第34話 8  囚われの姫





静かに上へ上がっていく圧力。

エレヴェーターの駆動音。

「……」

「……」

「……」

「……」

20階迄のインジケーター。

薄紅いLEDが3.4.5、6……。

エレヴェーターは上昇していく。

「何で着いて来たの?」

「……畏まれよ。」

電子レンジが加熱を終えたような音が鳴る。

20階、最上階に着いたようだった。


*******


扉が開くとフロアにでた。

20*20平方メートルぐらいの展望台のようなフロア。

中央に黑の瘦身で小柄な女性が背中を向けていた。

ヒラヒラとしたレースに身を包んだ、恐らく魔女だろう。

西面の展望窓から何かを見ていた女子は此方を向くと。

開口一番。

「新しいナイトの方ですか」

と言って微笑んだ。

何処かで見たような。既視感を覚えた。


******


「fhがおあんふぇか」

造形の不安定な怪物が奇声を上げて燃え尽きていく。

2ndは手にした火炎放射器で怪物を焼き払う。、

「――判っていても、あまり気持ちのいいもんじゃないな」

怪物にこびり付いた燃料が怪物を焼き尽くしていく。

「リアルだが、趣味が悪い」

加藤も同感だったらしい。


******


中央に居る魔女に向かってどんどん歩いてみた。

魔女は薄く笑ったまま、動じもせずに、

「危ない――」

中央に着く前に何かに当たって頭を打つ。

「――ですよ」

強化ガラスか何かで仕切られていたらしい。

「えらい自信だな」

「直通で届くのもこのせいだろう」

頭に手を当てながら、

「西の魔女?」

「ええ。」

あっさり魔女に到達したが、接近はさせないつもりらしい。

「仲間の女子がふたり」

「御厄介になっていると思うのだが」

「十歳ぐらいの女子だ。デフォルトとフィレトと言う」

未だ、笑みを浮かべつつ魔女は言った。

「あなた方を此の塔をさまようナイトに任命します」

全体照明のに頭から照らされた魔女はそう言うと姿を消した。


******


焼け尽きて怪物は跡形も無く消え去った。

打ちっぱなしのコンクリートのような壁面をLEDの懐中電灯で照らす。

ライトを背けた怪物に虫が取り憑いて食い荒らすのではないか。

そんな危惧が浮かんできた。

しかし、壁面を見る限りでは虫等居そうもない。

「で、どう行けばいいんだ?」


*******


最上階。

魔女と対面して直ぐに退路を確認した。

エレベーターは使用不能だった。

天井からの全体照明が不意に消える。

「!!」

着いて来た受付嬢が短く悲鳴を上げそうになる。

2ndが懐中電灯を周囲を照らす。

向こうへ行く間にある在る強化ガラスをノックする。

割れそうも無い。

加藤も懐中電灯で周囲を照らす。

エレベーター付近を照らすと、ドアが有るのが判った。

「非常口かな?」

四人ともドアの付近に集まる。

ドアは施錠されていなかった。

内開きにドアが開いた。

非常灯が点いている。

「ああ――」

「他にないだろうな」

「満場一致で」


迷宮探索の始まりだった。

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