不死鳥(フェニックス)と闘う

(いよいよだな……)


 終わりの見えないこの地下迷宮(ダンジョン)攻略も来斗にとっては終わりの見えたものであった。だから通常の挑戦者などよりも余程、精神的な面からすれば楽ではあった……。


 第四十階層から先は強敵揃いだ。だが、ティアの協力もあって聖竜(ホーリードラゴン)を倒し、来斗は聖属性最強の剣である『聖剣エクスカリバー』を入手した。後にその『聖剣エクスカリバー』は『融合』スキルにより、属性剣(エレメントソード)と融合され、『聖剣エクスカリバー改』となったが……。


 それはともかくとして、来斗からすればある程度の準備ができた……。回復や補助の心配も生前聖女であったティアがいるからだ……。


 彼女は吸血鬼としての属性を持ちつつも生前覚えていた聖女としての魔法を使う事ができる。


 だが、待てよ……と、来斗は思った。これでいいのか? と。攻略は万全を以ってするべきだ。


 このままでも攻略は十分かもしれないが、万全ではない……かもしれない。勇敢と蛮勇は別だし、慎重と臆病もまた別だ。


 要するに重要なのはバランスなんだと来斗は理解している。石橋を叩かずに進むのも問題だし、叩いてばかりで進まないのも問題だ。


 来斗は聖竜(ホーリードラゴン)を倒した時と同じように、寄り道をしていく事にした。


 そこにいる怪物(モンスター)から、来斗はある貴重なレアアイテムを作る事ができる事を知っていた。


「こっちに行こう……ティア」


「まだ先には行かれないのですか?」


「ああ……俺に考えがあるんだ」


 来斗達は聖竜(ホーリードラゴン)の時と同じように、隠しフロアを目指す事にした。


 ◇


 そこは灼熱の溶岩地帯であった。


「暑いです……来斗さん」


 ティアはそう言ってきた。顔から汗を流している。吸血鬼でも暑いものは暑いというのか。マグマが滾るような溶岩地帯である為、無理もないのかもしれない。それだけ、高温という事だろう。


「ティアは氷結(コールド)の魔法も使えるだろ……それで冷やしてくれ」


「そ、そういえばそうでしたね」


 暑さを感じると思考能力が著しく落ちるのだろう。それは吸血鬼(ヴァンパイア)でも同じ事だ。


「氷結魔法(コールド)」


 ティアは氷結魔法(コールド)の威力を抑えて、自身を冷やす。


「はぁ~……生き返ります」


 ティアは落ち着きを取り戻していた。何となくおばさんくさいな……と、来斗は思った。淑女(レディ)に年齢を聞くのはマナー違反だから敢えて聞きはしないが……。彼女の実年齢は恐らくは相当言っているはずだ。


 よくいるロリババアとかいうキャラなのだろう。そんな事決して口が裂けても言えないが……。人に向かってババアなどと。


「ここだ……」


 長い時間を掛けて、火山を登りきる。そして、頂上に到達した。


「ここに何があるんですか?」


 ティアは聞いてきた。


「待っていればわかる……」


 キュエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!


 甲高い鳴き声が聞こえてきた。そして羽ばたく音が聞こえてくる。


 灼熱の炎を全身に纏った巨大な鳥。『不死鳥(フェニックス)』が姿を現す。


 クエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!


『不死鳥(フェニックス)』は来斗達の存在に気づくと、警戒を露わにした。甲高い叫び声で来斗達を威嚇してきたのだ。


「ステータスオープン」


 来斗は不死鳥(フェニックス)のステータスを確認する。


 ============================


モンスター名 不死鳥(フェニックス) レベル:70


攻撃力:1000


HP:2000


防御力:1000


素早さ:1000


魔法力:1000


魔法耐性:1000


スキル:自動回復(大)自動蘇生


技スキル 炎の息吹(フレイムブレス)


※ 弱点属性 水(氷)


============================


不死鳥(フェニックス)との対戦で厄介なのが、この自動蘇生というスキルがあった。


この自動蘇生というスキルは厄介だ。一度倒したとしても不死鳥(フェニックス)のHPを全快にして復活してしまう。流石に無限に倒しても死なないという鬼畜設定ではなかった気がするが……それでも二度三度、倒しても不死鳥(フェニックス)が蘇ってくるというだけでも、相当に厄介な敵であった。


 それだけで対決したパーティーは撤退を考えかねないだろう。


 ――だが、来斗には破邪の腕輪(リング)を持っていた。破邪の腕輪(リング)には『解除魔法(ディスペル)』の効果があるのだ。その効果により、来斗は『不死鳥(フェニックス)』の『自動蘇生』のスキルを解除する事ができるのだ。


 無論……解除したところで相当に強い難敵ではあるが、それでも解除しないよりはずっと楽に闘えるはずだ。


 来斗は装備している装飾品『破邪の腕輪(リング)』を高く掲げた。


「『解除魔法(ディスペル)』」


 輝く光が『不死鳥(フェニックス)』を纏い、弾けた。


「ステータスオープン」


 来斗は『不死鳥(フェニックス)』のステータスを開いた。

 ============================


モンスター名 不死鳥(フェニックス) レベル:70


攻撃力:1000


HP:2000


防御力:1000


素早さ:1000


魔法力:1000


魔法耐性:1000


スキル:自動回復(大)


技スキル 炎の息吹(フレイムブレス)


※ 弱点属性 水(氷)


============================


「よし!」


 来斗は不死鳥(フェニックス)のスキル『自動蘇生』が解除されている事を確認した。


「これできっと楽に闘えるはずだ! 行くぞ! ティア!」


「はい! 来斗さん!」


 こうして二人と不死鳥(フェニックス)との闘いが始まるのであった。









 

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