第四章 討伐依頼

第49話 とある少女との出会い

 リーベラさんが<フォーステリア>に戻った後、オレは3人に囲まれて正座をさせられ、日が変わるまで『胸など害悪である』、『小さければ小さいほどいい』などと復唱させられていた。

 ずっと同じ言葉を繰り返しているとそう思えて来るから不思議だ。

 これが洗脳という奴なんだな……。

 ただ、解放されて眠りについた時、リーベラさんのいい夢を見てしまったので、あまり効果はなかったようだ。


  それ以降も、リーベラさんとは召喚でこちらに来れない場合も定期的に連絡は取り合っていた。

 <ワームホール>を作り出す技術はまだ不完全なようで、今はまだ魔族が通る事は難しいらしく、魔狼を送り込むことで精一杯の様だ。

 因みに魔狼などの魔物はこちらで言う野生動物のような感じらしい。


 ただ、<ワームホール>の発生頻度は増えており、王都やティルディス周辺でも1日に1~2つは確認されるようになった。

 しかし、魔狼はブラッドウルフと名付けられてDランクに位置づけされ、人数と連携にしっかり対処できれば同ランクでの討伐が可能となったことから、オレたちの出番は殆どなくなってしまった。

 それに関しては巡回部隊がしっかりと機能しており、各クランも積極的に動いてくれるからなので、非常に喜ばしいことだった。


 唯一、サフランという村の近くで<ワームホール>が生じた際は、発生場所が村に近く、襲われる可能性があるとの緊急連絡が入り、一刻を争う事態だったのでオレたちが討伐に向かった。

 到着した時にはブラッドウルフが18匹おり、倉庫前に陣取った巡回部隊の4人を取り囲んで、今にも襲わんとしている場面だった。

 ススリーが最近改良した火魔法を群れの中にぶち込んだ時点でブラッドウルフは半壊し、残りの敵をオレとタックで切り倒していったので、あっという間に討伐できた。

 <ワームホール>も“空間途絶ホール ディスラプション”で閉じることが出来たので、村人や巡回部隊にも、もちろんオレたちにも被害もなく終えることが出来た。


 ブラッドウルフの生態研究や素材加工技術も進んできて、ブラッドウルフレザーの装備を身に着けるハンターも多くなってきた。

 討伐報酬は魔物の状態にもよるが、1体あたり銀貨1枚以上になることから、討伐機会さえあれば生活の方も十分に成り立つ水準だった。

 また、巡回のみではどうしてもカバーしきれない部分があるため、街や村の安全の為に、住民からクランに依頼が出来るシステムもできた。

 多少お金はかかるものの、労働時間帯や収穫期などの安全を保つことが出来るため好評だったし、報酬を払ったとしても、その間村に滞在して宿代や食事などでお金を使ってくれるため、そこまで大きな損失にはなっていないようだった。


 俺たちは王都での会議の際に遭遇したブラッドウルフと親玉の報酬で、金貨30枚の報酬を得ることが出来たので、しばらくはお金に困る事もなかったが、それぞれの仕事は続けていた。


 魔物の脅威を感じつつも、皆の頑張りで変わらぬ生活を送っていたある日、日課の情報集めの為にハンターギルド ティルディス支部に立ち寄った時の事だった。


「お願いします! お姉ちゃんを助けて下さい!」


 カウンターで5歳くらいの女の子が泣きながら訴えている。


「気持ちは分かるし助けてあげたいんだけどね、クランに依頼する場合は報酬を出さないといけないの」

「お小遣い持ってきました! これでお願いします!」


 そういうと袋から銅貨を取り出した。

 15~6枚だろうか。

 子どもが持つお金としては十分大金だが……。


「うん……、お嬢ちゃんあのね、これだと少し足りないの……」


 受付のお姉さんもギルドとしてこの報酬で受けるわけにはいかないが、無下に断る訳にもいかず、困っている様子だった。


「またお小遣いを貯めて持ってきますからお願いします!」


 周りの人も何とかしてあげたいけど、どうにもできないという表情だった。


「何があったんですか?」


 近くにいる職員さんに聞いてみた。


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