第33話 7 西の塔



塔の最上階、開口一番魔女はこう言った

「新しいナイトの方ですか」

何処かで見たような。既視感を覚えた。


*******


二十階建ての塔の十階ぐらい。

一度魔女と会見して、それから幽閉された。

ナイ達が此処迄来るのに後どれぐらいかかるか。


夜間の戦いに勝利して魔女の生贄から逃れることに成功したデフォルトとフィレト。宿屋に帰ると、二人の囮で同じく生贄を逃れた宿屋親子が歓待してくれた。酒宴に成って、二人も含め輸入された琥珀色の酒を水割りで飲んでいた。ナイが少し叱ったが、「未成年」「成人」の概念が無いか廃れたかで他には誰も文句を言わなかった。

宴が盛り上がって行く内に宴会の参加人員の一人が、この際「西の塔の魔女」を倒してしまおう、と言ってウィスキーを一気飲みした。盛り上がった全員が「西の塔の魔女」打倒を誓い乾杯をする。飲みつけないものを飲んで睡眠に入った二人の顔を見て、俺の娘も生贄に盗られて、と泣きだす人も居た。


赤い煉瓦が積み立てられた、魔女の西の塔。此方の自警団の軍勢を見て塔の出入り口から五十人程の魔女の軍勢が現れた。自警団百と魔女の軍勢五十が対峙。二人とナイと2ndと加藤は最後衛を務めていたが、突如反転して襲ってきた自警団と魔女の軍勢に取り囲まれそうになった。近接戦でかろうじて敵を交わす事が出来たが、二人は捕まってしまった。


夜を待った。自警団は帰路に着き、軍勢も塔の中へと去った。

夜の闇に紛れて塔に侵入する。

四角い入り口の鉄の扉は鍵も掛かって居なかった。

「誘っているとか」

「私もよばれているのかな?」

「適齢が有るんじゃないかな」

加藤は手鏡でも見たそうだったが誰も持ち合わせが無かった。

音を消すべく手を扉に添えて開く。

中は壁にあるカンテラでゆらゆらと照らされていた。


「門衛一人付けないとは」

「居るよ」

演台の向こうに、門衛と言うより受付な感じのショートヘアの女子が居た。

「モンスターに殺されるのと金払うの、どっちがいい?」

「金は……」


「あれ?」

2ndが壁の色違いを発見し近寄る。

「あああ、それは――」

三角マークのボタンを発見する。

加藤も近寄って、

「エレヴェーター

――上へのボタンを押す――

完動品だ」。

かなり古いが使えそうだった、が。


4人乗るとエレベーターが少し傾いた。

「前途多難だな」。

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