ミスリルゴーレムとの再戦

「よっしょと……」


来斗は第25階層、つまりはミスリルゴーレムがいる階層へと戻ってきた。そこには既に、誰もいなかった。その階層には殺風景な光景が広がっていた。


 期待していなかったとはいえ、来斗は僅かばかりの寂しさを覚えていた。クラスメイトの面々は当然のように来斗を見捨て、撤退していったのだ。来斗の救出など考えてすらいない。来斗の事など、既に死んだとしか思っていない事であろう。


 ドスン! ドスン! ドスン!


 巨大な足音と共に、あのミスリルゴーレムが姿を現す。ミスリルゴーレムは以前説明したように『絶対魔法防御』のスキルを持っていた。その為、魔法攻撃を完全に無効化する。その為、このスキルを解除魔法(ディスペル)で解除しなければならない。


 解除しなくても倒す事はできるが、その方法は物理攻撃によるゴリ押ししかない。高いHPと防御力を誇るミスリルゴーレムに対して、物理攻撃に限定して殴り合うのは賢明ではない。当然のようにミスリルゴーレムも大人しく殴られてくれるわけではないのだ。反撃をしてくるに決まっていた。この作戦もまた、多くの人命にリスクを負わせなければならなかった。


 なんにせよ、その戦法は効率的ではない方法であった。


「……行くぞ」


 来斗は先ほど入手したばかりの破邪の腕輪(リング)を使用する。破邪の腕輪(リング)は眩い光を発し、ミスリルゴーレムを包み込んだ。


 恐らくはこれでミスリルゴーレムのスキルである『絶対魔法防御』のスキルは解除されたはずだ。


「ステータスオープン」


 来斗は念の為、ミスリルゴーレムのステータスを確認する。


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モンスター名ミスリルゴーレム レベル:50


攻撃力:100


HP:1000


防御力:500


素早さ:50


魔法力:50


魔法耐性:100


スキル:特になし


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ミスリルゴーレムのステータスから、『絶対魔法防御』のスキルが消失している事を来斗は確認した。


これでミスリルゴーレムに対して、魔法攻撃が効くようになった――というわけだ。


ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


『絶対魔法防御』のスキルを解除されたミスリルゴーレムは地響きがするような、巨大な咆哮を上げた。

 

ミスリルゴーレムの形態(モード)が変化したのだ。ミスリルゴーレムの装甲の色が青色から赤色に変化する。


これはミスリルゴーレムの属性を表していた。赤色の装甲はミスリルゴーレムの属性が火属性になった事を表す。その場合の弱点属性は火属性だ。


だから、水属性の魔法攻撃がミスリルゴーレムを倒す上では効率的というわけだ。


来斗は属性剣(エレメントソード)に水属性の魔法を付与(エンチャント)する。来斗の剣が水魔法を帯び、真っ青に染まった。


「はああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 来斗は声と共に、ミスリルゴーレムに斬りかかる。


グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 ミスリルゴーレムは悲鳴を上げた。来斗の攻撃が明確なダメージを与えていたのだ。その悲鳴は他のクラス召喚された面々の攻撃からは決して発せられる事のないものだった。連中が与える事ができなかったダメージを、今の来斗は明確に与える事ができていたのだ。


 いける……。来斗は確信した。


 ミスリルゴーレムは属性を変化させていく。だが、その度に来斗はその弱点属性で攻め立てた。


 そして、長い時間をかけて、終わりの時が訪れる。


 ドスーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!


 巨大な魔法金属(ミスリル)の巨人。ミスリルゴーレムが崩れ落ちたのだ。


「やった……倒した」


 長かった。長い時間の戦闘は来斗の精神を削り取っていた。だが、その甲斐あってミスリルゴーレムを倒したという、充足感は来斗の心を満たすのに十分なものであった。


 HPが0になったミスリルゴーレムは霧のようになり、消失していった。代わりとして、ミスリルゴーレムはあるレア素材をドロップした。


 煌びやかに輝く、魔法の金属。それこそが、来斗がミスリルゴーレムを打倒した証であった。


 来斗は『魔法金属(ミスリル)』を入手した。


 来斗は大量の経験値と『魔法金属(ミスリル)』を得た。


 引き続き、来斗の地下迷宮(ダンジョン)攻略は続いていく。しかし、ここで来斗は前回の経験にはない、予想だにしていない展開を迎えるのであった。


 

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