第40話 14 return to 1st step.



撃鉄を起こし立ち止まって引き金を引く。

大きな破裂音がして広場に残響する

――奴隷商は、平然と立っていた。

二発目を放とうと撃鉄を起こす。

再度ポイント。

「威嚇用。空砲なんだ」

そう言って奴隷商はリボルバーを持つ人形の手を持った。

事故は始まって五分もしない内に収集された。



「人間、ではないと」

一同を代表して尋ねてみた。

「ええ」

どうみても奴隷売買の現場にしか見えないが、奴隷商は明かさなかった。

更に、

「人形です。機械仕掛けですよ」

と奴隷商は言いながら人形を拘束した。


*******


この町の宿屋に帰るなり、食堂で休息になった。


「奴隷は二人もいるのだから」

加藤の機嫌はあまり良くなかった。

もういい加減かまうな、と言う事だろうか。

しかし、こう答えた。

「制度自体が馴染めなくてね」

昼間から軽く入れてるような2ndも絡んでくる。

「ナイの所は奴隷、禁止だった?」

「法で禁じていたよ」

「じゃぁ、司法に任せておけよ」

「何が言いたい?」

珍しく攻撃口調の2ndに少しムキに成った。

2ndは諦めたように、諭すように、語気を和らげる。

「目標を達成しよう」

三人、或いは五人の統一目標。

或いは、個人の――

「目標、ね」

立ち上がって部屋に向かった。



此の世界の、インテリアは西洋建築風であることを除いては此れと言って特徴がない。ベッドにころがって見上げる天井の様子も前の町のそれとあまり変わりがない。既に第三衛星都市からは二百キロぐらいは離れているのだが、地形的特徴も、気候的特徴も、民族的特徴も殆ど第三衛星都市と変わりがない。

稀に上空をジェット戦闘機らしき飛行物体が飛んでいる事が有る。

則ちその程度には文明開化していたと言う事だろう。

今の所、化け物の類が出て退治するように、と言う命令は来ない。

第三衛星都市に居た時に思ったことだが、何の役に立っているのだろう、と言う疑念を抱かざるを得なかった。使える装備品に秀逸なものがあるらしいが、それなら使用者がもっと練度の高い兵士で悪い理由も見つからない。

この疑問は加藤も2ndもある程度思っていたことらしく、其の話、自分たちの存在意義についての話、になるとそれぞれお茶を濁して、他の話題に移すのが通例だった。

デフォルトとフィレトの存在はそんな我々に危機感を抱かせた。

則ち、我々は助っ人などでは無く、囚われた異邦人でしかないのではないかと言う懸念だった。「お客さん」だから、特別待遇されている、「お客さん」と言ってもきっと何かに利用されるような「お客さん」。

三人、いや五人ともこの世界に付き合いきれなくなってきていた。

旅に出たのは概ねそんな理由だった。


探しているのは、「この世の出口」。

おして考えれば、「帰還方法」。

どうにかして帰りたい、其処が如何なるところだったか、思い出せなくても。


この件を確認して全体目標となったのが「賢者」捜索。この世のあれやらこれやらに精通しているという「賢者」をさがし、「出口」を教えてもらう事、だった。

ただ、他の四人は「帰還」にはそれほど乗り気ではなかった。加藤と2ndは二人とも、もう故郷がどんな処だったか定かではなくなっており、デファルトとフィレトにしてみればいずれにせよ他所の世界でしかなかった。

「賢者」と「出口」探しには合意したがそこから先は個人の思惑次第だった。


天井を眺めながらそんなことを考えていたら、何時の間にか眠ったらしい。窓の外の空は暗くなっていた。夕立が有りえそうだった。

水源からはだいぶ遠くなった。

飲み水は殆ど井戸。

降った雨は恐らく地面に吸われて行くのだろう。



右腕の時計を見る。午後五時過ぎ。

夕食には早いが階下に降りてみる事にした。

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