ルーン魔術の施された扉を発見する

「いてて……」

 

 四竜により、傷ついた来斗は安全な地帯を見つけ、焚き火をし、テントを組み立てていた。 今日はここで野営するつもりだ。地下迷宮(ダンジョン)には基本的に太陽の光は当たらない。しかし、生物である以上は睡眠を取らなければならなかった。睡眠を取らない生き物などいない。人も竜も獣でも、万物に眠りは必要なのだ。生物ではない、不死者(アンデッド)などはその範疇には入らないかもしれないが……。


 傷を負った来斗は薬師が習得する『調合』スキルを習得した。使用したSPは30である。 来都は地面に生えている薬草などを採取し、『ポーション』を創り出した。ポーションにも等級がある。来斗が創り出したのは最も低級のポーションだ。ポーションは青色、黄色、赤色と言った順で効き目が異なってくる。来斗が創ったのは青色のポーションだ。


 ゴクゴクゴク!


 来斗は大量に創り出した、青色(低級)ポーションをガブ飲みする。そして、何本かの青色ポーションを飲み干した末、やっとの事でHP(体力)の回復を実感した。


「ステータスオープン」


 来斗はステータスを開き、数値としても自身のHPが回復した事を確認する。

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三雲来斗 16歳 男 レベル:35


天職:無名剣士【ノービス】


攻撃力:250


HP:350 ※50まで低下したHPが300回復


防御力:250


素早さ:200


魔法力:200


魔法耐性:250


スキル:錬成 料理 鍛冶 調合


装備属性剣(エレメントソード)攻撃力+50

※四属性の属性効果が付与(エンチャント)されている。


『ミスリルプレート』防御力+50 魔法耐性+50


※現SP残250


保有アイテム 干し肉×3 青色ポーション×10→7個使用して残、3個


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「はぁ……これで落ち着けるか」


 来斗は胸を撫で下ろす。


 そして、眠りに着こうとした時の事だった。ちなみにではあるがHPゲージとは別に、睡眠ゲージというものも存在している気がする。ポーションを飲みまくればそれだけで不眠でも大丈夫という事もない感じが来斗にはしていた。HPが満タンだったとしても、やはり眠らずに起きていれば眠くなる。HPを回復させ、落ち着いた来斗は改めて眠りに着こうとした。


 ーーと、その時の事であった。


『助けて……』


「……なんだ、この声は」


 聞いた事のない声が聞こえてきた。来斗にとって、この地下迷宮(ダンジョン)『ウロボロス』は二回目の攻略である。


 内、一回はクラス全員での攻略ではあったが、最下層である第50階層まで攻略が完了している。


 ……だからと言って、この地下迷宮(ダンジョン)を知り尽くしているかというと、そうではない。


 どこかで取り逃したアイテムや、入った事のない隠し部屋なども当然のように存在しているはずだ。


 だから、一回目の攻略の時には遭遇していなかった出来事(イベント)に出くわす可能性も十分にあった。


 来斗は歩く。


「確か……こっちの方だったよな」


 来斗が歩いて行った先には扉があった。ただ、その扉はただの扉ではない。扉には文字が刻まれていた。その文字はただの文字ではない。ルーン魔術というものだ。

 ルーン魔術とは、言葉に魔力を込めるのではなく、文字に魔力を込める魔術の事。扉には魔術が込められていた。


 来斗はルーン魔術が施された扉に、手を触れた。


 バチバチバチ!


「い、いてぇ!」


 突如として、電撃が手に走った。手が黒焦げになりそうな程、凄まじい電撃であった。これは拒絶反応である。


 何人たりとも、この先に進む事は許さない……というような、拒絶反応。来斗がこの先に進もうとしている事は、禁忌なのだ。


「へっ……余計に気になってきたな。こんな封印施してまで隠したいものってどんなもんなのか……」


 来斗は気になっていた。興味がそそられたのだ。人は禁止されるとやりたくなる性質がある。電車の緊急停止ボタンを押してみたくなったりした事はあるだろう。

 これだけの封印処置を施してまで封印している物が何なのか、来斗は無性に興味が湧いてきたのだ。


 ーーとはいったものの、これだけの封印をどうやって解除すればいいのか、来斗は考えあぐねた。


 封印魔術などというもの、力業で簡単に突破できるとは到底思えない。


 待てよ……。


 そうだ、来斗はアクセサリを持っていた。そう、破邪の腕輪(リング)だ。そう、このアクセサリには解除魔法(ディスペル)の効果があるではないか……。


「試してみるか……」


 解除魔法(ディスペル)でルーン魔術が解除できるのか……来斗の知識にはない物事であった。だからこそ、試してみるより他にない。


 来斗は装備している装飾品(アクセサリ)。『破邪の腕輪(リング)』を掲げ、念じるようにして命ずる。


「解除魔法(ディスペル)」


 バチバチバチ! ルーン魔術の施された扉が解除魔法(ディスペル)に対して、抵抗するようにして、激しい電撃を発した。解除しようとする力と、それを防ごうとする力が衝突する。

 そして、力と力の衝突はしばらく続き、しばらくして、治まった。


 ルーン魔術の施された扉からはルーン文字が消え去っていた。どうやら、解除魔法(ディスペル)は成功したらしい。


「はぁ……何とかなったか」


 来斗はほっと、胸を撫で下ろす。来斗は扉に手を当てた。電撃はもう放たれない。ただの扉になっているようだ。


 来斗は扉を開けた。そしてその先に向かう。一週目の攻略では見つからなかった、隠し部屋に、来斗は足を踏み入れた。


 そして彼の運命は一週目の時とは大きく変わっていくのである。

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