第10話 「 隣接閉鎖25世界戦地」

王様とのミーティングを終え、西の城壁付近の宿屋に泊まることになった。昼食を食べた後、食堂のテーブルを一つ陣取り、加藤と2ndにこの世界について講義してもらうことになった。

「講師に任ぜられた加藤蛍。此処では1stの任に当たっている。此れから戦地に関する簡略な講義を行う。

そもそも戦地と言うのは――」

加藤の硬い講義の言葉が淀みなく、右から左へと抜けていく。

宙を漂う加藤の言葉。

(本土への「異敵」の侵攻を防ぐために設営された方便の世界をいう。方便の世界と言うのは人工の世界、と解釈してくれていい。人工の世界が作れると言う科学レベルが信じ難いと言う事もあるかと思うが、方便の世界造営については別途後の解説に譲ることとする。復本土とは何処か、)

肘をついて聞いていたら顎が滑り落ちた。

眠りかけた意識が戻ってくる。

「――という問いも現段階では解説しないことにする。この戦地の正式名称は隣接閉鎖25世界戦地と言う。閉鎖二十五世界と言うのは、或る理由により半径五十光年で時空が封鎖された人為的な制限世界の事を言う。用語が多数だが、いいかな?」

退屈そうなのを見て取ったのだろう。

順を追って説明されても仕方ない気がしたので要点を質問してみる。

「最初の荒れ地は何?」

「ああ、Lost Place Ruinの事か。最初に敵が現れて熱処理された元都市だ」

都市の遺跡があるようには見えなかったが。

「攻撃してきたのが、敵?」

「ではない。あれは現地統合司令部の自動迎撃システムによる迎撃反応だ」

「焼かれるところだった、と」

「ロストプレイスに出現する何かを分別する能力がない」

「時々味方も焼くと」

「上空でMBHが自動迎撃する、変かな」

「この町の文明程度から考えて今一つ」

「詳しくは統合司令部に問い合わせてみないと、判らない」

「……」

「……」

「まぁ、いいよ。で、「異敵」って?」

「異敵=Alian、の正体は現在の所、不明。「異」で「敵」だから「異敵」と呼称されている。」

「何が「異」なの?」

「凡そすべてが「異」だ。」

「比較生物学とか泣きな感じだな」

「生物学的知見は少ない。倒した「異」の一部を実験室へ持ち帰った処、町が一つ」

「全滅?」

「いや。フルオートのリモートだったので皆無事だったが」

「何があったの」

「街を一つZOC化された」

SF映画の路線か。

そう言えば此れはVRだった。かれこれ何時間エントリーしている?ログアウトしたら復あの美容室なのだろう。

何かが、引っかかる。

「倒せるの?その前に「異敵」の形態は?」

「「異」だと言ったろ。特定の形態を持たない、が通説だ」

そんなものどうやって倒すというのだろうか?

「心配するな。タンパク質が確認されている。熱処理で大概どうにかなる」

「で、核攻撃と」

「不本意だがそういう事になる」

加藤が疲れたように一息つく。

「1st、いや、指揮官殿」

「何?セカンド」

「VRでVTRを見せた方が早いのでは?」

「ああ、そうだな」

「VRあるわけ?この町に」

全体の文明レベルはともかく、此処には無さそうなのだが。

「ある。準備を兼ねて休憩にしよう」


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