第50話 24 蛍火



梅田の彼氏疑いの男は、慌てて帰っていった。

こう言う有事のシュチュエーションにはあまり慣れていなかったのかも知れない。

去っていく男の自転車を見遣っていたら白いワゴン車が止まった。

目の前の横断歩道に止まったワゴンの窓が開き、中から2ndが首を出した。

「お迎え、だそうだ」


質問のふりして2ndを歩道に引っ張り出し、逃げた。

シネコンにかけこんで、例の白い装甲服を引き離し、頼み込んで裏口から脱出。警察に通報させつつ、非常階段を降りる。内側からかかった鍵を外して再び歩道に戻った。

出たところで待ち伏せに捕まった。



連れてこられたのは、おそらく復、地下司令部だった。


およそ100㎡程のフロア。

ただのフロアで五人の椅子以外、他に何もない。

入口は白い装甲服におさえられていた。

冒険的展開には慣れたのかあまり緊張しなかった。

しかし、フィレトと加藤は無口になった。

若干緊張しているのかもしれない。

「どうしたものかな」

「何の御用だろう」

「今日の夕食は食べれるのでしょうか」

「……」

「……」

「緊張してる?」

「大体知っているのでね」

フィレトは加藤の言葉に頷いた。

加藤はやや不機嫌そう。

「リーサルリアクター絡みかな」

「多分間違いなく」

「……」

「……」

復二人とも沈黙した。

「――関係者だった?」

「灯火だった。」

「私も。」

「フィレトのフィレは火、トは2。」

「加藤の加は火、藤は灯り」

「火?」

「人類の他の生物に比して特筆すべき点の一つ。文明の特徴」

「ああ知っている。ゾロアスター教だったりするの」

「火の偏重?彼らはそう。わたし達は」

「薪のようなもの。燃料に過ぎない」

「蛍。

――ナイは多分知っているだろう?」

「ああ、蛍火か。」

「蛍火で何処まで出来るか、やっているらしい」

入り口の白い装甲服が入室してくる。

続いて秘密組織の痩せた男が入ってきた。



「じゃ、付いて来てもらおう」

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