第13話 友と共に灯を

 オレの女性客への対応を見て怒るグウェンさんを宥め、仕事が終わった後に魔法のお披露目をしてようやく帰宅した。

 しばらくするとドアをノックする音が聞こえてきた。


「はーい。どちらさま?」


 ドアを開けるとタックとススリーが立っていた。


「よぉヴィト。おつかれ」

「こんばんは。ちょっといいかしら?」

「あら、どうしたの2人とも。とりあえず入ってよ」


 2人とも子どもの頃からよく家に遊びに来ていたから勝手知ったる他人の家だ。

 いつも座る自分の椅子に座っていく。

 一応お客さんではあるし、お湯もちょうど沸いていたので、最近お気に入りのコロンバインティーの準備をしながら尋ねる。


「どうしたの2人してこんな夜に。もしかしてお告げの事?」

「そうだ。ヴィトもお告げを受けたか?」

「うん。受けたよ」

「そうか……。その……やっぱり天使からのお告げだったか?」

「いや、オレは神様からだったよ」


 2人には最初から隠すつもりはないので正直に言った。


「なにっ!? やっぱり創造神アガッシュ様か!?」

「うんそうだったよ。2人も?」


 何となくそんな気はしていたけど、やっぱり2人とも神様からお告げを受けたようだ。

 お茶を出して自分も席に着く。


「あら、ありがと。実はそうなの。家族も周りのみんなも天使様からのお告げだったんだけど、私だけ神様からお告げを受けていたからおかしいなと思っていたのよ。そしたらタックもそうだったって。だからもしかしたらヴィトもそうかなって思ってきたのよ」


 言い終わるとススリーはカップを右手に持ち、左手を添えてふーっと息を吹きかけ、そっとお茶を飲んだ。

『あっおいしっ』と呟くのが聞こえた。

 気に入って頂けて何よりだ。

 タックは男らしくズズズッと音を立てながら飲み、話を続ける。


「神様は共に戦う仲間がいるって言ってただろ? 俺はヴィトやススリーだったらいいなと思っていたんだよ!」

「ははは。オレもそう思っていたんだ。実際そうみたいだし良かったよ」

「だよなー! 良かった! それでヴィトはどんなお告げだった? 俺はアガッシュ様から“武器マスタリー”というスキルと鍛冶術を授かったんだ。どんな武器でも使いこなせるし、作れるらしいんだ!」

「私は“大魔導士”というスキルと付与術を授かったわ。どんな魔法でも使いこなせて、物にも魔法をかけられるらしいわ」

「うわーすごそうだね2人とも! オレはね!」


 親友たちがすごいスキルを授かって嬉しくなり、自分も授かったスキルを説明しようとするも、なんと説明したらいいのかわからない。


「……あれ? オレは……何だろう? 魔法を使えることは聞いたんだけど、2人みたいに詳しく聞いてないな……。なんで?」


 2人もそうだし、グウェンさんも具体的に何のスキルを与えられたのか聞いている。

 オレはそんなに具体的に聞いてない。

 この差はなに?


「そうなのか? でも魔法が使えるんだな! それで十分じゃないか!」

「あら、私と同じね。使ってみた?」

「うん。朝試しにつかってみた。そしたら危うく上手に焼けましたになるところだったよ」


 竈の方を指さし、今朝の失態を話す。

 するとススリーが怪訝な顔をする。


「魔法をイメージ? 詠唱とかじゃなくて?」

「うん。詠唱? そんなのあるの?」

「あるの? って……神様から聞いてないの?」

「うん。どうやって使うとか聞いてない。でもイメージが大事って言ってたからやってみたら出来たよ」

「そんなこともあるのね……。詠唱っていうのはこんな感じよ」


 そういってススリーは手を出し、ブツブツと何かを唱え、最後に “トーチ”と言った。

 するとススリーの手のひらの上に、明るい光の玉がふわふわ浮かんでいた。

 これだけ明るいのに熱や眩しさは感じられない不思議な光だ。


「これは照明代わりの魔法ね。魔法の効果とか詠唱とかは、なぜか昔から知っているかのように分かるのよ」

「何それずるい。魔法ってこんな感じかな? でやるもんじゃないの? ちょっと神様どういうことなの……」

「なんでしょうね。でも神様が仰ることだもの。きっと何か理由があるのよ」

「そうだな。とにかく、俺たち3人とも力を授かったんだ! この力を使ってみんなの為に頑張ろうぜ!」


 確かに考えても仕方がないことだ。

 オレにだけ説明を忘れていたなんてことはないだろうし、とにかく魔法自体は使えるようだから自分で確かめていけばいいか。

 オレたちはその後、個々人での鍛錬に加え、時間が許す限り3人で集まって訓練をしていくことを約束した。

 途中タックが『これでモテモテに……』と言ってススリーに諫められていたが、気持ちがわからないでもないオレは黙っておいた。

 ススリーが御代わりをしたコロンバインティーを飲み終えたところで本日はお開きとし、明日から訓練することを約束して、それぞれ帰宅していった。


 2人が帰ってから、さっきススリーが使った“トーチ”を試してみる。

 やわらかい光の玉が浮かんで辺りを照らすイメージ……。


「トーチ」


 呟くとススリーと同じような光の玉が出現した。

 熱も眩しさ感じない。


「詠唱はわからんけど、なんかできたな。なんだろうなこれ?」


 よくわからない魔法に疑問を感じながらも、オレも朝からバタバタとして疲れたので光の玉を消し、早めに眠ることにした。

 難しいことは明日また考えることにしよう。


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