『創造』スキルでティアの服を作る
「……ティアが俺に協力してくれるっていうのは嬉しいけど……」
「???」
危険な力があるとして、封印措置がされていた吸血鬼(姫)の少女であるティア。彼女は封印されている間、一糸纏わぬ姿だった。一糸纏わぬ姿ーーつまりは彼女は全裸だったのだ。彫刻品のように美しい身体を惜しげも無く晒している。
戦闘時は緊迫していた為、気にもならなかったが、戦闘が終わり落ち着くと気にもなってくる。
やはり、男にとって……特に来斗のような10代の少年にとって、若い女の裸というものは目に毒であった。
若いとはいっても、相手は吸血鬼という、特殊な種族である。100年どころか、1000年は生きているのかもしれない。実年齢としては、若いとはとても言えないかもしれないが。見た目からすれば若いのだから同じようなものであろう。
「……服を着てくれないか?」
来斗はティアに、そう頼む。来斗は頬を赤くし、顔を背けた。異世界二週目の彼ではあるが、残念な事にこういったイベントにはあまり遭遇していなかった。その為、彼は免疫がないのだ。
(普通……あれじゃないか。見られてる方が恥ずかしがるもんじゃないのか?)
来斗は苦悶する。なぜ、自分の方が恥ずかしがっているのか、と。吸血鬼の羞恥心は通常の人間とは異なるのかもしれない。比較してどうしようもないだろう。相手は普通の人間ではないのだ。
「ライトは私の裸を見て、こーふんするの?」
きょとん、とティアは聞いてくる。
「興奮しない……というのも男性としてどうかとも思うが……」
目の前に女性の裸があるのに興奮しないという事は。それはもう、若くして不能(インポ)になっている事を認めるようなものである。
「私とえっちしたいとか思うの?」
「……ううっ……それはだな」
ティアの問いに対して、しどろもどろで答える。クラスでも日陰者(すなわり陰キャと呼ばれるような人種)であった、来斗には高校生活で当然のようにそういった経験はない。すなわち来斗は童貞であった。高校生で童貞などという事は大した問題ではないと思う人もいるであろう。
だが、高校生活の中で、既に初体験に対する話題は出回ってくる。自慢げにクラスの陽キャが言ってくる事があるのだ。夏休みに部活の先輩と、とか……自宅に遊びに来た時に……だとか何だとか。特にこのくらいの年齢の時はそういった物事に強く関心があり、周りのクラスメイト達も熱心にその自慢話を聞き入っていた。
そして、自身に経験がない事で無意味に焦ったり、モテようと必死に努力したりする者も多かった。
来斗はその自慢話をただ遠巻きに、冷ややかに見ていただけだ。内心馬鹿にしていたが、来斗は来斗で自分がそういった経験と無縁である事に多少なり焦ってもいたし。劣等感も感じていた。
(それってつまり……俺がしたいっていったらできるって事なのか……)
目の前に脱童貞できる機会(チャンス)が転がっているのだ。千載一遇の機会。相手が人間でない事はさておき、こんな機会(チャンス)に恵まれるとは来斗は思ってもいなかったのである。
ごくり……来斗は唾を飲み込む。
考えた末に来斗は。
「ごほんっ……ともかくだな……そのままじゃ目に毒だ……。服を着て欲しい」
来斗は逃げた。彼はそういった物事に対して、酷くウブで、酷く臆病者(チキン)であった。 とにかく、話を逸らす事にした。
「服って……けど、どうすればいいの?」
無い物は着れない。ティアはそう、訴えたかったようだ。
「待っててくれ……」
来斗はスキルウィンドウを開く。そして来斗はSPを100支払い『創造』スキルを習得した。
『創造』スキルとは、素材もなく、アイテムを作り出せるスキルの事である。貴重な鉱物や装備などは作り出す事は出来ないが、それでも日用品や防御力の大してない装備品などを作り出す事ができる。
来斗が最初期に取得した『錬成』スキルの上位スキルだ。
「ステータスオープン」
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三雲来斗 16歳 男 レベル:35
天職:無名剣士【ノービス】
攻撃力:250
HP:350 ※50まで低下したHPが300回復
防御力:250
素早さ:200
魔法力:200
魔法耐性:250
スキル:錬成 料理 鍛冶 調合 創造
装備属性剣(エレメントソード)攻撃力+50
※四属性の属性効果が付与(エンチャント)されている。
『ミスリルプレート』防御力+50 魔法耐性+50
※現SP残150
保有アイテム 干し肉×3 青色ポーション×3個
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来斗はステータスウィンドウを開き、スキルの習得を確認する。
※以下ステータスコピペ。
「よし……習得できたな」
無事、来斗は『創造』スキルを習得した。来斗はスキルを発動するより前に、イメージする。どんなものを創造するのか。彼女にはどんな服が似合うのかを……隅から隅まで。ありありと思い浮かべた。そういった下準備を経て、来斗は『創造』スキルを発動したのである。
「『創造』スキル! 発動っ!」
来斗は習得したばかりの『創造』スキルを発動する。
ぽんっ! 煙が出現し、瞬く間にティアは衣類をその身に纏う。彼女が身につけたのは真っ赤なドレスだ。吸血鬼である彼女に相応しい、血のように赤い、深紅のドレスであった。
『創造』スキルで生み出せる装備や武器は基本的に、大した性能を持ち合わせていない。初期装備の旅人の服のような……ただの着衣に等しい装備しか生み出せない。
だが、彼女は元々、凄まじい力を有しているのは先ほど、殺戮機械人形(キラーマシンドール)との戦闘で見たとおりだ。
装備に頼らずとも、ただの着衣程度の装備だったとしても、問題なく闘えうるだろう。来斗はそう考えていた。
「ふぅ……何とかなったか」
ともかく、彼女に服を着せる事ができた。これで来斗の心の平静を保てるというわけだ……。来斗は安堵の溜息を吐いた。
「わーい! ……可愛い服っ! ライト! ありがとうっ!」
ティアは子供のように来斗に抱きついてくる。
「わっ! 抱きついてくるなっ!」
その柔らかい感触だけで、来斗の心臓の鼓動が思わず高鳴ってしまうのであった。
こうして、本格的に二人の冒険が始まるのであった。
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