第13話 通過儀礼_3 ウェイスト スプリング

「え?」

一瞬視界が真っ暗になる。

「停電だな」

「暫くかかるかもな」

2ndは用意していたかのようにライターを付けて立ち上がる。

部屋の隅にあったカンテラの灯を点す。

食堂には三人しかいなかった。

「よくあるのか」

「まぁ、時々」

何事も無かったかのように食事を続ける加藤。

「予備の電力はない、此処ではカンテラが予備だ」

2ndも席に着きなおす。

「此処の電力は何発電?」

「蒸気」

「ああ、火力。海は近いのか」

「水源は「泉」だ」

2ndは豚らしき肉の最後の一切れを口に入れる。

「早く寝た方がいい。明日は統合司令部分室の呼び出しだ」

加藤が席を立つ。

2ndも立ち上がる。

「ナイ」

「?」

「此処は戦地だ」


*******


宿屋から分室までは徒歩で移動だった。

停電は結局一晩中続いたそうだ。

明けて、今日はよく晴れて日光が暖かかった。

表通りは片側一車線の幹線道路風だったが、轍の有る未舗装の道だった。沿道は二三階建ての煉瓦造りの建物がほとんどで鉄筋コンクリートの建物は見かけなかった。

「此処、病気蔓延するわけ?」

「煉瓦、か。推測どうりだ」

「何代か前の王が決めたらしい」

見渡してみたが野火らしき煙は上っていなかった。


「うわ」

野火を探して居たら衝突してしまった。

ぶつかった相手の方が地面に倒れていた。

「あ、ごめん」

手を差し伸べると、倒れていた「少女」が睨み返してきた。

「少女」はぶつかって散らばった、恐らく食料、を拾い集め、走り去ってしまった。

「窃盗だろう」

「此処では多い」

加藤も2ndも何事も無かったように歩き出した。

仕方なく二人の後について行くと背後から雷の音がした。

「スタンだ。珍しくない」

「……物資、足りないのか」

「「スキゾ」には容赦がない」

「……」


*******


分室に行くと、B5五枚ぐらいの書類を渡された。

契約書とその資料四枚だった。

「何ですか?」

「此処の傭兵契約書、だ」

「王様の訓示だけではないんだ」

「あれは認証式で、これはその契約書だ」

「我々も契約している。此処で生きていくのには必要だ」

契約書はナイにも判る明朝体のような字で記されていた。

「どうしても必要?」

「必要だ。嫌なら帰るしかない」

「別に、勧めないよ」

「自由契約ですので、御検討ください」

係官は笑顔で書類を封筒に入れた。


*******


その夜には停電は解消され、第三衛星都市に電灯が輝いた。

「――ついたな」

「暫くは安泰、か」

電灯が灯るのを見て加藤と2nd。

都市規模の城塞都市。居るのは軍属関係ばかり。面積からざっと二、三十万人は居ても不思議はないが、沿道沿いの盛り場に人出はまばらだった。

二人の後をついて歩きながら、つい呟いてしまう。

「……秘密、か」


警戒機が上空を通過したようだった。

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