第19話 通過儀礼_8
――物凄く身軽に、デフォルトはフェンスを越えて。
飛び降りた――
――え?飛び降りた?
フェンスの越しに下を見る。
――見えない。
白い装甲歩兵達は近づきもせず、ナイを包囲している。
一瞥して、フェンスに上り、振り向いて。
もう一度下を見て、ひるまず飛び降りた。
_8 unknown
放物線の要領で勢いよく飛び出すと間違いなく地上に落下する。
従ってむしろ垂直に落下する感じで降りてみた。
階下へロープが設置してあって、すぐロープを掴んだ。
前後に揺らして、ベランダに飛び込む。
何とか無事着地。
多分デフォルトが使ったのと同じ手順を辿って階下に着いたはず。
ベランダの窓は鍵が開いている。洗濯物が干して在って、一瞥ではわからないように偽装されていた。
窓の鍵はそもそも掛けないものと目されるが、デフォルトが逃げるに当たり慌てていたのかもしれない。
無事は多分無事だろうから慌てず部屋に入る。
無人かと思ったら、意外にも人が住んでいた。
「あ、すみません」
年齢不詳な女性がリビングと思しき部屋でノートPCに打鍵していた。
「御名前と個人コードをどうぞ」
ナイに気付いて女性は笑顔で尋ねて来た。
戸惑っていると、
「IDカードはお持ちですか」
と尋ねられた。
「ああ、ID」
さっきのIDを女性に見せる。
女性はIDをしばらく見つめると、
「ナイ、さん?」
「ナイです」
と名前を照会した。
きっと同じように照会しただろうと考え、尋ねてみる。
「デフォルトって女の子は何処へ?」
「デフォルト――」
女性は考え込んだ後
「個人情報はもらせません」
と復笑顔でデフォルトの情報開示を断った。
「そうですか」
お邪魔様でした、と玄関の方へと歩いて行くと、
「伝言があります」
「?」
「有難う」
******* *******
階段を地上まで降りると白い装甲歩兵達と第三衛星都市の正規軍?が衝突していた。ビルの出入り口で衝突していたので触れずに逃げる事が出来ない。
正規軍に近づいてIDを見せる。現地語、第三衛星都市の言葉か、それとも統合司令部の言葉か、いずれにせよ不明な発音の言葉で、多分、難詰され、返事がないとみてIDをスキャンして、返してきた。
「後は願いします、では」
にらみ合いの続く白い装甲歩兵と正規軍――灰色の迷彩布の兵士、を後にして、当てが無いので宿屋に戻ることにした。
******* *******
宿屋に戻っても出迎えは無かった。
既に日は傾いている。
宿屋の中は暖かく湿っていた
一端部屋に戻ろうと階段を上ると加藤とすれ違った。
「お帰り」
「デフォルト、例の女の子何だけど……」
襟首を引っ張られたのでターンして加藤の後を追った。
例に依って食堂で話し込んでいる2ndと。
加藤とナイが行くと話し声が一瞬途切れる。
「……無事、らしいね」
デフォルトは黙って頭を下げた。
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