錬成スキルを習得する

 来斗は考えた。効率的な戦闘とはどういうものか。異世界『ユグドラシル』の世界には属性という概念が存在する。よくある三すくみのような関係だ。じゃんけんのようなものである。パーがグーに勝って、チョキがグーに負ける、みたいな。誰でも知っている関係だ。


 火は水に弱い、みたいな関係である。この世界においてLV差を覆す上で最も効率的な方法とは弱点を突くという事だ。一見卑怯なようではあるが、現実的なアプローチでもあった。


 その為、来斗にとって、弱点を突く手段が必要であった。その手段をこれから作る。


 来斗達にはLV1の段階でSPが10振り分けられていた。SPとはスキルポイントの略称だ。

 スキルを取得する為に支払う必要のある交換手段、と考えて貰っていい。スキルを買えるお金のようなものだ。スキルは様々なものがある……が、基本的には多くのSPを支払う必要のあるスキル程、強力か、あるいは珍しいユニークなスキルである事が多い。


 だが、LV1の無名剣士【ノービス】である来斗はSPを10しか持ち合わせていない。これでは強力なスキルやユニークなスキルは習得する事ができなかった。

 

 習得できるスキルは限られている。上位のスキルは習得できない。習得できるのはごくごく基本的な、ありふれたスキルばかりだ。それでもいくつかの選択肢はあった。だが、既に来斗は習得するスキルを決めていた。


 地下25階層でミスリルゴーレムとの戦闘。クラスの面々と生き別れてからというもの、何となく、どういう行動をとるかは決めていたのである。だから、これからこの10のSPを支払い、どのスキルを習得するかは決まっていたのだ。


 来斗はスキルウィンドを開く。目の前にスキルウィンドが展開され、習得できるスキルは白文字で、習得不可のスキルは黒文字でわかりやすく表記されている。


「……っと。これだ」


 ソルはスキルを選択した。


『このスキルを習得しますか?』と、問われる。『YES/NO』。


当然のように来斗は『YES』をタップした。そして、SPが10支払われ、来斗はスキルを習得した。


特に何もなかった来斗のスキル欄に、一つのスキルが追加される。来斗はステータスとスキルを確認した。


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三雲来斗 16歳 男 レベル:1


天職:無名剣士【ノービス】


攻撃力:5


HP:5


防御力:5


素早さ:5


魔法力:5


魔法耐性:5


スキル:錬成


装備。銅の剣。攻撃力+10。旅人の服。防御力+10


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そのスキルとは錬成スキルだ。錬成スキルとは物体を加工し、何かを作り出せるスキルだ。錬金術師が最初から持ち合わせているスキル。どちらかというと、生産職的なスキルだ。


 来斗はまず、このスキルを習得した。それには理由があった。


 早速ではあるが、来斗はこの『錬成』スキルを使用する事になった。材料となるのは当然のように、先ほど苦労して入手した属性結晶(エレメントクリスタル)だ。

 

 来斗は属性結晶(エレメントクリスタル)を手に取り、習得したばかりの『錬成』スキルを使用する。




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