第23話 通過儀礼_12 四人目。






白い装甲歩兵の装甲は見た目より硬かった。

その辺の瓦礫を弾にして投石する。

倒せないまでも幾らかの抑止力程度にはなった。


「Fainal Reacter?」

「そう呼ばれています」

フィレトは機械を操作して別の情報を表示させた。

人類?のエネルギ―機関発展史とその各々の構造が表示されている。

単純な燃焼から蒸気機関、ガソリンエンジン、電気モーター、そして原子力。反物質炉も表示されていたが、ファイナルは。

「人を燃料にするのがfinal?」

構造図の代わりに概念図が表示されている。

炉の中に居る人の「頑張り」を引き出して動力に変えているらしかった。単純な話、炉に人を入れて抑圧しその抑圧を跳ね返す力でリアクトさせるという原理らしかった。概念はともかく構造の詳細は全く不明だった。

「命を、エネルギー機関にする事を、考え着いた、らしいです」


外は吹雪に成って居るらしい。

気温がどんどん下がり、火を離れると氷点下を体感するようだった。

「外、見てきます」

フィレトは立体ウィンドウを閉じて立ち上がった。


一分もしないで戻ってきて、

「囲まれてます」

と、言って座り込んだ。


「ああ、確かに」

相手の装備が何か不明だが赤外線センサーはないらしい。

室内で焚火をしていたので発見されなかったのだろう。

白い装甲歩兵が此処から距離10mほどの距離に一ダースほど集結していた。全員サブマシンガンのような兵器で武装している。かなり危うい状況だった。


「上へ逃げますか」

火はすぐに消した。音は吹雪で消音されている。

二、三階上に行ってやり過ごせば助かりそうだった。

しかし、失敗したらもう逃げ場がない。

打って出るか、やり過ごすか。

「逃げましょう」

黙っていたデフォルトが立ち上がる。

「連中は偏執的に追ってきます。隠れては居られません。打って出て、逃げ切るべきです」

そう言って瓦礫を拾いだした。

「若しかすると、投石?」

「他に武器になるものが、無いです」

「戦力比4対1。かなり分が悪い、援軍は」

「通信が、未だ」

デフォルトが何処から取り出したのか布に石をのせて振り回す。

「何処へ逃げる」

当面の追手を抑止しても行く先がないのでは。

フィレトもデフォルトも沈黙してしまった。

「味方陣地は知ってる?」

最悪、敵を引っ張ったまま味方陣地まで逃げ切らなければならない。

押し黙った二人を見てふと思った。

「こういう時、祈ったりする?」

「いいえ、我々は」

「そう――」

手短にボソボソト祈って、

「それでは、逃亡開始」

拾えるだけ瓦礫を拾って外へ出た。


投石は三交代で行った。

最後尾が投石している間に二人が逃げ、中間が投石している間に最後尾が逃げ、最後に最前が投石している間に、中間が逃げる。敵の兵器にやられないように廃ビルに隠れながら。

未だ百メートルと進んでいないが其れなりに戦闘らしく戦えた。

相変わらず吹雪で物凄く寒かったが運動量のおかげで助かっていた。しかし、激しく熱量を消費していると言う事は、食物を補給しなければ、と言う事で、何処かで食事を摂らなければ、寒さにやられてしまうだろう。

十二人の敵も廃ビルに隠れつつ、次第に包囲しようとしている。

援軍が来たら終りだなぁ、と思っていたら。

戦闘車両に乗った白い装甲歩兵がもう一ダース現れた。

大きな声で

「フィレト、デフォルト、退避、立て籠もれ」

時間さえ稼げば。


唐突に白い装甲歩兵が一斉に後ろを向く。

車両が接近してきている。

物凄い光量の閃光と、物凄い炸裂音。

白い装甲歩兵が地面に崩れ落ちる。


白い装甲歩兵が立ち上がって後方からの敵を迎撃しようとしたら再び閃光と暴音。


先頭のフィレトが大声で、

「援軍です!」

と飛び上がるようにして喜んだ。


マグネシュウム閃光弾の投入で戦闘はあっさり集結した。

横転した戦闘車両を立て直して白い装甲歩兵達が撤収していく。

援軍は三台の戦闘車両と三十人ぐらいの私服の兵、フィレトの地下組織だった。


戦闘車両の一台から男が降りて近づいて来た。

「自己紹介は後で。車に乗ってくれ」

何処か2ndと似た、しかし全く別の、若い男だった。


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