第40話 新たな仲間
「誰だ!」
姿を見せない人物に声をぶつける。
「ご、ごめんなさいぃぃぃ!」
「降りてこい!」
「は、はいぃぃ! ごめんなさいぃぃ! 今降りますぅぅ!」
タックに対象の位置を伝えながら同時に“スキャン”をしておく。
木の上から降りてきたのは、くるくるとした青髪の癖毛をした、小柄で華奢な女の子だった。
敵意は感じられないが警戒しながら”スキャン“をしていると……、体術Lv2、杖術Lv4、隠密術Lv8、召喚術Lv8、火魔法Lv4、闇魔法Lv7、スキル“召喚士”を持っていた。
あれ?
なんか凄い高Lvだし初めて見るスキルも持っている。
リッツィ王子が言っていたメイベル在住の姉妹だろうか。
「あの、もしかして神様からお告げを受けた方ですか?」
「は、はい! アガッシュ様からお告げを受けました!」
俯きながらもじもじしていた少女は、驚いた顔でこちらを見ながら肯定した。
「ん? ヴィト、知ってるのか?」
「いや、初めて会うけど“スキャン”したら凄い高Lvだったし、見たことのないスキルも持ってたから。それに何となくセラーナと似た感覚もする」
「おぉなるほどな。じゃあリッツィ王子が言っていた人か。確かに初めましてだけどそんな感じもしないな。でもそんな人が何でノックダッシュなんて悪戯を?」
「い、悪戯じゃないんです! そんなつもりはなかったんです!」
わたわたと両手を振りながら必死に否定している姿が小動物のようで可愛らしい。
タックも同様の様で、さっきまでの警戒が薄れ、頬が僅かに緩んできている。
「まぁここで話すのもなんだし、中に入って話そうよ。用があったから来てくれたんでしょ?」
「は、はい! よろしくお願いします!」
皆がいるリビングに案内し、メイドさんにお茶をお願いする。
ソファに座るよう促し、皆も腰を下ろしていく。
「とりあえず、お名前とご用件を伺ってもいいかな?」
「はい、僕はプラントと申します。用件は皆さんのお話を伺えればと思ってきたのですが……」
「え?? プラントさん??」
「はい、プラントです。すみません」
てっきりメイベルに住む姉妹の一人だと思っていた。
プラントさんということは王都に住む青年の方だったのか。
ん? 青年?
「え? 男性ですか?」
「はい……。すみません……こんなので……」
「あ、いえいえ! こちらこそすみません!」
しょんぼりして項垂れてしまったので慌てて謝った。
ヤバい、さっき『可愛いなぁ』とか思ってしまった。
実際今も可愛く見えてしまう。
タックやススリーも驚いているし、タックはオレと同じく『やべぇ』という表情もしていた。
グウェンさんとセラーナはホッとしたような表情だ。
「いえ、いいんです。よく、女性に間違われますので、はい」
「いや、あの、本当にすみませんでした。それで、オレたちの話を聞きたいというのは?」
とりあえず話題を変えよう。
「はい、皆さんの噂を聞いて、神様が言っていた人たちかもしれないと思ったので、会ってお話をしてみたいと思ったんです」
「オレたちもリッツィ王子から、『プラントという人が神様からお告げを受けた』と聞いていたので、一度お会いしたいと思っていたんです」
「はわー!? そうだったんですか!? 嬉しいですぅ!」
「でもよくここがわかりましたね? オレたちも今日初めてここに来たのに」
貰う家がここだというのは、オレたちもここにきて初めて知ったことだった。
「ちょうど王城から出てくるのをお見かけしたので、本当はその時、話しかけようと思っていたんです。でも僕、……人見知りが激しくて、なかなか勇気が出なくて……。そうこうしている内にここに着いちゃって、皆さん中に入ってしまったので尚更話しかけられなくなっちゃって……」
「えっ? ずっと着いて来てたんですか?」
「はいぃ、ごめんなさい……」
「いえ、いいんですけど、全然気が付かなかったです」
「隠密術Lv8があるので……。見つかって怒られたらどうしようと思ったので、こっそりついてきちゃいました」
自分も隠密術Lv8だけど、全く気が付かなかった。
プラントさんだったからいいけど、これが魔物とかだったら完全にやられてしまうな。
さっきプラントさんを発見した時のように、周囲を探知する魔法も作って共有しておいた方がよさそうだ。
「それで、一度家に戻ってまた来てくれたわけですか?」
「いえ、ずっと玄関の所で待ってました」
「ずっと!? オレたちがここに来てからもう3時間位経ってますよ!?」
「やっぱりなかなか勇気が出なくて……。誰か出てきてくれないかなと思いながら待ってたんですが、ここまで来たら自分で動かなきゃと思って、ノックをしてみたんです。そしたら本当に誰か出てきてしまったので、慌てて隠れちゃったんです……」
「そりゃノックされたら誰か出ますけども……」
玄関の前で3時間も、『よし行こう!』と『やっぱり怖いな』を繰り返していたんだろうなぁ。
それがノックダッシュにつながったわけか。
こちらに全く非はないけど、もじもじしながら話す姿を見ていると、なんか申し訳ないことをした気分になってくる。
「とにかく、オレたちも会いたかったので来てくれて嬉しいです。そして、一応確認ですが、実際会ってみて、プラントさんはどうですか?」
「かっこい……じゃなかった、やっぱり神様が言っていた人たちなんだと感じました。こんな僕だけど、僕も“ブルータクティクス”に入れてほしいです」
終始俯きがちでおどおどした様子ではあったが、最後の言葉はこちらの目をしっかり見て、力強くいってくれた。
周りのみんなの反応を伺うと、反対の人はいなそうだが、最終的な判断はマスターだ。
「という事らしいけど、セラーナどう?」
「大歓迎です! ようこそ“ブルータクティクス”へ!!」
「いらっしゃいませなのだ!」
セラーナとグウェンさんはプラントさんと握手をして新しい仲間を歓迎する。
ゴートさんやメイドさんたちも拍手をして喜んでくれている。
オレたちも順に握手をしていった。
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