『融合』スキルで武器を融合する
「何をされるつもりなのですか? 来斗さん?」
ティアが興味津々と言った様子で覗き込んでくる。
来斗は『聖剣エクスカリバー』と『属性剣(エレメントソード)』を地面に並べた。
そしてスキルウィンドウを開き、SPを200支払い、あるスキルを習得する。鍛冶師系のスキルで『融合』スキルである。そのスキルを来斗は習得した。
これで残SPは300である。
「……習得したスキルで、この剣の属性効果を新しく手に入れた『聖剣エクスカリバー』に付与(エンチャント)するんだ」
「へぇー、すごいです。来斗さんはそんな事ができるんですか!」
ティアは驚いていた。
……そうか。とも思う。SPを支払う事でスキルを習得できるのは、女神により召喚された召喚者のみに許された、特権的行為である。
元々この世界に存在する人々や怪物(モンスター)。当然のようにティアもそうだ。彼等彼女等は元々、与えられた天分から逸脱するような真似は基本的にはできない。
それこそ聖女であったティアが吸血鬼化する事で吸血鬼としての力を得る事が可能になったが、それは例外的な話であるし。ティアとて自らの意思でスキルを選択して習得できるわけではない。
「ああ……俺は元々この世界にいた人間じゃなくて、女神により召喚された召喚者のうちの一人だからな……。召喚者には特別な権利(ちから)が授けられているんだよ……」
その特別な権利(ちから)の一つに『やり直し』が含まれているのか……。だが、前回召喚された時の記憶があるのは来斗だけだ。なぜか来斗だけに授けられた特権だった。なぜ、来斗にだけ授けられたのか……。
正確に言えば前回の記憶があるのは来斗だけではない。来斗達を召喚した女神にもあった。だから前回の記憶があるのは来斗と女神の二人だけ……という事になる。
あまりに不甲斐ない結末を迎えた来斗達に、女神は僅かばかりの慈悲を与えた、というところだろう。来斗が前回の記憶を備えたまま、やり直す事を許されたのは女神の気紛れかもしれない。無名剣士【ノービス】という代償(ハンデキャップ)を支払った末でのやり直し。
それくらいの代償(ハンデキャップ)を支払わなければ釣り合いが取れない程に、来斗の得たアドヴァンテージは大きかったのだ。
――ともかくとして。話を『融合』スキルの方に戻す。
「ふーん……それで、ライトさんは新たに習得した力(スキル)で何をなさるつもりなんですか?」
「新たに習得した力(スキル)は『融合』スキル……っていう、人間で言うところの鍛冶師とか、生産職が主に習得するスキルなんだ」
「『融合』!?」
「まあ……いいから見ていてくれ」
来斗はそう、ティアを諭す。ティアはその様子を固唾を飲んで見守った。
「『融合』スキル発動!」
来斗は先ほど習得したばかりの『融合』スキルを発動する。すると、地面に並べられている『属性剣(エレメントソード)』と『聖剣エクスカリバー』が光を放つ。そして融合し、一振りの剣となった。『聖剣エクスカリバー』はより一層力強い七色のような輝きを放つようになった。
「一体、これは……何がどうなったのでしょうか?」
「『聖剣エクスカリバー』と四つの基本属性を備えた『属性剣(エレメントソード)』をこの『融合』スキルで融合させたんだ……」
「融合!? それをすると一体、どうなるんですか?」
「ああ……『聖剣エクスカリバー』は本来的には聖属性の属性しか秘められていない剣だ。だが、『融合』スキルで融合する事で、『聖剣エクスカリバー』は『属性剣(エレメントソード)の四大属性を引き継いだんだ……つまりは『聖剣エクスカリバー』は聖属性の武器でありながら『属性剣(エレメントソード)』の特徴を引き継ぎ、四大属性の効果を付与しているんだ……」
「凄いです! そんな事が異世界から来た人達はできるのですか!」
ティアは目を輝かせ、関心していた。異世界から来た人々……ティア達。この世界『ユグドラシル』の住人からすれば来斗達は異邦人という事になる。
「……別に大した事じゃない。女神から授けられた力だ。俺が努力して身に着けたわけじゃないんだから」
来斗は『融合』スキルにより進化した『聖剣エクスカリバー』を装備する。進化したので『聖剣エクスカリバー改』と来斗は命名した。
「ステータスオープン」
来斗はステータスを開き、確認した。
============================
三雲来斗 16歳 男 レベル:50
天職:無名剣士【ノービス】
攻撃力:500
HP:600
防御力:350
素早さ:300
魔法力:300
魔法耐性:300
スキル:『錬成』 『料理』 『鍛冶』『融合』
『聖剣エクスカリバー』攻撃力+100※聖属性の力を秘める、聖属性最強の剣(ただし、来斗の知っている範疇であるが……)
→『聖剣エクスカリバー改』※聖属性の剣、エクスカリバーが火・水・風(雷)・地の四大基本属性が追加されている剣。ちなみに攻撃力は+100のまま変化はない
『ミスリルプレート』防御力+50 魔法耐性+50
※現SP残300SP
保有アイテム 青色ポーション×5
============================
「よし……これで問題ない。準備は万端だ」
攻略準備を整えた来斗達は、第40階層のフロアボスへ挑むのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます