魔晶石を手に入れる

「あった……この辺だ」


 来斗はモンスターと遭遇しないように、時には身を潜めて、地下26階層を慎重に移動した。


 そして、ついにたどり着いたのだ。そこは綺麗な場所だった。煌めく鉱石が無数に存在している。この鉱石はただの鉱石ではない。

 

 魔晶石という、特別な鉱石である。普通の鉱石とは異なり、魔晶石は魔力を秘めている。その為、特殊な装備や魔道具(アーティファクト)の原材料になりうるのだ。


 来斗はいくつかの魔晶石を採掘し、アイテムポーチに入れた。


「よし……これがあれば後は魔道具を生成するだけだ」


 生成するだけ……と言っても簡単な事ではなかった。この魔晶石の効果としては魔法攻撃を吸収し、その属性を秘める事ができる、というものだった。


 この魔晶石自体には攻撃する力はないのだ。この魔晶石を魔道具(アーティファクト)へと精製する為に、これから来斗は危険な作業をしなければならなかったのだ。



 通常、魔晶石は魔法師が魔法を込めなければならない。魔法師が魔法を込める事により、始めて魔晶石はその真価を発揮する事ができるのだ。


 だが、無名剣士【ノービス】である来斗には魔法を使う事ができない。少なくとも現在は来斗は魔法スキルを習得していないのだ。


 その為、来斗は別の方法でこの魔晶石に魔法を込めなければならなかった。その方法とはそれなり以上に危険を伴うものであった。


 だが、その危険を冒さなければ来斗は前に進めなかったのだ。


 ◇


 来斗はモンスターと遭遇しないように、さらに地下階層へと進んでいく。そしてついには目的地である第30階層に到達したのだ。

 第30階層。四竜の間。この第30階層には四匹のドラゴンが生息している。そのドラゴンとは、オーソドックスな四代属性のドラゴンである。四大属性とはすなわち、火、水、風(雷)、地、の四つの属性の事である。


 この第30階層にはこの四大属性を持ったドラゴンが生息しているのだ。


 非情に危険な階層であった。その難易度が相当なレベルのパーティーでなければ太刀打ちできない程に。

 

 ましてやLV1の無名剣士【ノービス】である来斗がこの階層に挑むという事は、それはもはや勇敢ではなく、無謀でしかない。


 しかし、来斗は意にも介さずに、その第30階層へと挑むのであった。


 大きな扉が開かれる。そこにあったのは障害物も何もない、円形のステージ。


「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」」」」


 突如、猛烈な叫び声が第30階層に響き渡った。


 そこにいたのは四大属性を持った、強力なドラゴン達であった。


 異世界二週目のプレイとはいえ、あまりの迫力に来斗の全身に震えあがるような緊張感が走った。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る