第5話 インビテーション_2_デマンド

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世界が、崩れだしている。

そう感じてもうだいぶになる。

百億に人口爆発したはずの地球人口。

現在は復60億に。

初めからそうだったのか。

何処かで。

減ったのか。

一昔前、ベクレルが国土を席巻した。

生物濃縮で食べれないかもしれない、飲めないかもしれない。

そんな食物を飲食しているはず。

病原菌が世界を覆った。

今も、渦中にいる。

(夢)の中の声が言う。

ERPの攻撃でXXは壊滅。

もう皆居ない、と。

ドーム状に閉じた空。

青い天蓋。

空に顔を見つけたのも一昔前。

雲は空想を形にして浮かぶ。

発狂した?世界の中で。

他国の侵略に怯えて暮らす。

文化、経済、砲艦を背景に日常が、侵食される。

条約が無効になるもうすぐ、終りが来る、と言われてもいる。

もう一昔前には想像もしなかった今。


深夜アニメに没入し、新刊のコミックを読み漁り、ラノベのヒロインを空想する。行列にめげず、暑さにめげず、聖地で宴を開き。臨海で成りきって記念撮影をする。

平和でグダグダで、愉快な日々。

若干の偏見を含むかもしれないが、そんな平和ボケ、アニソンでカラオケが楽しめた日々。


核ミサイルこそ降ってこなかったが、今は何故か、枯れた日々。


セットのようにリアリティの減じられた世界で、ぎこちなく演じ続けられる、生活。



動画サイトでお気に入りのミックスリストを聞きながら家路へ着く。

帰路に出会いは、特にない。

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「ただいま」

と言って、一人暮らしの自分に返ってくる声はない。

そういう毎日だが、今日は。


気配はある。

玄関の向こうの散らかったダイニング、その向こうに締め切った扉。どうやら扉の向こうの六畳間には、未だ居るらしい。

昨日の珍客。

王女言葉の女子。

扉をそっと開ける。

背を向けた女子が炬燵に入っている。

勝手に、漁ったのか、コートを着られていた。

ノートPCでディスク鑑賞をしている。

制服女子の腰から上が微妙に動いている例の動画が映っていた。

ヘッドホンをつまみ上げる。

「それは、未だ、ですね。」

「ああ、お帰り」

「動画鑑賞?」

「儀式、だ」

女子は若干自信なさげだった。


「どうぞ」

琥珀色にドリップされた珈琲をマグカップに注ぐ。


「領主の話だが」

「法の下の平等でね、居ないんだ、そういうの」

「総理大臣、はどうなのだ」

「確かに、トップではあるが、「領主」ではない」

「では、みな誰に従っているのか」

「自分と、法に。」

法治国家だからだが、昨今は脱法の方が普通と言う。

そして大概皆自分に従おうとしている。

女子は、真剣に悩んだようで、そのまま黙り込んでしまった。

「何の儀式だったの?」

「ああ。移動の儀式だ。」

「移動?」

「行き先探しだ。此処には期待できそうにないので」

意味不明だが、言いたいことはわかるような気がした。

一気に飲み干された珈琲を注ぎなおす。

「で、どんな所へ行きたいの」

八時間のうちに何枚ディスクを見たのか知らないが、旅行物は一枚もコレクトした覚えがない。音楽ものかフィクションばかりだった。

「何処かに強力な力の持ち主は居ないかな、と」

砕けた話のはずが、真面目な顔で俯かれてしまった。

「強力な、力、ねぇ」

アレがあったはずだから巨人辺りでは、どうかとも思うが、あくまでフィクションの話、だ。

動画サイトを開いて検索を掛けた。

陸買空自のデモ動画があったので表示してみる。

「如何?」

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