2章 蛍火の残照

第27話 1 現実(試)v1_3_1




「侵略」が取り沙汰されてもう何年になるだろう。「侵略」だった頃は未だ皆威勢がよかった。しかし、「侵略」がひそかな「占領」に成った頃から。






六限目の授業が終わる。

「化学」の先生は余談で薬の組成話が止まらなくなる。何に使うのかと尋ねた生徒もいたが、先生は、復讐の為、と答えただけで、不敵に笑って教室を去って行ってしまった。

授業が終わると、騒々しく生徒たちも去って行った。

隣席から声が掛かる。

「行く?」


爆発炎上する敵機。


その直後に自機もやられる。

「此処もそろそろやばいかな」

VRシューティング。其れも相当古い機種。

何人かでシュミレーターを占有してローカルチャットする。

「新しい台も入らないし」

実際、時でも止まったかのように新台は入らない。

「きょうは」

「居るよ」

家に帰ると厄介な客が居る。帰るとしぼられる。だから未だ帰らない。

夜までに男を見つけて泊まる。

高校上ってから一年と経たずしてずっとそんな生活だった。

「路銀が尽きそう」

「こっちも」

「ちょっと落ちるよ」

「あたしも」

やられた所でジュースを買いにでる。

自販機のラインナップもここ十年変わっていない気がする。

プルトップを開ける。

「何処か無料で過ごせる拠点が欲しいね」

「ばれるよ」

周囲に「敵」の居そうな気配はない。

バレれば囁かなレジスタンスも終わり。

「本職じゃないし」

「そんな女子高生は居ない、と」


盛り場は段々消えていく。

楽しみも消えていく。

こんな女子高生も消えていく。

残されているのは。


そのままゲーセンを出てベンチに座った。

上空を国内線の飛行機が飛んでいく。

「真夜中に、さ」

「ああ、あれ。知ってる」

「国内でも、国際でも無いとしたら」

「今更有事でもないでしょ」

今上空を飛ぶ国内線、高度は1000m以下にみえた。

「ゲームもアニメもカラオケも」

「飽きちゃった?」」

「……」

「?……」

「……疲れた」

「……疲れたね」


誰に声を掛けられることも無く、結局――

家に帰った。

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