第12話 通過儀礼_2 ログアウト

「異敵」は「遺跡」に出現した。

裁可が下りてlost place ruin(遺跡)は熱処理された。

カタは、つかなかった。


時計回り、第三衛星都市の南、第四衛星都市に「異敵」は侵攻。

衛星都市に至る二か所の宿場町に避難命令がおりた。

統合司令部は熱処理が失敗した時点で指揮権を衛星都市に移譲。

戦車大隊等の通常兵器軍を撤収。

戒厳令と共に避難誘導支援が行われ市民は更に後方の都市へと避難した。残ったのは。


第三衛星都市南門前。

先の見通せない道路。

都市の明かりが減衰して闇へ溶けていく。

冬の夜風が手を切るように冷たい。

「熱処理で壊滅しない敵って」

「効いたのは効いたのだが、全滅しなかった」

加藤は車の後部ドアを開けて荷物をチェックしている。

「再生に焼却が追いついていない」

2ndは加藤から受け取ったアイテムを装備点検している。

「――で、何をする?」

熱処理の効かない敵相手に、そのRPG 風の装備でどうするつもりだ、と畳みそうになって止めた。

「取り敢えず何に成る?」

「それは所謂RPGの?」

「一般的に、勇者、戦士、魔法使い、商人等だが、初心者か?」

昔はよくやったが。

「あまりしてないな、最近」

「では、勇者候補と言う事にしよう。装甲車に載せて来た装備品を装備してくれ、説明は――」

「私がしよう、私のロールは商人だ」

「……分かった、宜しく」

此処の世界設定が今一つ理解しがたいが、結局付き合ってみるしか無いのだろう、と諦めた。


南の空が明るくなる。


「熱処理?」

「Fire Wallだろう」

装備した勇者の武器防具は例によって中世欧風だった。

「此れで――」

剣が意外に重い。とても振り回せない。

「敵を切れ、と」

「まあ、あまり出番は無いだろう。」

「呪術効果がある。切った相手の生命力を吸う」

「敵の術者でもいない限り勇者は傍観だ」

南の空は明るく焼かれ続けていた。第四衛星都市ではなく、中間の宿場町辺りで炎の壁を作っているのだろう。

「ああ言う敵へのメインは魔法使いだ」

「魔法使いって……」

「賢者でも魔法使いでも。今、炎の壁を作っているのはどちらかだ。」

「統合司令部から入電だ。凍結させるらしい」

上空を、恐らくジェットの、爆撃機が四機編成で飛んで行く。


遺跡に液化窒素弾が複数発投下され、「異敵」を凍結させることに成功。戒厳令は解除され、戦闘態勢も警戒態勢に移行した。




サンプルを採取しに行くことになった。


熱処理された、建物の残骸を手で触れる。

「熱処理ね」

遺跡の建築物に積もった塵が「異敵」のサンプルと言う事らしい。

異敵を手に採る。

「こいつらって、何処から出現するの?」

「遺跡の何処かから、それ以上は未解明だ」


手に採ったサンプルを地に返した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る