一人、ダンジョンに取り残される
「いてて……」
地下階層に崩落した来斗は尻餅をついた。ミスリルゴーレムにより作らされた亀裂から落下したのだ。
幸いな事に大事には至らなかった。だが、絶望的な状況下には変わりがない。今まで順調に来ていた分、クラスの連中は予想外の出来事に弱かった。パニックになった連中は我先にとダンジョンから逃げ出していった。
外れ天職を授かり、足手まといのお荷物として虐げれていた来斗の事など気にも留めていなかった。いや、むしろ厄介払い出来て、ちょうど良かった、というところであろう。
恐らくは救助など来ない。来斗は先ほどの崩落により、死亡したのだと判断されている事であろう。
だが、来斗にとってもクラスの連中と別れる事ができたのは好都合な事であった。
これで好き勝手、自由に動き回る事ができる。来斗には前回での知識があった。
来斗にとってはこの世界『ユグドラシル』は未知の世界ではない。既知の世界だ。何も知らない初心者プレイヤー達と一緒に行動するのはメリットよりもデメリットの方が大きかったのだ。
来斗は誓った。あの時の絶望的な運命を変えてみせると。破滅する未来を変えてみせると。
ともかく来斗はその為の行動に移す。まず、一歩歩み出す事にしたのだ。
幸いな事にこのダンジョンは前回プレイの時に体験済みであった。その為、どんなモンスターが出るのか、そしてどんなアイテムが落ちているのか。どんな罠があるのか、凡その事を来斗は把握していた。
今は地下迷宮(ダンジョン)の26階層だ。来斗が一人でモンスターを相手にするには些か難度の高い地下迷宮(ダンジョン)ではあった。だが、反面としてそのモンスターから得られる経験値(EXP)は来斗のレベルからすれば破格の経験値(EXP)である。
倒す事さえできれば、加速度的に来斗のレベルを上げる事ができるはずだ。
「……とりあえずは、何とかこのダンジョンから生還しないとな」
来斗はそう考えた。だが、その考えをすぐに改める。せっかく一人で行動できるのだからこの機会を利用しない手はなかった。出現するモンスターは強敵ではあるが、その分、経験値の効率自体は良い事は先ほど説明した通りだ。
その為、来斗は生還する為に、上の階に戻ろうという選択肢は取らずに、敢えて下の階層へ進む事を決断した。
だが、現在の来斗の戦力としては脆弱なものしかない。だが、ここで来斗の前回プレイでの知識が役に立つ、というわけだ。
「今は階層第26階層だ……だったら」
来斗は目当てのものを探して歩き始めた。LVが低い来斗はLVが低いなりにも闘う手段が必要だった。
力押しでは勝てない。その為に、まずは下準備をする必要があった。
――その準備とは。
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