第12話 王城内調査③ - ”スキャン”使いのセリシャ
入室してきたセリシャは小柄な女性で、頭の上に耳が、後ろには尻尾がついていることから獣人族の様だ。
「お、お初お目にかかります。セリシャと申します」
膝をついて頭を下げる。
緊張しているのが目に見えてわかる。
「堅苦しいのはいらぬぞセリシャ。それよりもスキャンというスキルについて知りたいのだ」
「はいっ!なんなりとっ!」
「どういったスキルなのかは先ほどオルザファレンから聞いたが、実際にここで見せてもらうことはできるか?」
「はいっ!」
「ではリッツィとレイダーの強さを確かめてみてもらえるか?」
「か、畏まりました!」
リッツィとレイダーがセリシャの方へ近づく。
「何かこちらがすることはあるかい?」
「いえ、殿下。そのままお立ち頂ければ大丈夫ですが、申し訳ありません、御一人ずつしか出来ません」
「じゃあ僕から頼むよ」
「畏まりました! お身体に触れなければなりませんので、手を出して頂けますか? では、失礼します!」
セリシャがリッツィの手を握って目を閉じる。
セリシャの手が柔らかく光はじめ、その光がリッツィを包み込んでいく。
光が全身を包んでしばらくすると、スゥっと消えていき、セリシャが目を開けた。
「終わりました。殿下は剣術スキルがLv5、槍術スキルがLv2、体術スキルがLv3のようです。他に弓術スキルがあるようですが、こちらはLv1となっていました」
「なるほど凄いね……。確かにそのレベルと得意とするものが一致している気がするな。特に弓は狩り程度でそこまで鍛錬してこなかった」
「ただ、私自身、このスキャンというスキルがLv2でしたので、まだわからないスキルが他にもあるのかもしれません……」
申し訳なさそうにセリシャが頭を下げる。
「気にすることはない。皆スキルを賜ったのが今日のことなのだ。初めから全てがわかるわけではない。スキャンも繰り返していくうちにレベルが上がってより詳細に見えるようになるかもしれないしな」
「はいっ!ありがとうございます!」
「よければ私もスキャンで見てもらえないか?」
レイダーも手を差し出す。
「はい!お任せください!」
リッツィと同様にスキャンを始める。
レイダーは剣術スキルがLv6、槍術スキルがLv4、体術スキルがLv4、弓術スキルがLv3となっていた。
「ほぅ。さすがはレイダーだな。素晴らしい」
「ありがとうございます陛下。励みになります」
「セリシャよ。そなたが授かったスキルは素晴らしい! 今後の魔物の襲来に備えて色々と改革をしていかねばならん。その際にそのスキルがあれば、適材適所で行うことができる。力を貸してくれまいか?」
「も、もちろんでございます! 喜んで!!」
自身が役に立てることだけでも嬉しいのに、国王から直接頼まれては断る理由などなかった。
「よろしく頼むぞセリシャ。では今後の方針を決めよう。オルザファレン。どう考える?」
「はい。まずは王城内でスキルを賜った者を調査し、その者たちからセリシャのスキャンを行い、リスト化してしましょう。その後、スキルを活かせる部署に異動を。もしくは新たな部署を設立しても良いかもしれません」
「うむそうだな。国内においても各街や村を治める貴族に調査をさせて、リストの作成を行うか?」
「その方がよいと思われます。その際、”スキャン”のようなスキルを得た者は国で直接雇用していけば、今後の為になるかと存じます」
「うむ。セリシャ一人で国中の人物を調べるには手間がかかりすぎる。他にも使えるものがいればいいのだが」
「現段階の情報では、戦闘系のスキルは武術や狩りに携わるものが、後方支援系のスキルは製造や研究、調査に携わる者が多いようです。王城内はそのような者たちが初めから集まっておりますが、街や村ではそこまで多くはないかと」
「なるほど、確かに言うとおりだな。ともかく、まずは調査だ。オルザファレン、早速各部門の責任者にスキルを授かった者の名簿を作成させよ。それから新たにスキル調査部門を立ち上げる。セリシャをそこの責任者とする。直ちに場所の用意と必要な物資、雑用や記録を行う人員を配置せよ」
「畏まりました」
「は、ははぁー!恐れ入りました!!」
オルザファレンが優雅に一礼をする。
セリシャは突然の昇格に驚き、おかしな返事と共に土下座をした。
グロムは気にせず、レイダーに顔を向け指示を続ける。
「レイダー、騎士団のスキル持ちの者をリスト化した後、それを基に再編案と訓練の見直しを行え。また、スキルを持たない者が活躍できそうな場を検討してくれ。それらの人材には別な業務についてもらうことになるかもしれないが、待遇は決して変わる事がないと伝えてくれ」
「はっ!畏まりました!」
「リッツィは王都を始め、他の街や村へ通達を頼む。各地に早馬を飛ばし、可能な限り迅速な調査を行うように伝えてくれ。また、各国の大使館にも使者を送り、各国の状況の確認と情報共有の場を設けたいと伝えてくれ」
「畏まりました。すぐに手配いたします」
「皆の者、忙しくなると思うが頼んだぞ!」
「「「はっ!!!」」」
「ははぁー!」
各々が自身の持ち場に向かっていった。
今後、世界は大きく変わっていくだろう。
魔物の襲来もそうだが、人は力を持つとそれを使いたくなる生き物だ。
良い方向なら問題ないが、私利私欲の為に使われると、多くの人が被害を受ける。
特に、力を持たぬ者が。
神様から魔物に対抗するために授けられた力を、悪用する者はいないと信じたいが、国を治める者としてあらゆる事態を想定しておかなければならない。
グロムは人々が変わらず平和な生活を送っていけるよう尽力すると誓った。
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