第43話 17  期待

「名前は」、「国籍、生年月日は」

尋問はいつも個人情報から始まる。

何度も何度も同じ質問をされて、同じことを答える。

間違う時と、その理由、反応までの時間を調べられているようだった。

其の後は社会との関係情報を尋問される。やはり何度となく。

家族関係、父親の名、母親の名、最初の学校の名前、此処迄の最終学歴、

疲れて来て黙り込んだら、

「此処までにしよう」

と、尋問が終了した。

何だかレプリに成った気分だった。



此処が何処なのか未だ確信が持てない。

計算通りなら元の世界、出発前の世界に戻っているはずだった。

最初に収容された原子力空母で全員バラバラにされて尋問された。

個室という名の独房状況で、皆、食事の時、監視付きで一堂に会するだけだった。


食事の為に六人掛けのテーブルに着く。

加藤、2nd、デフォルト、フィレト。

全員そろっている。

監視の兵が四人テーブルを囲んでいた。

テーブルには一人一食分の定食が配膳されていた。

皆、疲れた様子だった。

誰も、口を付けないので、一番に口を付け、

「――食べた方がいいよ」

と食事を促した。

気分悪そうな皆の内2ndが料理に手を付ける。

加藤とデフォルト、フィレトも習って食べ始めた。

三口程食べたところで、

「きつい入国審査だな」

と感想を述べた。

「突然宇宙から帰還したらこんなものだろう」

2ndは、気にしたようでも無く料理を口に運んだ。

「帰国の話は出たか?」

「こっちは未だ――」

兵士が威圧している気がした。

「後十五分でお願いします」

兵士の一人が時間を区切ってくる。

十五分と言っても時計がない状態で計りようがない。

「復、知らせるよ」

全員黙々と食事を始めた。



個室のドアを開け中に入る。

監視の兵士も中へ入ってくる。


賢者が知っていたのは、あの異世界での暮らし方、と帰還経路だった。

岐路に立たされて、帰還を選んだら、全員付いて来た。

宙へ行く船と、宙行く船にのって、此の世界に戻り、大気圏に突入した。

着水した着陸船からボートで空母へ。

空母に乗るなりボディーチェックの為、衣類を着替え、支給された服を着る事に成った。随分な扱いだが、この警戒体制から考えると、防疫の為に隔離されても不思議はなかった気もする。

そして現在に至る。


監視員が居るのも気にせずに、ベットに横に成る。

監視員はいつもの事として気にせず入り口付近に椅子で座っていた。


帰還、出来たのだろうか。

きっと宇宙空間から帰還した経緯が明らかにならない限り尋問は続くだろう。

他に帰還方法がなかったとはいえ、派手な帰り方をしたものだった。

「ナイ」

無線で指令を聞いていたと思しき監視員が眠りかけていたナイを呼び止める。

「お国の入国管理局から帰国許可が出たそうだ」

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