殺戮機械人形との闘い

その機械人形は古代の人間によって、創り出された殺戮兵器だ。

 殺戮機械人形(キラーマシンドール)と言う。


 殺戮機械人形(キラーマシンドール)は右腕の刃物ーー普通の刃物ではない。ギュルギュルとけたたましい音を立てて、回転するその刃物はチェーンソーそのものだ。生身で受けたら、一瞬で身体がズタボロになってしまう事だろう。絶対に生身で受けるわけには行かなかった。

「ちっ!」


 キィン! 来斗は舌打ちをしつつ、属性剣(エレメントソード)で、殺戮機械人形(キラーマシンドール)のチェーンソーを受け止めた。甲高い音と衝撃が走る。


 来斗は胸を撫で下ろす。流石に、剣で受け止めれば何とか耐えうるという事がわかった。剣までズタボロにされたらどうしようかとも思った。


 だが、安堵の溜息を吐いているような余裕はなかった。この殺戮機械人形(キラーマシンドール)こそ、対話の通用するわけでもない危険な相手だ。そもそも言葉を発しない上に、感情がないから行動が読みづらい。


「ステータスオープン」


 来斗は殺戮機械人形(キラーマシンドール)のステータスを調べる。

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モンスター名 殺戮機械人形(キラーマシンドール) レベル:60


攻撃力:500


HP:500


防御力:500


素早さ:500


魔法力:500


魔法耐性:500


スキル:火耐性中 物理攻撃耐性中


技スキル。マシンガン。チェーンソー。


※雷属性と水属性が弱点


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 無駄も隙もない、まとまったステータスであった。辛うじて、雷属性と水属性が弱点という事くらいしか、活路は見いだせそうになかった。


(くそ……こんな事になるなら、隠し部屋なんて好奇心から入るんじゃなかった)


 来斗は後悔した。好奇心は猫をも殺すという。好奇心から足下を救われる人間は多い。だが、後悔したとしても、もう遅かったのだ。


 続いて、殺戮機械人形(キラーマシンドール)は左手のガトリンガンを連発する。


 嵐のような高速の弾丸が来斗に襲いかかる。


「くそっ!」


 嵐のような弾丸を目眩ましのように展開させ、殺戮機械人形(キラーマシンドール)は一気にその間合いを詰めてきた。来斗からすれば、突如殺戮機械人形(キラーマシンドール)が現れたようなものだ。


 対応が一瞬遅れた。そしてその一瞬の遅れが致命的であった。


 キィン! クリクルクル! ザシュッ!


 甲高い音が響く。来斗の剣が弾かれ、そして弧を描きながら、地面に突き刺さったのだ。


「くそっ!」


 来斗は再度吐き捨てる。絶体絶命の危機であった。


 同時に強く思う。こんなところで死ねるかと思った。やがて彼等、彼女達に訪れる絶望的な未来を回避する為に、二度目の異世界人生をやり直す事を決めたのに。そして、その願いは叶えられた。恐らくは自分達を召喚した女神の力によってであろう。

 

 だが、三度目のやり直し(リセット)が許されるかどうかはわからない。二度目があったのも神や女神の気まぐれかもしれない。来斗が願ったとして、三度目のやり直し(リセット)の願いが叶えられる保障はない。今回がダメでも次があるなんて期待はしない方がいいだろう。

 来斗にはもはや次などないのだ。二度目の死を受け入れるわけにはいかなかった。


 だから、こんなところで死ぬわけにもいかないのだ。


『私を解き放って!』


 念話(テレパシー)が聞こえてきた。目の前で封印されている彼女である。亡国の吸血鬼(姫)として、封印された彼女。彼女は確かに危険だ。封印措置がされる程に危険な人物である事は間違いがなかった。その上に、こんな殺戮機械人形(キラーマシンドール)なんて、物騒な機械兵器に警備をさせるなんて。それだけ彼女が危険な存在である事を暗示していた。


 だから、彼女の封印を解くなんて、誘いに乗るのは危険この上なかった。だが、彼女には間違いなく、それだけの力がある。だから、彼女ならこの殺戮機械人形(キラーマシンドール)を倒せる事は間違いがなかった。


 もはや選択肢などない。来斗は覚悟を決めた。


「こうなったら一かバチかだ!」


 来斗は捧げ、右腕を掲げた。そして、破邪の腕輪(リング)に命ずる。


「『解除魔法(ディスペル)』」


 解除魔法(ディスペル)が放たれた。そして、彼女の封印が解かれる。


 古代人が恐れ、封印された。亡国の吸血鬼(姫)が、この世に解き放たれた瞬間であった。

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