点属性である。
「……そうか。首無し騎士(デュラハン)は当然のように、闇属性か……」
属性は基本属性として、四つの属性がある。火、水、風(雷)、地。これを四大属性と言って、ポピュラーな属性である。
だが、稀にこの四大属性に属さない、属性がある。それが光と闇の属性である。
基本的にこの二属性は四大属性とは離れた関係性にあり、相互を弱点としている為、基本属性である四大属性では攻撃が効きづらいのだ。
だが、今の来斗の属性剣(エレメントソード)に宿されている属性は先ほど述べた火、水、風(雷)、地の四属性である。
闇属性の首無し騎士(デュラハン)相手に、スキルで吸収こそされないものの、効率的にダメージを与えられる属性ではなかった。
「……ちっ」
来斗は舌打ちをする。仕方がないか……こうなったら持久戦しかなさそうだ。幸いな事に、今は吸血鬼(ヴァンパイア)であるティアが仲間になってくれたのは心強い事であった。
基本的には一人で攻撃するよりも二人で攻撃した方が削れるHPの値は大きい。それはもう、当然の事のように。二人がかりであれば、例え首無し騎士(デュラハン)の弱点属性を突けなかったとしても、ソロの時とは大きく異なり、短時間で仕留める事もできるはずだ。
来斗は剣を構えつつ、そんな事を考えていた。
――と。その時であった。
「下がって……ライト」
ティアが一歩前に出る。
「……ティア」
一体……彼女に何か、策があるというのか……。来斗には計り知れない、何かが、彼女にはあるような気がした。
首無し騎士(デュラハン)は何も言わない。代わりに、乗ってくる黒い馬が鼻を鳴らしている。首無し騎士(デュラハン)が突如、速度を上げて接近してきた。
手に握っているのはまるで死神のような鎌だ。あの鎌で斬りつけられたら無事では済まない。きっと、首に当たったら首が落ちてしまう事であろう。
「あ、危ないっ! ティアっ!」
あの首無し騎士(デュラハン)の攻撃は当たったら、例え吸血鬼であるティアが相手だったとしても無事では済まない。そんな事は彼女もわかっている事だろう。
――しかし、彼女は避けなかった。首無し騎士(デュラハン)の攻撃にまるで立ち向かっていっているようだ。無策であったのならば無謀でしかない。だが、策があれば別である。彼女の決断は勇敢たりうるものとなるであろう。
「くっ……」
もはや首無し騎士(デュラハン)の間合いは来斗の助けすら間に合わない程に、近くなってしまった。
だが、迫りくる首無し騎士(デュラハン)の攻撃を以ってしても、ティアは全く動じていなかった。
それどころか目を閉じ、精神を集中させているようだった。手に込められているのは膨大な魔力であった。そして、その膨大な魔力が首無し騎士(デュラハン)に向かって放たれるのである。
そして、彼女が放ったその魔法は本来の吸血鬼——不死者(アンデッド)の王たる彼女らしからぬ、魔法だった。
そう、彼女は神官職など、一部の聖職者か、あるいは天使や女神など神に誓える種族しか扱えないはずの……闇属性である首無し騎士(デュラハン)の弱点属性である――光属性の魔法を放たんとしているのだ……。
「聖なる光(ホーリーレイ)!」
ヒヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
首無し騎士(デュラハン)の乗っている、黒い馬が断末魔のような悲鳴をあげた。
ティアの放った、光属性の魔法『聖なる光(ホーリーレイ)』。放たれた無数の光は首無し騎士(デュラハン)を一瞬で飲み込んでいく。
そして、彼女の魔法攻撃は、死神の鎌が届くよりも前に、首無し騎士(デュラハン)を屠る事に成功したのである……。
こうして、来斗が加勢するまでもなく首無し騎士(デュラハン)との交戦は事無きを得たのであった。
だが……当然のように来斗は一つの疑念を抱いていた。その疑念とは当然のように……彼女が先ほど放った聖属性の魔法についてであった。
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