解放される秘められた力
パリィン。
来斗の放った解除魔法(ディスペル)の効果により、彼女(名称不明)の封印は解かれた。恐らくは何百年と言った長い時間かけられていた封印が、この時に解き放たれたのである。
封印から解き放たれた彼女は……その見事なまでの肢体を惜しげも無く晒していた。端的に言えば、彼女は全裸だったのだ。煌びやかな、長い金髪以外に何も身につけていない。一糸纏わぬ姿とはこの事である。
「おお~~……」
来斗は感嘆とした声を漏らした。別にこれは厭らしい意味合いで漏らしたのではない。彼女の全身から放たれる、その圧倒的な闘気に感銘を受けたからである。
あまりに美しい裸体は女体というよりはまるで彫刻品のようであり、あまり性的な厭らしさは感じ得ないかもしれない。
ーーともかくとして。剣を失い、まともな戦闘手段を失った来斗は名も知らぬ彼女に闘いの行く先を任せる事となる。
そして、そんな名も知らぬ彼女が相手をするのはあの殺戮機械人形(キラーマシンドール)だ。無機物的な殺戮兵器は、相手が婦女子であるかどうかなど関係がなかった。ただただ、目的を果たすだけの機械でしかない。
「危ないっ!」
キュイン! キュイン! キュイン! チェーンソーが回転し、甲高い音を発した。そして、殺戮機械人形(キラーマシンドール)は名も知らぬ彼女に襲いかかる。
しかし、名も知らぬ彼女はその攻撃を避けようともしなかった。まともに受け止めようとする。
来斗は凄惨な光景を予見し、強く目を閉じた。しかし、肉が斬り裂かれるような、グロテスクな音は聞こえてこなかった。金属と金属がぶつかり合うような、激しい衝撃音が聞こえてくるのみであった。
「なっ!?」
来斗は驚いた。……なぜそんな事ができるのか。名も知らぬ彼女はまともに殺戮機械人形(キラーマシンドール)のチェーンソーを受け止めていたのである。
来斗は彼女の手を凝視する。すると、ある事がわかった。素手で受け止めているのではない。その手にははっきりと魔力が帯びているのだ。魔力により強化された手刀である。彼女はその手でチェーンソーを受け止めたのだ。
接近戦で受け止め切れないと判断した殺戮機械人形(キラーマシンドール)は、バックステップして、距離を取った。
そして放たれるのはもう片方の手。ガトリングガンによる、弾丸の嵐である。
ガガガガガガガガガガガガガガガッ!
けたたましい発射音が鳴り響く。そして、嵐のような弾丸が名も知らぬ彼女を襲った。
しかし、ガトリングガンによる弾丸の嵐もまた、名も知らぬ彼女を傷つけるには到らなかった。
弾丸は彼女の身体に届くよりも前に、地面に力なく落ちていく。
名も知らぬ彼女は魔力による障壁(シールド)を展開したのだ。それにより、弾丸は地面に叩き落とされていった。
そして、次に行われるのは彼女の反撃である。殺戮機械人形(キラーマシンドール)の弱点属性は水と雷である事は先ほど説明した通りだ。
彼女は魔法を放つ。通常の魔法師では複数属性の魔法を習得する事自体はできても、同時に放つ事はできない。一部の高位天職に着いている、選ばれた才能(タレント)持ち以外には到達できない、魔法の高み。名も知らぬ彼女はその高みに既に到達していた。
「『サンダーストリーム』!」
放ったのは水と雷の同時属性である。凄まじい水流と雷の同時攻撃が、あの殺戮機械人形(キラーマシンドール)を襲った。
「!?!???!?!???!?」
殺戮機械人形(キラーマシンドール)は凄まじい濁流に飲み込まれ、そして、凄まじい稲妻に全身を貫かれた。
殺戮機械人形(キラーマシンドール)は異様な機械音を立てた。それが彼の断末魔であった。
プシュー! ……と、最終的には彼は煙を立てて、一歩たりとも動かなくなる。
「やったのか……」
来斗は胸を撫で下ろす。一難は去った。
だが、来斗はすぐに、また一難がやってくる事に気づいていた。
来斗はすぐに警戒心を取り戻す。敵の敵が味方とは限らない。彼女の真意や如何にーー。それによっては来斗の生き死にも関わってくるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます