第37話 11 love or live
静かになった。
夕からの宴会は騒がしかった。
一晩続くかと思うほど。
此処は宿屋だが、殆どの酔客は帰って行った。
地元の人間の酒盛りだった。
現在の回転率は6割。
五割を超えていれば採算がとれるようになっている。
今日は、宴会の予定だった。
「「お客さん」が迷宮入りしました」
「御苦労」
伝令は状況を伝えると下って部屋を退出した。
あとほかに考えるのは、査定と取り分と、条約だった。
*******
今度の「お客さん」は用意がいい。
予め何もかも用意しているという意味ではなく、揃える物を知っているかのような揃え方だという意味で。ドアを焼き切って救出とは。
此処へ上がってくるドアは閉じてあったが、全部のドアを焼き切ってくるかもしれない。油断はできない。
鏡の中の自分を見る。
少し落とした最上階の照明。顔がよくみれないのでのぞき込む。
若干やつれた自分の顔。
演じるのはあまり得意ではないが演じきれれば多分。
鏡を離れ窓に向かう。
最上階にだけある展望用の窓。
静かな町の家々の灯りは既に消え、暗闇に包まれている。
歓楽街の方ももう静かだ。
この町に生まれた。偽装だとしても。この町で育ち、父の言う事に従ってきた。
父はワンマンだ。此の狩りも、父の考案したものだった。
父は従っていればいいという。
不幸な奴隷が何人増えても、この町と其の住民が護れればそれでいいと。
反対意見の人もいたが、今は殆ど平らげてしまった。
あの人たちも、「搾取者」の所へ引き取られて行くのだろう。
何時まで父の方針を許しておくべきか。
奴隷など、許されるものでもないものを。
*******
「やっと着いた」
幾種類かの未知の生物を排除して、扉を開けては上って来た。
ドアを突破するために、火炎放射器でドアを炙っていたのだが、受付嬢が折れて、途中からマスターキーでドアを開けて進んで来た。一階に降りようと思ったのだが、一階に降りるルートは発見できなかった。
目の前に階段が有り此れを昇ると二十階、すなわち最上階のはずだった。
騒がず慌てず、みな息をひそめて階段を上がる。音も立てない。
昇ると踊り場ぐらいの空間が空いていてやはり鉄の扉が仕切りに成って居た。
ドアの前に立ち鍵を入れる前に振り返る。後ろに2nd 、受付嬢、フィレト、デフォルトが居て最後尾を加藤が務めていた。
鍵を入れて、ノブを回す。
向こう側に押すと少し軋んだ音がして、あっさり開いた。
「お勤め御苦労さま、ナイト殿」
既視感の源泉を探した。
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