第24話 通過儀礼_13 ノウ
輸送車の後部座席に乗って見知らぬ街中を移動する。
雪景色の中、対雪原タイヤで第二衛星都市の中央へと向かう。
フィレトとデフォルトは疲れたのかナイの両脇で目を閉じていた。
着いたのは第二衛星都市の中央ランドマークだった。
第三衛星都市と同じうような街の構造なので其処が王宮だと言う事は直ぐに分かった。所謂謁見の間に進んで行った。
扉を開けると謁見の間、正面奥に王座が設置されていた。
指揮官は何の躊躇も無く王座に向かって行くと、あっさり王座に座り込んだ。
「ナーブとの戦闘、善く戦った」
指揮官が座ると同時に、部屋の左右から従者が現れ傍に控えた。
「宴席にしたいところだが、断念して状況報告とする」
実際疲れてはいたが、状況把握は必要だとろうと思った。
デフォルトが一歩前に出る。
「先ず私から、Final Reacterに連行されそうになった所を自力で脱出し、第三衛星都市に逃げ込みました。食料調達の際、奴隷商に捕まって売り飛ばされた所、この男性に購入されて、”デフォルト”と名づけられました」
デフォルトが下がると次にフィレトが一歩前に出る。
「フィレトです。デフォルトを救出に向かったのですが、途上ナーブに襲撃され、地下通路移動を断念、野営しました。再び襲撃されそうになり打って出た所を助けていただきました」
順番が回って来たらしい。
他の兵たちは部屋の入り口付近に整列していて報告には参加しないようだった。何処からどれ程話すか。
「初めまして。ナイと申します。デフォルトの引き取り主であると同時に――」
「その先は知っている。未だ「境界者」のナイ」
長い話に成りそうだったが、(王様)に遮られた。
「境界者」って言うのは、何だ?
「「助っ人」ならわかるのですが」
「ナイの言う「助っ人」は現在6人だ。私もその一人」
「雇い主」が(王様)だと思っていたのだが。違うらしい。
「王様が?」
「四人目。此処はもう寂れて、殆ど廃墟だ。其の維持を行っている。――」
途切れた(王様)の言葉。
窓の無いブロック造りの謁見の間に空調の換気音だけが響く。
何故、苦悩に束縛されているだろう。
積もった雪が滑り落ちる音がした。
「ナイ、最初は探検者でいい、役割を引き受けるよう。」
「ええ。考えてみます」
助っ人、境界者、探検者。この世における、自分の役割を定めなければならないらしい。終わったらIDカードをもう一度よく見てみよう。
「この後、一個中隊を以てFinal Reacterを攻略する。作戦はフィレトに伝えておく」
******* *******
未だ夜の闇の中、廃墟に四角い鉄筋コンクリートの「塚」が立っている。
Final Re-acterの主要施設は殆ど地下にあるそうだった。
雪は止んでいたが既に20㎝以上積雪していて、攻めるには不利な状況に思えた。
「どうしても?」
「第三衛星都市の組織が露見したので」
サーチライトに発見されないよう遺跡の手前、崩れたビルに身を隠し、双眼鏡で白い装甲歩兵、ナーブの「塚」を見ていた。
歩哨の立っている様子も無い。「塚」には窓があったがその他に出入口が有る様子は無かった。
「指揮官、来ないね」
「4thですか?1stと2ndが来るそうですよ」
かなり変な状況だった。
「指揮をとりに?」
「別動隊の」
「最初から組織の一員だったのかあの二人」
「それぞれ、1stが――」
サーチライトの光が一部に集中する。
同時に此方迄眩しくなるような閃光。
警報音が耳障りに響く。
「――始めたみたいですね」
此方の戦力は一個中隊。九人の小隊を五個隊集めて中隊としていた。45人。
要塞一つ落とすのに四十五人は少ない気もしないでもないが、一人が率いる人数としてはかなり多い人数に感じる。概念ではなく、指先一つ一つのように感じるには小隊が限度な気がする。
「敵さん出て来たみたいだな」
「加藤。」
「哨戒網は準備良いかな。無線通信の送受確認」
送受良し、とハンディから聞こえて来た。
中隊は五小隊に分散し、ナーブが出てくるのを張っていた。
「第三小隊、ナーブ確認」
「監視継続」
「第三小隊に各隊合流。退路確保」
突撃して行った別動隊は2ndが指揮しているのか。
明け方、盛大に破裂音が連鎖していた。
始まって5分で地下ゲートの一つを落とすのに成功した。
互いに打ち合っているのは概ね化学弾頭だった。
着弾すると拡散速乾して動きを封じるようになっている。
地下鉄網だったらしいトンネルの更に脇道にナーブのゲートがあった。相手の部隊構成は判らないが、最初のゲートは既に行動不能になったナーブが折り重なって倒れ、味方の二個小隊がは倒れたナーブを避けながら次のゲートを突破しにかかった。
「増援は?」
「二個中隊集結中追加有り。今日中に落とす予定みたい」
予めデフォルトの情報があったにせよFinal Re-acterのブロックに到着するのにどれくらいの戦力が必要が不明だった。
二人一組で、角から角までの6mから10mをZOCとするならば100m程度が入り口から届く最深度と言える。未だブロックに届いていないと言うのは誤算と言えば誤算だった。
50mほど進んだところで戦線が膠着した。
侵入に気付いたナーブが戦力を此処に集中しだした。
白い装甲歩兵が分厚い装甲の壁を作り出す。
「ケミカル弾頭で正解だったな」
大型の化学弾頭を装備して打つ。
着弾しすると数人のナーブが行動不能になった。
「何かの盾だろうか」
何列かのナーブの背後に、扉が見えた。
二つ目のゲート相当だろうか。
無線通信機にノイズが入り、「敵」の音声が割り込んでくる。
何処か金属的な男の声だった。
「正々堂々勝負しよう。君たちに勝ち目などない」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます