第21話 通過儀礼_10 第二衛星都市へ




トロッコを進めていくと前方からサーチライトを照射された。

破裂音と共にトロッコの正面に金属が衝突して跳弾する。

「まさか」


正面は光と闇しか見えず、直撃こそないが何発も相手の玉が跳弾した。

「殺す気はない、みたいだね」

「それは」

フィレトは少し焦っているようだが、デフォルトは何も言わなかった。

「戻る?」

「ええ」

フィレトが同意したので急ブレーキをかける。

時速凡そ3,40kmだったトロッコは急制動で停止した。

直ぐに白い装甲歩兵が迫ってくる。

「反転、と」

今来たレールを逆走し始めるトロッコ。

徒歩では追いつけない。


辺りが一瞬真っ白になる。


閃光弾らしいが背中に浴びてもそれほど効果は無い。

遠くなって行く敵陣。

「どうする?」

「その辺で停めて下さい」。


******* *******


「白いもの恐怖症に成りそうだな」

外は小雪がチラついていた。

最後にデフォルトがハッチを閉める。

「アジトには行けるのかな?」

「多分」

フィレトは拳大の機械を出して操作し始める。

「GPS?」

「ええ、位置情報を出してます」

周囲は只の荒野。

拳大以下の石がゴロゴロし、所々に高さ50~100cmの草が生えている。土の色は概ね灰色で、コヨーテとか、ハイエナとか、野生の狼とか、場合によっては蛇とかが居そうだった。

フィレトは機械の応答を待っていたが、

「どう」

「……」

無反応な機械に沈黙してしまった。

「目的地ってあれ?」

雲に覆われて太陽の位置も不明なので方角は判り辛いが、凡そ北の方向に遺跡と思わしき、都市の、残骸かも知れない、が蝋人形のような存在感で灰色に広がっていた。

「ええ。第二衛星都市です」

トロッコの方向と一致するかどうか、立体方向感覚次第ではあるのだが、恐らく線路の延長線上に第二衛星都市は有った。線路は元地下鉄だったのかもしれない。

「行かないの?」

「そうですね」

フィレトは足取り重く歩き出した。


******* *******


第二衛星都市までの距離は凡そ一時間ちょっとだった。

破れた城壁は既に境界の機能を失っているようで、崩れた部分は既に出入口として獣道のように整地されていた。

ランドマークの塔は中央にあるようだが、途中で折れていて、凡そ十階ほどの高さしかなかった。

フィレトは廃ビルの一つに黙って進んで行くと、押し入れのようなボックスを勝手に開けた。

「今日は此処で」

「アジトへは?」

フィレトは防災グッズらしき物を床に広げた。

「通信が繋がらないので、――危険です」。


デフォルトは座って乾パンを食べ始めた。

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