第6話 インビテーション_3_ネクストワールド
「で、どこへ行くの」
馬鹿にされたと感じたのか、何も答えない。
結局、陸海空自に興味は示したものの。
「大した戦力だが、これはお前のか?」
「戦力、は不味いんだが。俺のではない」
「総理大臣のか?」
「……国民、のだろうなぁ」
「誰に頼めば力になるのか」
街に一軒だけあったレンタル屋。
大規模とは言えないがそれなりに品ぞろえのある店だった。
SF、アニメのコーナーを見てまわる。
例の巨大ロボットものもあった。お勧めしたのだが、
「制御不能な力は、使えない」
と却下された。
既に三十分。少々疲れて来た。
「何か食べて、休止してからもう一回来ませんか?」
二本ほど手に取って比べていた女子は、
「ああ、そうしよう」
とDVDを棚に戻した。
******* *******
「甘いものがよいかと思ったんですが」
「麵も暫く食べていない」
下がってくる髪の毛を鍬上げながらラーメンを食べる女子。
何か髪飾りでも買ってあげようか、という気にはなる。
「良かったら、ショッピングセンターも行く?」
「店か。付き合ってもいい」
今朝から特に何も食べていなかったらしい。
かなりの勢いで女子は麺を頬張った。
******* *******
ショッピングセンターは平日午後であまり客はいないかった。
空前の株価で、好景気のはずだが、消費はあまり伸びていないのか。
エスカレーターで階を上がる。
「あ、ナイ!」
エスカレーターでクラスメート、隣のクラスの、とすれ違う。
下りのエスカレーターを降りてすぐ復昇りのエスカレーターを昇ってくる。
あがった処で待つ。
「ああ……えーと」
「2-二の梅田」
「梅田さん、こん、、、晩は」
黄昏も既に夜の領域。
「こちらは誰?」
不審げな梅田の指摘に若干不快そうに女子が答える。
「加藤、蛍、という」
******* *******
夕暮れのシネコン二階のフロア。
並んで椅子に座る。
右に加藤、左に梅田。
「加藤さんの必要なソフトって、結局どんなの?」
若干、極僅かに引き続き機嫌の悪そうな加藤。
「援軍を頼みたいのだが」
「何処へ?」
「閉鎖25世界」
「何処?」
「此処が地球なら、ミッドガルドのようなところ、若しくはヨツンヘイムのようなところ、だ。ただし、本拠では無い、、、ひとつ盗られた様だ。」
「ああ、創作の話。ネタ探し」
口をはさむ余地がない。
精神系,と言うラベルが貼られないのは幸いだった。
「ファンタジー系らしいよ――
「ヨツムンヘイムと四つものの発音的類似をどう思う」
全く知らない間に背後に立たれていた。
加藤は何時の間にか前方のフェンスに背もたれて此方を見ていた。
声に驚いた、梅田も加藤の横に立つ。
立ち上がろうとしたら、肩を抑えつけられた。
「立つな」
我関せずと周囲は既に遠まき。
「初歩、だな」
体を少し横へスライドさせて、立ち上がる。
威圧に失敗した後ろの男は手を放す。
「昼間のお礼に、と思ったんだが」
「ああ、停学に成ったっていう」
落ち着いてみると男は制服だった。
男は少し考えた後、
「――辞めとこう。退学も困る」
と、自嘲した後、
「女遊びにはきをつけな」
と、言って去って行った。
結局、レンタルは或るアニメ作品に決まった。
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