第10話 王城内調査① - 騎士団

 お告げのあった朝は、ファイライン王国の王都ソルティアにおいてもその話題で持ちきりだった。

 グロム・ファイライン国王自身も『王として各国と協力しながらミリテリアを守ってほしい。』と伝えられたため、お告げが本物であると確信していた。

 すぐに王の執務室にリッツィ第一王子、オルザファレン宰相、レイダー騎士団長を集め、情報の精査と今後の方針について話し合っていた。


「リッツィとレイダーは天使から力を頂いたのだな」

「はい。私もレイダー騎士団長も剣術、槍術、体術スキルなどを賜りました」


 グロムの質問に対してリッツィが答える。


「何か変化はあったか?」

「特別変わった印象はありません。しかし、先ほどまで色々と試しておりしたところ、今までとは異なる感覚がありました」

「ほう? どういうことだ?」

「剣を振る度に速く鋭くなっていくのです」

「鍛錬をすればそうなるのではないか?」

「はい。しかし、通常は何年も鍛錬を続けた結果得るものです。始めたばかりの者ならいざ知らず、私やレイダーのように既にある程度の腕を持つ者では、少し剣を振ったからと言って実感できるほど成長することはありえません」

「陛下、これは私も同様に感じております。殿下と模擬試合もしてみましたが、剣筋や身のこなしが一合毎に熟達していくのがわかります。剣を修める者にとってこれほどの喜びはございません」


 リッツィとレイダーがやや興奮気味に答える。


「なるほど……確かにお主らのように剣を極めつつある腕では、短時間で劇的な成長というのは見込めまい……。すばらしいな。レイダー、騎士団で他にスキルを頂いた者はいるのか?」

「はっ。今の所約7割ほどの者がスキルを賜ったのを確認しております。中には剣術ではなく槍術や体術、弓術などのスキルを賜ったり、私や殿下のように、複数スキルを持つ者も中にはいるようです」

「ほう。その者らはどうなのだ?」

「個人差はありますが、それまでは同程度の実力だった者たちでも、スキルを賜った者は格段に実力が上昇しております。現時点での感想では、剣術スキルを持たない者がスキルを持つ者に勝つことは極めて難しいと考えられます」

「それほどまでにか……」


 技術や戦力が向上することは、魔物の襲来を考えれば喜ばしい。

 しかし、ある意味明確な線引きがされてしまう。

 スキルを持たない者が差別や不利益を被らないように対策をしていかなければならない。

 また、そんなことがないと思いたいが、スキルを悪用する者が出ないとも限らない。

 こちらも対策を考えていかなければ……。


「それで、槍術、体術などのスキルに関してはどうなのだ?というか、なぜ剣術じゃないのだろうな?」

「槍術、体術などのスキルを賜った者たちは、剣術に関しては多少の違いはあれど、並程度の腕前でした。しかし、家族や血縁にそのスキルの師範がいたり、幼いころからそのスキルを鍛錬していたりしたようです。また、狩りが得意な者が弓術スキルを賜ったりしているようです」

「なるほど。その辺りが天使の言っていた“適性”というものなのかもしれんな」

「私もそう考えております。スキルを持つ者は鍛錬すればかなり上達すると思われますので、今後は剣術のみならず各スキルに基づいて鍛錬を行っていくべきかと。ただ……」


 表情を硬くし、レイダーの言葉が詰まる。

 躊躇いがあるようだ。


「構わん。申してみよ」

「はっ。ありがとうございます。懸念はスキルを持たない者たちについてです。今後新たにスキルを賜る可能性があるかもしれませんが、現状だとすぐに他の者との差が大きくなるでしょう。しかし、これまで共に過ごしてきた仲間です。何卒ご寛大な措置を賜りますようお願い申し上げます」

「私からもお願い致します」


 そういってレイダーは王に向かって跪き頭を下げる。

 隣でリッツィも同様に頭を下げた。


「うむ。良く言ったぞレイダー、リッツィ。私もスキルがないからと言って蔑ろにする気は毛頭ない。世界中で協力せねばならぬ時に、スキルを持たぬからと言って不利益を被るなど絶対にあってはならん!」


 グロムは断言し、続ける。


「これは国中に周知し、破った者には罰則を与えるものとする。ただし、細かい内容に関しては情報が整ってからだな。頼んだぞオルザファレン」

「畏まりました。情報が集まり次第、すぐに周知致します」

「魔物と戦う力を持たぬ者でも活躍できる場は必ずある。一丸となって困難に立ち向かうため、適材適所で活躍できる場を設けるのが私の役目だ。騎士団のみんなも安心して励むがよい」

「はっ。ありがたき幸せ!」

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